~皆様、休日はどのようにして過ごされるご予定ですか?おほほほ~
明日は土曜日、この学校が始まってから初めての休日だ。
課題が終わっている生徒は8割といった具合だろうか。
教室の中はこの休日の過ごし方で賑わっていた。
「柚希はこの土日はどう過ごす予定ですの?」
放課後になり、福田先生が教室から出て行った瞬間、
「特に何もない。まぁいつものように絵を描いて過ごすことになるだろう」
「でしたら土日どっちかで構いませんのでこの辺りを案内してくれません?まだこっちに来たばかりでカフェの場所すらわかりませんの」
「なるほど、よし行こう。灯華。当日は君も同行してくれ」
「かしこまりました」
と、ここで僕は自分の後ろの席から神林さんがそわそわしていることに気がついた。
おそらくは話題に入りたいのだろう、しかし気質のせいか躊躇っているようにも見えた。
「神林様は、休日のご予定とかはありますか?」
本来であれば使用人の立場としてこの発言はあまりしていいものではないのはわかってる。
だけれどこの場だけはお許し下さい。最初のきっかけさえあれば後は大丈夫なはず。
「ううん。何もないんだ」
「あら、でしたら神林さんも一緒に行きませんか?」
こういうとき、ヘレーネ様の明るい性格は助かる
「うん。ありがとう」
そうしてきっかけを掴んだ神林様も含め、3人で休日の話を始めた。
ちょんちょんと、肩をつつかれたので振り返ると、神林様の付き人である椿さんが僕を見つめていた。
「ありがとうございます。霧架様は内気な性格もあってか今まで友人と呼べる人があまりいなかったのでお誘いいただけてとても嬉しいです」
「いえ、私も神林様がご一緒のほうが楽しいですから」
「あなたは優しいのね」
年上を感じさせる優しい笑顔を浮かべる椿さんは神林様の姉のようだった。
「灯華、椿、当日は君たちも来るのだから話を聞いておけ」
椿さんと二人で話していたら柚希様に咎められてしまった。
「はい。わかりました。ふふっ」
二人で一度目を合わせると自然と笑ってしまう。
この土日は楽しくなりそうだ。
「では表参道に11時集合だな」
どうやら集合場所は決まったようだ。
「この中で車の運転ができるのは灯華だけだからよろしく頼む」
「かしこまりました。責任をもって務めさせていただきます」
「あら、それでよろしいんですの?休日なので私としては使用人としてではなく友人として同行してほしかったのですが」
「ありがとうございます。ですがーー」
「確かにそうだな。当日は他の者にしよう。ただその後の散策は歩きになってしまうが大丈夫だろうか」
断ろうとした僕の言葉を遮ったのは柚希様だった。
「私は大丈夫」
「私もですわ。それに徒歩のほうが色々見れると思いますし」
「わかった。なら灯華だけではなく、ユリア、それに椿も当日は使用人という立場ではなく友人として接して欲しい。せっかく同世代なんだ。楽しく過ごそう」
使用人としてではなく、友人として過ごせるなんて思ってもなかった。
ありがとうございます、柚希様。
帰宅後、夕食の席で柚希様がふと何かに気がついたようだ。
「しまった。明日出かけるというのに灯華の女装服を用意してなかった・・・」
死活問題だった。
「どどどどどうしましょうか」
僕としてはメイド服でもいいのだが、友人として、と言ったからにはこの服はダメだろう。
「お任せ下さいお嬢様」
力強く発言をしたのは庭担当がメインの末永さんだった
「灯華さんが女性らしく見え、なおかつ男性だとバレないコーディネートをして見せます」
その姿は自信で満ち溢れていた。
「わかった。服装に関しては末永に任せよう。そういえばファッションが好きだったな」
「はい!お任せ下さい、というわけで後で私の部屋まで来てね」
「はい。よろしくお願いします」
そうか・・・僕は女装しなきゃいけないんだった・・・




