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桜並木を、あなたと共に  作者: 真祖しろねこ
34/69

~海がきこえる~

 「灯華はいいのか?」

 みんなと遊んでいた柚希様が戻ってくる。

「何かの弾みで水着外れちゃっても困りますし」

「そうか」

 それだけ言うと柚木様は隣に座って砂で山を造り始める。

「何を読んでるんだ?」

 柚希様が本を覗き込んでくるが、翻訳されてない英語文だったためかすぐに山造りに戻った。

「ジェイムズ・ティプトリー・Jrって作家さんの『The Only Neat thing to Do』って短編です」

「どっかで聞いたことあるな・・・」

「日本語にも翻訳されてるはずです。『たったひとつの冴えたやりかた』かな?」

「あぁ、わかった。寄生されるやつだ」

「・・・間違ってはないですが」

 僕は読書を中断して山造りに参加する。

「読書はいいのか?」

「フランス語に翻訳されたやつを読んだことがあるんです。ただ原文を読んだことはなかったので一度読んでみたかったんです。内容は知ってますから」

 それだけ伝えると2人で無言で土を盛り始めた。




「ふーさすがに疲れましたわね」

 山を切り崩して城っぽいものを造っていると今度はヘレーネ様が戻ってきた。

「お飲み物をご用意してますのでよかったらどうぞ」

 僕はバッグから麦茶の入った水筒を取り出し紙コップに入れてヘレーネ様に渡す。

「あら、ありがとうございます」

 ヘレーネ様はそれを受け取ると一気に飲み干す。

 白い肌に汗が伝ってちょっと色っぽかった。

「それにしても・・・あの子の体力はどうなってますの」

 ユリアさんは神林様と椿さんと3人でビーチボールで遊んでいた。

 神林さんも椿さんも一度は休憩しに戻ってきたが、ユリアさんはまだ一度も戻ってきてない。

「熱中症が心配なので声かけてきますね」

 休息地から出た僕はユリアさんのところまで行き声をかける。

「暑いですからそろそろ休憩されてはいかがですか?」

「あ!灯華さん!」

  駆け寄ってきたユリアさんが僕の手を掴む。

「灯華さんも一緒にやりましょうよ!」

「わわわっ」

 僕の手を掴んだまま駆け出すから足がもつれて転びそうになってしまった。

「わかりました。遊ぶのは構いませんが一度休憩しましょう。水分補給しないと倒れてしまいますよ」

「むー。わかりました」

 渋々納得したユリアさんは僕と一緒にヘレーネ様と柚希様のところに戻ってきた。

「麦茶でよかったですか?」

「はい、ありがとうございます」

 僕から紙コップを受け取ったユリアさんは先ほどのヘレーネ様と同じように一気に飲み干した。

「私ももらっていいかな」

 神林様と椿さんも休憩に戻ってきたので2人分、追加で麦茶を用意する。

「ありがとう」

「ありがとね」

 2人も受け取るとシートに座ってゆっくりと飲み始めた。

 大きめのシートを持って来たとはいえ6人も座っていると少し狭い。

 ユリアさんと神林様の柔肌が当たって少しドギマギしてしまう。

「私、こんなに遊んだの初めてかもしれません」

 2杯目の麦茶を飲みながらユリアさんが僕の顔をじっと見つめてくる。

「灯華さんとも遊びたいんです」

「えぇいいですよ。何して遊びましょうか」

 麦茶には少し塩を入れてあるのでこれで熱中症も大丈夫だろう。

「うーん、一通り遊んだ気がしますし・・・」

 だいぶ遊んだので時間は既に16時を過ぎ、日が暮れ始めていた。

「今日はもう日が暮れるしまた明日にしたらどうだ」

 柚希様が荷物をまとめ始めた。

「そうします。約束ですよ!灯華さん!」

「わかりました。じゃあ帰り支度をしましょう」

 ホテルは近いし、海に入ったわけでもないからこの上に服を着て戻ろうかな。

「私はここの片付けをしますので、先に着替えてきてはいかがですか?」

「じゃあここはトーカに任せますわ」

 他の5人が小屋の方へ歩いて行ったので僕は上着とスカートを履き、帰り支度を始める。




「洗濯物はこれで全てですか?」

 ホテルへ戻ってきた僕たちは水着やらをカゴに入れる。

 同フロアにランドリーコーナーがあったのでそこを使おうと思い、洗濯物をまとめていたのだ。

「あぁ、私のはそれだけだ、あとはよろしく」

「はーい」

 僕は2人分の洗濯物を持ってランドリーまで行くと、既に椿さんとユリアさんが居た。

「あ、灯華さんもですか?」

「えぇそうです」

 空いているところに洗濯物を入れ、ロックを掛ける、そもそもこの階に入るのにセキュリティーカードが必要だし、僕たちしかいないからロックをする必要はないだろうが、念のためしておく。

 暗証番号を始めに打ち込んで取り出すときにもう一度打ち込むタイプのものだったので適当に4ケタの数字を入力する。

「夕食は別の場所で取るそうですね」

 洗濯が終わるまでの間、僕もここで雑談に混ざることにした。

「そうなんですか、私は何も聞いてないです。灯華さんは?」

「私も聞いてないです。どこに行くんですか?」

 この辺は観光地だし、御飯を食べられるところならたくさんありそうだ。

「お嬢様がいつも贔屓にしているところが近くにあるのでそこに行くのではないかと思います」

「神林様はよくこのあたりに来られるんですか?」

「えぇ、ここのホテルにはよく来ますね」

 なんて雑談をしていると乾燥が終わった。

「じゃあまた後で会いましょう」

「はい、楽しみですね」

 



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