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桜並木を、あなたと共に  作者: 真祖しろねこ
32/69

~温泉vs海~

  夏休みも残り2週間となり、柚希様とヘレーネ様が課題を全て終わらせた。

「お疲れ様でした」

 僕は2人に紅茶を持ってくるとアトリエの中で休憩を始めた。

「それにしても、ここは広いですわね。私も自分の家にアトリエ造ろうかしら」

「何かと便利だぞ、防音にすれば誰にも邪魔をされないからな」

「えぇ、そうですね。来年もありますし早めにやっておきましょうか」

 思い立ったが吉日、と言わんばかりにヘレーネ様はどっかに電話を掛けるためにアトリエから一旦出て行った。

「とりあえず終わらせなきゃいけないものは終わったし、少しゆっくりしようかな」

「どこかにお出かけということであれば車を出しますよ」

「ありがとう。今年はまだ旅行に行ってなかったな・・・ヘレーネの都合もあるし後で相談してみるか。あ、神林さんも呼ぼう。灯華、今から連絡しておいてくれるか?」

「かしこまりました」

 それはとても楽しい旅行になりそうだ。

 僕はアトリエから出て携帯を取り出し、椿さんに掛ける。

「はい、椿です」

「突然すいません、今お時間大丈夫でしょうか」

「はい大丈夫ですよ。ちょうど今お嬢様が最後の課題に取り組んでいて特にすることがありませんので」

「そうでしたか。では手短にお話しますね」

 僕は簡単に柚希様、ヘレーネ様と旅行に行こうというお話があるので一緒にどうですか、という事を伝える

「そうですか、お誘いいただきありがとうございます、ですがお嬢様はパスポートをお持ちでないので、行けるとしても国内のみということになってしまいます」

 そうかパスポート持っていないのか。今から発行となると時間的に厳しいな。

「でしたら国内にしよう、と柚希様ならおっしゃると思います」

「はい、お嬢様もきっとお喜びになると思います。でしたら一度、そちらにお邪魔しても大丈夫でしょうか、お嬢様は一度柚希様のご自宅へ行きたいと申しておりましたので」

「わかりました、柚希様に伝えますね、では改めて後ほど連絡します」




 通話を終わらせてアトリエに戻るとヘレーネ様と柚希様が旅行雑誌を広げていた。

「前から一度モルディブに行ってみたと思ってましたの」

「モルディブか、そういえば海に行こうという話もあったな」

 あぁどうしよう。すごく楽しそうに話している2人に神林様は国内しか行けないと伝えるのはしのびない。

「あぁ灯華、神林さんはなんだって?」

「えっと、日程はいつでも大丈夫なのでお任せするそうです。ただ・・・」

「ん?どうした」

「行けるのは国内のみ、だそうです」

「あら、そうでしたの。でしたら私、ハコネに行ってみたいですわ。温泉に興味がありますの」

「箱根とはまた微妙な・・・せめて京都とかじゃないのか」

「京都!いいですわね!前に一度訪れたことはあるのですが全ては回りきれなかったのでもう一度行きたいと思っていましたの」

 この人たちが本当に良い人たちで良かったと思う。

「まぁ、どこに行くかは神林さんも交えて相談しないとだな。彼女は国内に詳しいし、良いところを知っているかもしれない」

「あぁ、そうだ。それからもう1つよろしいですか」

「ん?」

「一度、この屋敷に来たいと神林様がおっしゃられてました」

「なんだちょうどいいじゃないか。私はいつでも大丈夫だ、ヘレーネもだろう?」

「えぇもちろんですわ」

「でしたら私から伝えておきます」

 アトリエから出て改めて椿さんに連絡をして、いつでも大丈夫と伝えると、では明日で、ということになった。




 その翌日、時間ぴったりに神林様と椿さんは屋敷にやってきた。

「ようこそいらっしゃいました。この屋敷の使用人を勤めております尾上でございます。本日、神林様をご案内させていただきますのでよろしくお願いします」

「丁寧にありがとう」

「ではこちらへどうぞ」

 大きな荷物はなく、手持ちの鞄だけだったので荷物を預からず、そのまま客室へと案内した。

「ではただいま柚希様とヘレーネ様をお呼びいたしますので少々お待ちください」

 一礼して客室から出ると、僕はアトリエへと向かう。

「神林様がお見えになられました。客室へとご案内しております」

「ん、もうそんな時間か。ありがとう。すぐ行くよ」

 ヘレーネ様、ユリアさん、柚希様は席を立ち上がって客室へと向かった。




「今日はよく来てくれた」

「久しぶりですわね」

「お邪魔してる。今日は誘ってくれてありがとう」

 2人を客室まで連れてきたので紅茶を用意するために一旦客室から出た。

 キッチンまで行くと既に藤田さんと小暮さんが紅茶とお菓子の用意をしてくれていた。

「すいません、ありがとうございます」

「いえいえ、ではこれを運んでくださいね」

 藤田さんからトレーを受け取って僕は客室へと戻った。

「失礼します」

 一言入れてから僕はテーブルの上に紅茶とお菓子を並べる。

「では御用がありましたらお声がけください。待機しておりますので」

 そう言ってその場を離れようとすると柚希様に引き止められた。

「灯華、当日は君も一緒だろう?」

「えっと、お嬢様が旅行のお付に私を選べばそうなります」

「なら君も旅行に来ることは確定だ。なら意見を出す権利があるだろう」

「いや、ですが--。わかりました」

 途中まで言いかけたが、柚希様がちょっと怒った顔をしたので僕は返事を変えて柚希様の隣に座った。

「よろしい、言わなくてもわかると思うが、このメンバーしか居ない時は友人として接してくれていいと言っているだろう?」

「ユリアもですわ、こっちに座りなさい」

「ありがとうございます」

 部屋の隅で立っていたユリアさんもヘレーネ様の横に座った。




「じゃあ今日は帰るよ。今日はありがとう。晩御飯まで頂いてしまってすまない。熱海、楽しみにしてるよ」

 そう言って神林様と椿さんは帰っていった。

 お見送りを済ませた僕は夕食の片付けのために食堂へと戻る。

 結局、旅行先は熱海になった。あそこなら温泉もあるし海もある。日程は明後日からと急だが、宿泊する場所は神林様が任せて欲しいとのことなので大丈夫だろう。

 電車はへレーネ様が嫌がったので当日の交通手段は車、つまり僕の出番だ。

 カーナビあるし迷うことはないだろうけど2時間くらいは掛かるだろうし懸念するところはそこだけだった。

 さ、明日は用意もあって忙しくなるし、パパパっと片付けて今日はもう寝よう

 

 




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