~表参道6人旅~
「これなんてどうです?トーカは身長もありますから似合うと思うのですけど」
ヘレーネ様が服を持ってきたので、とりあえず体の前で合わせてみる。
「良いですわね。灯華は胸も小さいし色々似合って羨ましいですわ」
まさか胸の話題が出ると思ってなかったので少し焦ったがすぐに冷静さを取り戻す。
「そ、そうですね」
さすがに失礼だと思ったのか代わりにユリアさんが謝ってきた。
「すいません。悪気はないんですが、やはり日本語だと思っていることとは少し違うふうに伝わってしまうみたいで」
「大丈夫です。わかってますから」
どのみち僕は男なのだから胸が小さいと言われても特に何も思わない。
「ありがとうございます。私もその服、灯華さんに似合うと思います」
ヘレーネ様とユリアさんの2人にお墨付きをもらったので買おうかと思って値札を見たらびっくりした。
フレンチスリーブのブラウスなのだが、色はブラックで、お値段はなんと3万8000円。
思ったより値がはるが、可愛いのは確かだ。
予算的にも出せないわけではないので、一応購入候補に入れておこう、と思い、手に抱えたまま下に合わせる服を探す。
「あ、このスカート可愛い・・・はっ!」
思考が完全に女性になってた。自分に似合うスカートって・・・。
自己嫌悪に陥ったところに神林様が来た。
「灯華さん、今日はありがとう」
「え?えっと、どういたしまして?」
感謝される心当たりが全くなかったので曖昧な返事になってしまった。
「昨日、私が会話に入りたくて困っていたところにきっかけをくれて本当に嬉しかった。こんなに楽しい日は生まれて初めて」
神林様は僕の手をがっつり握る
「ありがとう灯華さん、あなたとも仲良くしたい。これからもよろしく」
「こちらこそよろしくお願いします。」
そっと神林様の手を握り返すと、頬を紅潮させる。
「あ、いやごめん。思わず手を握ってしまって」
「あ!神林さん!引き抜きはいけませんよ!トーカは私のメイドになるのです!」
「おいコラ、灯華は私のメイドだ」
柚希様とヘレーネ様がいつもの口喧嘩が始まったのを横目に僕たちは笑い合う。
よかった。これで亡くなった母にようやく報告ができる。
僕にはこんなに良き友人ができました、と。
「あら、もうこんな時間ですのね」
結局、おすすめされたブラウスとそれに合うデニムを買った。
服を買った後もフランスではあまり体験できなかったことが出来た。
「日本で有名な遊びはこれで一通り試したんじゃないか?」
カラオケで声がやや枯れた柚希様が時計で時間を確認する。
「ボウリングも初めてでしたが、中々楽しかったですね。是非またやりましょう」
ボウリング、ダーツ、カラオケと色々しているうちに気がつけば18時になっていた。
「今日は疲れましたし、荷物も多いのでそろそろ私は失礼しますわね」
「まぁちょうどいい時間だな、また月曜日に」
「今日は誘ってくれてありがとう。本当に楽しかった。また誘ってくれると嬉しい」
今日は解散ということになり、迎えを呼ぼうとスマホを取り出すと、それを見た神林様がハッとした顔になった。
「よければ連絡先を交換しないか?家ではなく、携帯のほうを」
「あぁもちろんいいとも。ここにいる全員交換しよう。軽い連絡なら家を通すのは面倒だしな」
僕たち使用人も含め、全員が連絡先を交換した。
「灯華さんにもメールとかしてもいい?」
「もちろんです神林様、ただ私は普段、柚希様のお世話がありますので携帯を見る時間が夜くらいしかありませんので、返信が遅れてしまうかもしれません」
「いや、いいんだ。ありがとう。じゃあ今日はこれで」
一番最初に迎えが来たのは神林様のところで、椿さんと神林様は一礼して去っていった。
「よかったですわね柚希、あなたは友人と呼べる人が私くらいしかいなかったのに」
「そうかもな。だからこんな私に付いてきてくれてありがとうヘレーネ」
2人の友情が少し羨ましかった。
 




