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#12―00




 二月も終盤、終わった瞬間に伝説と化した音楽祭(バレンタイン)の余韻も静まった頃のこと。


「……そう言えば、そろそろ部屋の炬燵を片付けなければいけませんね」


 お昼休みに清歌が何気なく零した言葉に弥生と絵梨がピクリと反応した。


 厳しい寒さも和らぎつつあり、三人は「そろそろ春だね~」「期末試験も近いよね~」などと話しながらお昼ご飯を食べていたので、清歌の発言はごく自然な流れではある。


「おコタ……片付けちゃうのか~」


「ま、いつまでも出しっぱなしには出来ないわよねぇ」


 弥生と絵梨のとても残念そうな様子に、清歌が小さく微笑む。


 まだ思い出したかのように冷え込む日はあるのだが、どこかで思い切って片づけないことには四月まで出しっぱなしになってしまいかねない。とはいえ、あのぬくぬくと心地良い魔力にはなかなか抗えず、桜の季節まで炬燵が部屋に居座るというのも良くある話である。


 ただ清歌の場合はそこまで炬燵に執着は無い。というのも清歌は自宅に居るときはアトリエにこもっているかピアノを始めとする楽器を奏でていることが多いので、炬燵を使う時間は少ないからだ。せいぜい読書をする時や、宿題を片付ける時くらいのものである。


 家に炬燵が出ていれば、暇さえあれば――否、暇を作ってでもぬくぬくゴロゴロしているという確信のある弥生たちとは大違いである。ちなみに弥生の場合だと炬燵から頭と手だけを出してポータブルゲーム機で遊び、絵梨の場合はお茶をすすりながら読書といった過ごし方になるだろう。なお、そのまま寝落ちするところは共通である。


 せっかく出した炬燵なのだから、もう一回くらい皆でぬくぬくしながら遊びたいよね――そんな話が三人からほぼ同時に出る。お誂え向きに次の週末は試験期間に入る前だ。


「遊ぶのは良いとして……何をしようかしら。またボードゲームでもするの? それとも……蕎麦打ち?」


「あはは、蕎麦打ちは無いよね。ボードゲームは……まあ悪くない、かな?」


「そうですね、やってみると意外と盛り上がりますし」


 <ミリオンワールド>という最新鋭のVRゲームをプレイしておいて何を今さらボードゲーム――と思いきや、遊んでみれば昔ながらのアナログなゲームというのも独特の良さがあるものだ。ダイスを振り、カードを引いて一喜一憂するのは結構ハマるものがある。負け続きで熱くなりすぎる者がいたり、何故か強運を発揮して独り勝ちする者がいたりするのもご愛敬であろう。


「……う~ん、でもメインイベントにするにはちょっと弱いかも?」


「この間は初詣だったし、夏はプール遊びだったものね。なにかこう……欲しいわよね、コレっていう目的が」


 意見の一致を確認した弥生と絵梨に、清歌は「そういうものだろうか?」と首を傾げる。弥生は夏以降特に用事が無くとも清歌の部屋に遊びに来て、駄弁ったり演奏を聴いたりすることがあるのだが、大人数で集まる場合は別の話という事のようだ。


 ちなみにこのプランが実行されれば、凛と千代は黛邸に初訪問となる。以前から清歌と面識のあった千代も、敷地内にある別邸で開催されたパーティーに招待されたことはあるのだが、プライベートなスペースの方にはまだ行ったことが無いのである。


 あの二人の事だから、清歌の部屋を訪問すれば妙にハイテンションになるか、もしくは逆に緊張してカチコチになってしまいかねない。いずれにしてもゲームどころではなさそうなので、そういう意味でも何かイベントを用意しておいたほうが無難である。


「ふふっ、のんびり炬燵に入って、ただ取り留めのない話をするというのも、それはそれでいいかもしれませんけれど」


「そもそもの目的はもう一度炬燵でぬくろうってことだから、それはそれで間違いじゃないわよね」


「……あっ、そうだよ! おコタがメインなんだから、それに合うことをしよう」


 何かをひらめいたらしい弥生がキュピーンと瞳を輝かせた。


「ズバリ、鍋パーティーをしよう!」







 その日の夕刻、<ミリオンワールド>からログアウトした清歌たち七人は、フードコートでお茶をしながら“鍋パーティーin清歌の部屋~炬燵との別れを惜しんで~(仮称)”計画について話していた。


 全員の予定に問題はなく、ついでだから試験勉強の下準備――例の自炊作業である――などもやっつけてしまおうという風に話は纏まった。残す議題は、メインイベントたる鍋を何にするのかということだけ、なのだが――


「よし! じゃあ闇n――」「ダメ、絶対!」「却下ね!」


 鍋パーティーをしようと言った時、必ず誰かが提案するであろうネタを悠司が真っ先に挙げ、それを食い気味に弥生と絵梨が叩き潰す。がっくりと肩を落とした悠司が、弥生に恨めし気な視線を向けた。


「……せめて最後まで言わせてはくれまいか?」


「どうせダメに決まってるんだから、別にいいじゃない。っていうか別に本気で提案してるわけじゃないんでしょ?」


 呆れ気味に言う弥生に対し、悠司は顎に手を当てて割と真面目な表情である。


「ワンチャンアリかもと思っていたんだが……やっぱダメかな?」


「ふむ、実際にやったという話は聞いたことが無いからな。面白そうな気はするが?」


「ちょ、ソーイチ? あなたまでナニ言ってるのよ……」


 意外にも本気が含まれていたらしい悠司に加え、聡一郎までもが乗り気を見せ、絵梨が文字通り頭を抱える。


「ヤミナベ……とは、どのようなものなのでしょう? 私は聞いたことが無いのですけれど……」


「えっ!? あ~、清歌は知らないんだ」


「まあ鍋っつーても、コレはまあ……ある意味ゲテモノの類だからなー」


 マンガやラノベなど物語の中では結構登場し、話題に上ることはあれど本当にやったことがあるとは寡聞にして聞かない、というのが闇鍋という代物だ。海外での暮らしも長く、中学はお嬢様学校だった清歌が知らないのも無理のない話であろう。


 そんなわけで闇鍋が初耳だった清歌の為に、主に弥生が一般的に知られている闇鍋について解説する。


 基本的には参加者がそれぞれ具材を持ち寄って鍋に投入し、部屋の明かりを消して何が入っているのか分からない状態で食べるというものだ。食べられない物は入れない、一度箸をつけた具材は必ず食べなければいけないといったルールがあり、要は鍋を使った一種の(罰)ゲームのようなものだ。なのですき焼きやおでんといった、料理としての鍋とは根本的にカテゴリーが異なる。


「……で、持ち寄る具材は、普通は鍋に入れないようなものを選ばなくちゃならんのだ」


「ちょっと悠司、清歌に嘘を教えちゃダメでしょ。別にそんなルールは無いはずだよ。……だよね?」


 弥生にしてもマンガなどから得たうろ覚えの知識なので、正式(?)な闇鍋のルールを細部まで知っているわけでは無いのだ。


「ま、そういうルールは無かったと思うわ。ただ大方そういう方向性になるみたいよね」


「うむ。どうせやるなら面白い具材を用意したいところではあるな」


「……けれど、そのルールでは自分の用意した具材を引いてしまう可能性もありますよね?」


「そそ。自爆するジレンマがあるから、実際やるとしたらなかなか思い切れないでしょうね」


 ちなみにお話の中での闇鍋だと、大福や饅頭といったお菓子や果物といった甘いものや、においのかな~りキツイ発酵食品の類が地雷食材として投入されている。他にも噛み切れない程硬くて筋張った肉や、泥臭い川魚なんていうのもアリだろう。


「……そういう鍋に入れちゃったら地雷になる食材だって、普通に食べられるものなわけでしょ。お話としては面白いかもだけど、食べ物を無駄に遊びに使う感じがして、なんかこう……モヤッとしない?」


 どうやら普段から料理をしている弥生は、食材をいい加減に扱うことに対して思うところがあるようだ。もっとも闇鍋というものは、口にした具材に対して「なんでこんなものを鍋に入れたんだ!」とツッコミを入れるのを楽しむようなものなのだから、弥生の言う常識的な言葉はそもそも趣旨が違うと言える。


「それなら普通は捨ててしまうような具材を持ち寄るならいいのでは?」


「アレだね! いわゆるゼロ円なんちゃら的なやつ」


 年少組から飛び出た意見に、なるほどそれならアリだろうと弥生が頷く。ただこの場合だと食材を集める時点で、えらく手間がかかってしまうところが問題だ。はっきり言って闇鍋にそこまでの労力を割く気は、提案した悠司ですら全く無い。


「ところで……具材はともかく、どのような味付けのお鍋なのでしょうか?」


 清歌の素朴な疑問に一同がキョトンとした。闇鍋の話ではおかしな具材ばかりがネタとして取り上げられ、鍋自体の味付けについてはほとんど語られていないからだ。


「言われてみれば、味付け云々についての記述は読んだことが無いわね」


「……そう言えば、何かで聞いたか読んだかしたことだけど、本当に闇鍋をするならカレールーを幾つか鍋に放り込むと良いんだって」


「カレールーを?」


「うん。カレー味にしちゃうと、大抵の具材は食べられるようになる……らしいよ?」


「よし! それなら今度の鍋は、激辛カレー風味闇鍋に決まr――」


「だからナイって!」「ふふっ、残念ながら無いですねー」「そういうのは男子だけでやって頂戴な」


 ちゃっかり激辛を付け加えて再度提案する悠司であったが、女性陣の反対によりあえなく撃沈するのであった。


 その後の話し合いで、オーソドックスにすき焼きか水炊きあたりにしようということになったのだが、悠司がピリ辛――本人は激辛が良かったのだが妥協したのだ――鍋が食べたいと主張し、それが一定の支持を得られたので、いっそのこと二種類の鍋を作ろうということで話がまとまった。なお鍋の具材は大体共通しているので、その点も問題は無い。


 そんなわけで鍋パーティーは、弥生主導によるすき焼きと、悠司と聡一郎主導によるピリ辛鍋の二つで開催されることとなったのである。







 そうして迎えた鍋パーティー決行日、七人は<ミリオンワールド>をプレイした後で弥生が普段から利用している庶民の味方的スーパーに寄って食材を買い込み、黛邸を訪れた。ちなみに鍋を始めとした調理器具と調味料の類は、弥生からの指示のもと既に清歌の部屋に用意してある


 黛邸に来てしばらくの間、初めて見るその威容に凛は借りてきた猫のようになり、千代の方も凛ほどでは無いもののかなり緊張した様子だった。それも清歌のピアノを聴いたり、試験の準備を手伝ったり、ボードゲームで遊んだりしている内にほぐれ、いよいよメインイベントの時間となった。


「あら、弥生は出来合いの割り下は使わないのね。関西風ってやつなのかしら?」


 弥生が砂糖と醤油に日本酒で手際よく味付けしていく様子を見て絵梨が尋ねた。


「関西風……なのかな? 単に好みの問題だと思うけど、割り下ってちょっと甘さが濃くて食べてるうちに飽きてきちゃうんだよね。だから私が作る時はちょっとアッサリ目の味付けなんだ」


 一方、男性陣主導の鍋はと言うと――赤かった。


「うわ、悠司さんの鍋は真っ赤ですね……。凄く辛そうです」


「まあキムチ鍋だから凄く赤くなってるけど、多分それ程辛くはなってない……ハズ」


「ちょっ、本当に大丈夫なの? 私たちも食べるんだから、激辛はNGよ?」


「うむ、恐らく大丈夫だろう。七味と山椒の投入は阻止したからな。それは個人の取り皿の方で入れることになった」


「……つまり鍋の方に入れようとはしたのね」


 絵梨のツッコミに悠司が目を泳がせる。悠司の名誉のために補足すると、何も皆の意見を無視して激辛鍋にしようとしたわけでは無く、思ったよりも辛さがマイルドになったので少し調整しようとしただけなのだ。ただ悠司の辛さ基準での調整なのでやり過ぎてしまう可能性が否定できず、聡一郎に阻止されたという訳である。


 そんなエピソードを挟みつつ双方の鍋がひとまず完成する。


「では、いただきま~す!」「「「頂きまーす!」」」


 七人が一斉に鍋に箸を伸ばす。お肉の減りが早いのは高校生ともうすぐ中学生というこの面子では当然のことと言えよう。お奉行様である弥生と悠司は自身の分を確保しつつ、せっせと具材を鍋に追加していく。


「弥生さんの味付けは、確かにあっさりめの上品な味で、とても美味しいですね」


「えへへ、そうかな? ありがとう、清歌。気に入ってくれたのなら何よりだよ」


「んっ、キムチ鍋の方も美味しい! ……けど悠司くん、やっぱり結構辛いよ?」


「そうか? かなり自重したつもりなんだけどな……」


「うむ、このくらいなら許容範囲だろう。ピリ辛鍋ならばこのくらいでなければな」


「……そういえばソーイチも結構辛くても大丈夫なんだったわ。人選をミスったかしら?」


「あはは。確かに辛いですけど食べられない程ではないですし、美味しいですよ?」


 ワイワイと話しながら鍋をつつき、清歌を除く女性陣の食欲が一段落した辺りで絵梨がおもむろに切り出した。


「さて……それじゃあ弥生、この間発表された次のイベントをどうするつもりなのか話しておかない?」


 絵梨に話を振られた弥生は「そうだね」と頷くと、せっせと具材を投入していた菜箸の手を止めると一旦鍋に蓋をした。


 先日発表されたイベントは“伝説の大枝垂れ桜を目指せ!”と銘打たれたイベントで、三月の第二週と第三週を丸ごと使って行われるかなり長期間のイベントだ。


 一体何の伝説なんだ? というツッコミはさておき、イベント会場は一つの島ではなくほぼ円形に散らばっている群島であり、その外周部のいずれかの島から冒険者はスタートし、巨大な枝垂れ桜が咲き誇る中央の島を目指すというイベントだ。要するに冒険者全員でお花見をしようということである。


 大小数十ある島の中には人が暮らしているものもあれば無人島もあり、また橋が渡されているものや定期船で行き来できるものもあれば、逆に基本的にそう言った交通手段の無い孤立した島もある。冒険者はイベント期間中、これらの島に自由に立ち入ることができ、採取や魔物の討伐などを行うことができる。ただしここで得られたアイテムは一時的にロックがかかり、イベント終了までに大枝垂れ桜へ辿り着けなかった場合は全て没収となってしまうとのこと。なお戦闘で得られた経験値はそのまま残る。


 イベントということもあり、会場の島々で遭遇する魔物や発見できる素材類はかなり“美味しい”ものであり、特に孤立した島ではその傾向がより大きいとアナウンスされている。もっとも討伐と採取に夢中になるあまりゴールできなかった場合は、経験値以外が無駄になってしまうので注意が必要であろう。


 このイベントの特徴として有人の島にはポータルが設置されていることで、スベラギなど普段の拠点としている町やホームとの行き来ができるのである。つまり消耗品の類が底を突きて、にっちもさっちもいかなくなるということは無いのだ。


 さて清歌たちの予定にこのイベントを当て嵌めると、ちょうど一週目の前半が期末――学年末というべきか――試験に当たる。イベントには基本的に参加するマーチトイボックス(弥生のおもちゃ箱)で、絵梨が「どうするつもりなのか」と尋ねたのはこの期間中についてなのである。


「試験中だと勉強もするしあんまりゲームに集中できないよね? だからこの期間に船を作っちゃおうと思うんだけど、どうかな?」


 冒険者たちは枝垂れ桜(ゴール)を目指すに当たり、大きく分けて二通りの方法を選択できる。一つは島と島を順番に渡っていくという徒歩ルート。もう一つはこのイベント専用の船を作ってそれに乗っていくという海路ルートである。


 前者は橋や定期船の関係で、どんなに最短コースを選んでも基本的に回り道になってしまう。ただ自然とルート上の島を踏破することにもなるので、その過程で討伐や採取も行えるというメリットもある。


 後者の場合、先ず船を作る必要があるのでスタートがどうしても遅れてしまうというデメリットがある。反面、船を作った後は徒歩よりも大きくスピードが上がり、船自体にポータルが設置されるので拠点として利用することができるようになる。また孤立した島に直接向かえるというメリットもある。


 なお船を作るのは、スタート地点にチームごとに与えられる造船ドックに素材を投入することで自動的に出来上がるというシステムになっている。ちなみに投入した素材によって選択できる船の性能やデザインが変わるとのこと。


 弥生の提案は、試験期間中のイマイチイベントに集中しきれない期間を、船の製作に当てようということである。


「私は賛成ですよ」「ま、そうよね」「うむ、良いのではないか」「異議なしだな」


 弥生の提案に清歌たちが賛同する。一方、年少組の二人は顔を見合わせてから尋ねた。


「あのさ、お姉ちゃん」「ヒナちゃんのリムジンを使えばいいのでは?」


「「「「「あ~~」」」」」


 二人のもっともすぎる疑問に五人が声を上げる。


 夏のスタンプラリーイベントの時もそうだったが、今回も飛夏の能力を使えば最初からかなり楽に先行することできるはずだ。特に今はビークルモードを使えるようになっているため、快適にかつ全員一緒に移動できるのだ。


 ただそれではイベントをクリアすることはできても、楽しむことはできない。特に今回は船を作って乗ることができるという初めてのゲームシステムがあるのだから、これを使ってみないという手は無いだろう。


「っていうわけだから、こういうイベントの時はヒナの能力は偵察くらいにしか使わないようにしてるんだよ」


「ふ~ん、そういうことなんだ」「なるほど。納得しました」


 弥生の説明に年少組も納得し、こうしてイベントの序盤の予定は決まった。


 鍋の方も用意した具材はあらかた食べ尽くし、お腹いっぱいになった弥生がそろそろ片付けに入ろうかと思った時、清歌がさり気なく爆弾を投下した。


「すき焼きですと最後のシメは、やはりうどんでしょうか?」


「えっ!?」「はい?」「ええっ!?」「お、お姉さま……マジですか」


 弥生たちがギョッとする一方、悠司と聡一郎は当たり前のように頷く。


「うむ、すき焼きと言えばうどんで決まりだろう」


「あ、ただこっちはキムチ雑炊にするから、量は控えめで良いんじゃないか?」


「……と、いうわけですので、弥生さんお願いできますか?」


 三人から視線を向けられた弥生は、そう言えばうどんとごはんも用意してたよなと思い出して一瞬遠い目になってしまう。相変わらずその容姿に似合わない健啖家ぶりを発揮する清歌に感心するやら呆れるやらではあるが、ともあれ食べられるというのならば作らねばなるまいと気を取り直す。


「はいは~い。だけど私たちはもうお腹いっぱいだから、ほとんど食べられないよ? 本当に大丈夫?」


「はい、お願いしますね」「やっぱり鍋にはシメが無いとな」「うむ、これも一つの様式美だろう」


 その後、うどんと雑炊を美味しそうに食べる三人に釣られて弥生たちも結局シメを食べてしまい、お腹がはちきれそうになってちょっとだけ後悔するのだが――それはまた別の話である。






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