~嵐の後の結束~
結局その後、福田先生が戻ってくるまでは凍りついた状態だった。
「はい、じゃあ今日はここまでにします。イーゼルとキャンバスはそのままでいいので、今日はそのまま帰宅していただいて結構です。明日必要な物は教室の教卓にプリントが置いてありますので、それで確認してください」
そう言うと福田先生はイーゼルを片付け始める。
「あの、柚希様」
「灯華、手伝ってこい」
柚希様は僕が何を言おうとしたのかわかってたようだ。
「よろしければお手伝いしますね」
福田先生にそう伝えて僕も片付けを始める。
「あら、ありがとうございます」
僕が片付け始めると、ヘレーネ様と神林様お付のユリアさんと椿さんの2人も手伝ってくれた。
4人で片付けるとすぐに終わった。
柚希様もヘレーネ様も僕たちのことを待っていてくれた。
「はい、ありがとうございました。では明日からもよろしく頑張りましょうね」
そう言って福田先生は教室をあとにする。
「よし、じゃあ帰ろうか」
時刻は12時30分、そろそろ昼食の時間か。お屋敷に戻ったら昼食の準備をしなければ
そういえば神林様は先に帰られたのだろうか、お付の椿さんはまだここにいるけれど・・・。
5人で教室へ戻ると、他の生徒はもう帰った後のようで、誰もいなかった。
「あれ?」
教卓へプリントを取りに行ったユリアさんが小さく狼狽えた
「ユリア?どうしましたの?」
すぐに気づいたヘレーネ様が近くまで寄る
「ん?どうかしたのか?」
それを見て柚希様も何かが起こっているということに気がついたようだ
僕も確認しようと柚希様の後ろから教卓の上を確認すると、そこにはビリビリに破かれたプリントがあった。
「捨てるでもなく、隠すでもなく、わざわざ破いて放置するとはな。相当のひねくれ者だな」
柚希様はプリントの欠片を拾い上げる。
「さすがにこの状態では解読できないな」
ヘレーネ様とユリア様は絶句している。
考えられるのはさっきの騒動だろう、だが元の原因は彼女たちだし、逆恨みとも言える行為だ。
「どこの学校でもこんなものなのですね、少しがっかりです」
「こういう手合いは相手にするだけ調子に乗るから無視するのが一番だ。言及するだけ無駄だろう。灯華、悪いが職員室まで行ってプリントの予備をもらってきてくれるか」
「はい、少々お待ちください」
1階の職員室へ行くために教室を出ようとした時、僕が開ける前にドアが開いた。
「予備のプリント、貰ってきた」
教室へ入ってきたのは神林様だった。
その手にはプリントが3枚あった。
「ん、ありがとう」
「お礼申し上げますわ」
それを柚希様もヘレーネ様も素直に受け取る。
「いや、元はといえば私が・・・」
そこまで言いかけたところで顔を下に向けてしまう。きっとさっきの行動を後悔してるのだろうか
「謝る必要はないからな。さっきも言ったが君がやらなければ私がやっていた。気にする必要はない」
柚希様らしい言葉だったが、ずっと無表情だった神林様は少し笑ってくれた。
「ありがとう」
それだけ言うと椿さんと2人で帰ろうとしたが、柚希様はそれを引き止めた。
「私は初日から教室中を敵に回してしまった。だから君がよければこれからも仲間になってほしい」
「いいの?」
「もちろんだ。今は少しでも仲間が多いほうが互いの為になると思うんだ」
「柚希?もちろん私も仲間ですわよね?」
柚希様はヘレーネ様も顔を片手で制しながら神林様の手を握る。
「今日から仲間だ、よければこの後、ランチでもどうかな」
よかった。柚希様も交友関係を育もうと思っていたようだ。
「うん」
「私も行きますわ」
聞いてもないのにヘレーネ様も返事をする
「なんか余計なのも混じってるがとりあえず私の屋敷まで行こうか。灯華、ランチは君が作れ」
「かしこまりました」
初日から大役を仰せつかった。
よし、柚希様のご友人のためにも頑張るぞ。




