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桜並木を、あなたと共に  作者: 真祖しろねこ
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~ドイツの国花、花言葉は優雅、信頼~

「それではまずは乾杯からしましょう!」

 ヘレーネ様がまだ空のグラスを6つのうちの1つを掴む。

 あぁ、なるほど、ドイツ式か。と、おそらくドイツ式がわからない他の方のために手本になるため、僕も1つグラスを選んでまだ持ち上げずにテーブルに置いたままにする。

 他のみんながグラスを選んだのを確認してからユリアさんが全員のグラスに飲み物を注ぐ。

 さすがにビールは未成年なので避けられ、ジンジャーエールが選ばれた。

「私の!栄えある栄光の!1歩に!」

 ヘレーネ様がグラスを掴んで持ち上げるのを見て全員がグラスを持つ。

「灯華はドイツ文化も知っているようなのできっと少し下にグラスをずらすつもりでしょうけど、先に言っておくわ。今日は同じ高さでいいですわ」

「かしこまりました」

 ドイツの乾杯は目下の人はグラスをやや下にずらしてグラスをぶつけるのだが、ヘレーネ様は使用人の僕に対しても同じ立場で良いと言ってくれた。

「ありがとうございます」

 こんな方に認められてたような気がして嬉しくなった。




「Pooooooooooost!(かんぱーーーい)」

「かんぱーい!」

 僕たちは力強くグラスをぶつけ合う。

 ドイツでは本来、仲が良い人としか乾杯をしない。古い風習だが、毒物を盛られる可能性があるからだ。

 それでもという可能性を踏まえ、グラスを強くぶつけ合わせてグラスの中身が飛び散って互のグラスへ入らせるのだ。

 白ビールなんかだとグラスの底を合わせたりするのだ。「白パンツと白ビールは下から失礼」なんてジョークがあるくらいだ。

 ここに居る5人はヘレーネ様にとって、信用に足りる人だと思ってくれているんだ。

「じゃあ食べる前にこれを渡しておくよ。私と灯華からだ」

 僕たち2人からは花束を用意した。

「まぁ素敵ですわね。ありがとう」

 それを笑顔で受け取ったヘレーネ様は何かに気がついたようで、花束をユリアさんに預けて僕の前まで来る。

「今の花束の中に3輪ほど、ヤグルマギクがありました。柚希にこんな気遣いができるとも思えません。灯華さんのアイデアですね?」

「おいどういう意味だコラ」

 花束を用意したいと言ったのは柚希様だ。でも花に詳しくないから用意するのに知恵をかしてほしいと言われて助言したのは確かだ。

「少しアドバイスしただけですおわっ!」

 話している途中にいきなりヘレーネ様が飛びついてきたので思わず男の方の声が出てしまった。

「・・・」

「あの、ヘレーネ様?みんなが見てますよ?あの」

 密着されるとバレそうなのが怖いし、柚希様とユリアさんはなんか顔が怒ってるし、神林様は顔を真っ赤にしてるし、椿さんはあらあらなんて微笑んでるし。

 あ、ヤバイ。ブラがズレそう

 ヘレーネ様と僕の身長はあまり変わらないので胸がちょうどパッド越しに当たってる。以外に胸あるななんて意識してしまったが最後、頭に血が上るのが自分でもわかる。

「あなたがほしいですわ。私のものにあいたっ!」

「おいこら。うちの使用人を引き抜かないでもらえるか」

 ようやく柚希様が助け舟を出してくれた。

「ふん。まぁ今日はこのへんにしておきますわ」

 頭を叩かれたのにも関わらずヘレーネ様は上機嫌で自席に戻る。




「この後で渡すのはちょっと引け目を感じるがせっかく用意したし、渡しておくよ」

 神林様はヘレーネ様にお茶っ葉の缶を渡した。

「以前に緑茶に興味があるって言ってたから、私が用意できる一番良いものを持って来た」

「あら、ありがとうございます。とても嬉しいですわ」

 これもとても嬉しそうにヘレーネ様は受け取った。

 一瞬チラっと銘が見えたのだが、驚いた。100gで1万円以上する最高級のものだった。

 神林様もやっぱお嬢様なんだなと。

 友人たちだけのささやかなパーティだったが、ヘレーネ様はとても嬉しそうだったし、僕たちも楽しい一時を過ごせた。

 来週からは夏期休暇前の課題制作も始まる。


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