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桜並木を、あなたと共に  作者: 真祖しろねこ
22/69

~デイタイム・イン・ジャパン!~

「おはようございますですわ」

「あぁおはよう」

「おはようございます。へレーネ様、ユリアさん」

 5月の最初の連休が終わり、2週間ほど経った5月の終わりにも関わらず、今日は暑い日だった。

「にしても今日は暑いな」

 あまりの暑さに柚希様は上のブレザーを脱いでいた。

「ですわね。ユリアも暑かったら袖を捲っても構いませんからね」

「はい、お気遣いありがとうございます」

 最初から脱いでいたヘレーネ様にそう言われるとユリアさんはメイド服の裾を外した。

 どうやら着脱できるようなデザインのようだ。

「おはよう。今日は暑いな」

 後から来た神林さんもブラウスで、椿さんも半袖のメイド服だった。

 つまりこの場で長袖なのは僕だけ。

「灯華さんは大丈夫ですか?」

 心配そうに見てくるユリアさんに説明をする。

「実は半袖のメイド服をまだ用意してなかったんです。まさか急に暑くなるとは思ってなかったので。さすがに主人の前で袖まくりをするわけにもいきませんから」

 本当は半袖も持っているし、着れるが、男だとバレたくないため、少しでも肌の露出を少なくしたかっただけなのだ。

「そうだったんですか。体調には気をつけてくださいね」

「はい、ありがとうございます」




「今は2人なんだから捲っても構わないぞ」

 僕たちは今、写生のために学校近くの自然公園に来ていた。

「ですが近くに神林様と椿さんが居ますから、やめておきます」

 ベンチに座って池と橋をスケッチブックに描く柚希様はその手を一旦止める。

「わかった。くれぐれも熱中症には気を配れよ」

 それだけ言うとスケッチへと没頭し始めた。

 2人掛けのベンチだが、荷物を置いたりしてるので座る場所はなく、僕は柚希様の後ろへ立って待機することにした。

 あ、椿さんと目が合った。

 神林さんもすぐ近くのベンチに座ってスケッチをしているようだ。

 椿さんがこっちに歩いて来ているのが見えた。

 僕も椿さんの方へと歩き、ちょうど柚希様と神林様との中間地点で立ち止まった。

 これくらいの距離なら離れてても問題ないだろう。

「よかったらどうぞ」

 椿さんはポケットからアメを取り出して僕にくれた。

「ありがとうございます」

 本当なら仕事中の飲食は柚希様に許可を貰わないといけないが、せっかく集中して描いているのを邪魔してしまうのも悪いと思い、何も言わずにアメを口の中に入れた。

「ん、しょっぱい?」

 レモンのような酸っぱさではなく、塩分のしょっぱさを感じた。

「熱中症予防のアメなんです」

「なるほど、そういうのもあるんですね」

 熱中症対策には水分だけでなくて、塩分も取らなければならないから、こういう手軽に取れるのは便利だな。今度買い出しに出た時は探してみよう。

 この辺りはちょうど日陰になっているので気持ち涼しく感じる。




「日本には慣れましたか?」

「はい、みなさんのおかげでとても助かっています」

 気候はやはりフランスとはだいぶ違うのでだいぶ戸惑ったが、こればっかりは徐々に慣れるしかない。

「よかったらフランスのお話を聞かせてくれませんか?」

「いいですよ。そのかわりに日本についても聞かせてください」

 それから僕たちはお互いの国について、風習やら食文化について語り合った。

 一番驚いたのが街中にゴミ箱がほとんど設置されていないということ。これは言われてみればそうかもしれないと思い、公園を見渡す。

 フランスではあちこちに設置してあったし、捨てる場所に困ることはあまりなかった。

「ではゴミはどうしているんですか?」

「ゴミ箱を見つけるまで持ち歩いたり、コンビニまで行ったり、中には家まで持ち帰る人もいるのよ」

「なるほど、それでコンビニがいっぱいあるんですね」

 椿さんはやや違うなーみたいな顔をしていたが、なんとなくは理解できた。

 「逆に日本に来て驚いたことはある?」

「色々あります。例えば飲み物の自動販売機がこんなところにあったりするのはフランスではありえないですね」

 僕はすぐ近くの自動販売機を指差す

「ほかにもお店に行った時、笑顔で接客される従業員の方が多くて驚きます。柚希様などの方がそうされるのはわかるのですが、私が普通にスーパーで買い物をしてても丁寧にしていただくのには困惑しますね」

 やはりフランスとは違ったところが非常に多く、日本の文化や風習を聞くのはとても楽しかった。


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