~当然の結果ですわ!~
みんなでコンクール応募作品の展示会を見に行った翌週、ついに結果発表の日がきた。
ヘレーネ様には既に連絡が来ていて結果は知っているはずだ。
でも本人が今日は木曜日にも関わらず欠席しているので結果を聞くことができなかった。
欠席理由は知らないがは授賞式のある今日休みということは・・・と期待が高まる。
授賞式は今日執り行われているので参加しているのかもしれない。参加してるなら受賞しているのかも、と心が踊った。
「あ!ホームページ更新されてる」
コンクールのホームページが12時に更新が来て、柚希様は昼食を中断して神林様のスマホを覗き込む。
「ん、どれどれ・・・お」
受賞者欄にヘレーネ様の名前があった。
「すごい!賞を取ってますよ!」
「わかったから落ち着け!」
興奮のあまり柚希様の肩を後ろから掴んでグラグラ揺らしてしまった。勢いよく掴んだためか彼女はびっくりして咳き込んでしまったけれど自分を抑えられなかった。
ようやくできた友人と呼べる人に喜ばしい出来事があったのだ。
「受賞したのは審査員特別賞か。なんだグランプリではないのか」
最優秀賞と優秀賞は別の人だったが、ヘレーネ様は特別賞を頂いていた。
「ん、ちょっと待って」
何かに気づいた神林様はスマホの画面をスクロールしてとある部分を指差した。
「オーディエンス賞!?」
一番下のオーディエンス賞にもヘレーネ様の名前が記載されていた。
つまり一般客の投票で1番票を集めたんだ!
それなりに大きなコンクールで2つも受賞なんて凄いとしか言葉が出なかった。
今すぐに会っておめでとうと伝えたいけれど、今会うとヘレーネ様よりテンションが高くなってしまいそうだ。
「さすがだな」
「うん、私も頑張らなきゃ」
ヘレーネ様のご活躍に影響を受けたのか柚希様と神林様のモチベーションも高まったようだ。
「わっ!っと、すいません」
普段携帯を持ち歩かないせいで、マナーモード中のバイブレーションに毎回ちょっと驚いてしまう。
緊急の電話の可能性もあるので確認するとユリアさんからの着信だった。
「はい、尾上です」
柚希様に許可を得てから通話をタッチする。
「今大丈夫ですか?」
「はい、ちょうど今昼休みで休憩中でしたので大丈夫です」
「休憩中ごめんね。話っていうのはこの前のコンクールのことなんだけど、結果が出たのは知ってますか?」
「はい!先ほど確認しました!この度はおめでとうございます」
「ありがとう!。お嬢様に直接言ってあげて!。あぁっとそれでね、今週末にお祝いのパーティをしようと思ってるの。急な話だし、知り合いだけでも集まれたらなって思って」
「それはいいですね!是非そうしましょう。大丈夫だとは思いますが柚希様、それから神林様にも伝えておきますね!」
たかがコンクールの受賞で、という人もいるかもしれない。グランプリじゃないのに、と思う人もいるかもしれない。それでも大きな1歩であることには違いないし、間違いなくこれからの人生にプラスになることだろう
「うん、わかった。あ、そろそろ切るね。柚希様たちには伝えておくね」
最低限の事だけ聞いて電話を切った。
「パーティか。ヘレーネらしい」
「私でよければ参加させてほしい。椿、日曜は大丈夫だったよな?」
「はい、今週でしたら大丈夫です」
どうやら都合も大丈夫そうだ。
「当日の付き人は灯華に任せていいか?」
「もちろんです!むしろお願いしたいくらいです!」
「あ、あぁ・・・わかったから落ち着け。ヘレーネが賞を取ったのは別に初めてじゃないぞ」
それはわかってるし、理解はしてる。他人の出来事でこんなに嬉しく思える日がくるなんて思っていなかった。
あぁ、早くヘレーネ様に会って直接おめでとうと言いたい。
「私が賞を取った時にこれより反応が小さかったらキレるからな」
「もし柚希様が受賞、それもグランプリなんてことになったら失神してしまうかもしれません」
「えぇ・・・それはひく」




