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桜並木を、あなたと共に  作者: 真祖しろねこ
26/69

~深夜のお茶会ストレートティー編~

「では本日より夏期休暇前、最後の課題の制作に取り掛かってもらいます」

 担任の福田先生はホワイトボードに課題のテーマを書く

「というわけで、テーマは『秋に行う文化祭のロゴ』をデザインしてもらいます」

 まさかの課題に教室が一瞬ザワっとした。

「これ、本当なら夏休みの課題にする予定だったのですが、みなさんの制作速度が例年より早く、すでに予定していた課題をみなさん全て提出していただいてます」

 すごいな。とても優秀じゃないか。

「新入生のロゴのデザインを文化祭に使うのが恒例になってますので、張り切って作ってください。もちろんデジタルで持ってきていただいても構いません。普通の水彩画でも大丈夫です。とにかく文化祭のロゴとして使えるものをお願いします」

 それだけ言うと福田先生は教室から出て行った。

「ロゴって言われても難しいですわね」

 さっそくヘレーネ様はノートを取り出し、シャーペンを走らせる。

 今回は今までとはちょっと違った制作になりそうだ。

 今までは実際にある風景だったりを書いてきたが、今回は描く物が実在しない。つまり想像する必要がある。

 デザイン力や想像力を試されることになった。




「んー」

 気分転換にと教室を出る生徒もいるなか、柚希様、ヘレーネ様、神林様は教室に残ってノートとにらめっこしていた。

「昨年のロゴなどご用意しますか?」

 おそらくスマホで検索すれば出るはずだ。少しでも参考になればと思ったが、柚希様は断る

「それを見てしまうとどうしても寄ってしまうかもしれないし、頭から離れなくなってしまうのが嫌だ」

「なるほど、失礼しました」

 邪魔にならないようにと、教室の前のほうに僕とユリアさん、椿さんの3人が集まる。

「今回は皆様苦戦してますねぇ」

 ユリアさんが消しゴムで遊び始めたヘレーネ様を見て苦笑いを見せる。

「こればかりは想像力ですからね。みんな頭の中のものを描ける力はあるはずなので技術云々じゃないですからね」

 椿さんも神林様を見ながら答えた。

「ところで聞きたいのですが」

 僕はさきほどから疑問だったことを2人に尋ねる。

「ブンカサイってなんですか?」

 初めて聞く単語だった。

 どうやらユリアさんも知ってる単語だったようで知らないことに驚かれた。

「文化祭は学園祭とも呼ばれ、年に1度行われる、学校で生徒が主催となるパーティのことです。一般客を招待する場合もあります」

「ほうほう・・・具体的には何をするのですか?」

 年に1度のパーティ・・・ヨーロッパでいうダンスパーティみたいなものだろうか

「学校によって特色があるわ。一般的には軽食などを用意して喫茶店や、劇なんかが多いんじゃないかな」

 椿さんが詳しく教えてくれた。

「なるほど、ヨーロッパには無い文化ですね。とても楽しそうです」

 学校が閉鎖的なヨーロッパではない催しだ。

「でもロゴをデザインしてどうするのですか?」

「文化祭の前に、駅前などに告知のためのポスターを作ったりするの。それに使うんじゃないかしら」

「そんなに人目に付いてしまうと当日のお客様の数がすごいことになるのでは?」

「えぇ、どこの文化祭も当日の学校は満員電車みたいな感じになるんじゃないかな」

 わお、それは凄い。

 僕はまだ日本の電車に乗ったことがないが、フランスにいるときに話題に上がって一度画像を見たことがある。

 あれはまるで地獄のような光景だった。

 あの密集してる人の中に女性もいるというのだからさらに驚いたのを覚えている。

「当日は大変そうですね・・・」

 詳しい内容は大体しかわからなかったが、大変そうなのは間違いなかった。




「これもダメだ・・・」

 帰宅後、柚希様にお茶を持ってくると、ちょうど描いていた紙をくしゃくしゃにしてゴミ箱に捨てているところだった。

 まるで小説家のようだ、と思う。

「紅茶をお持ちしました。一度休憩されてはいかがですか?」

 既に夜の11時だ。明日も学校があることを考慮すればそろそろ寝たほうがいい時間でもある。

「そうだな・・・結局うんうん唸って出来るものでもないな・・・。ありがとう、これだけ飲んだら寝るよ」

「かしこまりました」

 あとでカップを下げにくるのも二度手間になってしまうので、柚希様が飲み終わるまで部屋で待つことにした。

「そういえば、藤田さんが怒ってましたよ。最近部屋の掃除をしようとすると拒否されるって」

 気分転換になるような話題を持ち出した。

「むー・・・。一応私だって年頃の女だ。たとえ家族同然の人にでも見せたくないものだってある」

 柚希様はチラっとカギのかかったクローゼットを見る。

 あそこのカギは柚希様以外が持っていないので開けることができない。

「きっと寂しいのだと思います。今までは任せてくれていたのに急に拒まれたので」

「母親か!」

「せめて姉と言ってくださいって怒りそうですね」

 2人で想像して笑いあった。

「もしかしたら今年の夏はちょっと忙しくなるかもしれない」

「わかりました。精一杯やれることをやります」

「うん、頼りにしてる。紅茶ありがと、おやすみ」

「はい、おやすみなさいませ」

 


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