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ミリオンワールド!  作者: ユーリ・バリスキー
第十章 凛&千代、参戦!
132/177

#10―02



~ 情報交換掲示板「第二の町に行ってみた(?)」より ~




 主だった高レベルの鍛冶職さんがアルザーヌに行くようになったから、最近はアルザナイト製の武具も安定してバザーに出るようになったね。


 供給は安定したけど、相変わらず高い……


 ま、それはしょうがないでしょ。特に属性剣とか使う前衛は、アルザナイト製の武器を持ってるかどうかで、一流と二流が分かれるという昨今の風潮があったり……なかったり。


 あるのかないのか、どっちなんだ!?


 ん~、そういう風潮があるかは知らないけど、アルザナイト製の武器を持ってる前衛さんは、野良パーティーでは大人気だよ。


 ぶ……、武器の性能だけが強さではない! と、思ってる……人も、きっといるよね?


 何故に途中からトーンダウン……w


 言い切ればカッコよかったのにねぇw


 まあ真面目に答えると、確かにプレイヤースキルが重要なミリオンワールドだけど、アルザナイトの武器を持ってるってことは、それを買えるか自分で作れるだけの実力を持ってるってことだからね。


 目安にはなるよね。安定してお金を稼げないと、買えない値段だもんなぁ……


 確かに>< ところでアルザナイト製の武器はそれなりに出回ってるけど、鉱石の方はめったに見ないよね。なんでだろ (・・?


 あ~、もしかしてアルザーヌに行ったことない人?


 ええ、まだないですね。


 やっぱり。アルザーヌは町からすぐに坑道に行けるようになってるんだけど、出入り口付近で鍛冶職さんたちがアルザナイトの買い取りをやってるんだよ。


 バザーに出したら多少高く売れるかもだけど、鍛冶職さんに素材持ち込みで装備品を割安で作って貰った方がもっとお得だからね。


 そういう事だったんですね。……ということは、通行料を払ってアルザーヌに行って自力で採掘した方が、結果的には割安になる?


 なるよー。ただそれは自力で採掘できるならって条件があるけど。なにせ坑道はダンジョンになってるからね。


 あそこの魔物は、やたら防御が堅いのが多いんだよな~


 ……この間、失敗してロックアントをリンクさせてしまいました。結果はご想像にお任せします。……コワカッタヨー。


 想像するまでもなかった!


 ご愁傷さまです……。ちなみに推奨レベルはどのくらいです?


 アルザナイト目的で浅い所にしか行かないんだったら、30あれば大丈夫。


 えっ!? 30では厳しいんじゃ……?


 あ、パーティーを組んで、魔法攻撃職か打撃攻撃系の前衛がいる場合の話ね。


 坑道はダンジョンだから敵が一段強いからね。ちなみにアルザーヌの町周辺の魔物は、30あればソロでも余裕だから。


 レベル30ですかぁ……。私はまだスベラギで地道にレベルを上げます。目標は、目指せ自力でアルザーヌ!


 ミリオンワールドは自分で目標を決めることが大切。


 だね~。ああ、その目標なら5~6人パーティーで平均レベルが23か4あれば大丈夫ですよ~。


 ちなみにスベラギを出た後にボスはいないけど、どうしても戦闘を避けられない場所が何か所かあります。詳しくは攻略サイトの方へ。


 攻略サイトを見てみたけど、アルザーヌへのルートに関しては情報がほぼ出尽くした感じだな。


 ハイレベルのギルドさんたちは、軒並み踏破したみたいだからね。それだけ情報も集まったんでしょ。


 そういう意味で言えば、未だに謎に包まれたままのイツキって……


 それな。“■■■■■■にある■■■■■を開放”ってもう、何が何やらw


 レベル制限の方は10だったよな? ってことは15のアルザーヌよりも楽に行けるはずなんだけど……


 ちょっと待って。レベルが低くてもいいからって、簡単とは限らないんじゃない? だって、何かを開放しておかなくちゃいけないんだよ?


 ……そういえばアルザーヌの方はレベル制限だけか。ってか、アルザーヌは条件が緩すぎじゃね?


 そこは突っ込まなくて良くない? ハードルが低いからこそ、アルザナイト製の武器が出回るようになったんだからさ。


 上に同意。運営に見つかって、ハードルを上方修正でもされたりしたら……


 キャーー!


 ヤ、ヤメロ、ウンエー! ぶっ飛ばすぞぉー!


 いやいや。ぶっ飛ばしちゃあかんてw 本当に修正されちゃうよ?


 だったらその前に、俺がキサマを修正してやるうっ!!


 いや、だからダメだってば(~_~;) ってか、この場合は修正っていうより、バランス調整でしょ。


 オンゲーのバランス調整って、大抵プレイヤーに厳しいモノだったりするんだよなぁ。アーツの威力が下がるとか、消費MPが多くなるとか……


 今んとこそういう調整は無いよね。ありがたや~


 そそ。ぶっ飛ばすだの修正だの、物騒なことを言っちゃあいけません。


 ま、話を戻すとして。俺が聞いた話では、どっかのダンジョンに封印されたポータルがあるんじゃないかってことだけど……?


 う~ん、ありそうな話だけど。その情報のソースは?


 えーとタルタル……じゃなくって、オイスター……だったかな?


 ブーブー! ボケがつまらないぞー、金返せ~!


 そうだー、返せ返せー! ついでにアルザナイトも寄越せー!


 確かに面白くなかったけど……、ブーイングはやめてあげよ? それが優しさってものだよ。


 その優しさが辛い(;ω;) ……えー、情報の元ネタね。大手ギルドに所属しているフレさんから聞いたんだけど、そういえばどうしてそういう方針を立てたのかまでは聞かなかったな。


 確証があるわけじゃないような気配が……w


 条件の文言から推理したって感じね。何かのクエストっていう可能性もあると思うんだけど……


 私もそう思います。せめて場所が特定できればいいんですけどね。


 っていうか、このイツキに到達した人は、なんで情報を上げてくれないんだ? 隠蔽か? 隠蔽なのか!?


 隠蔽って……w 情報を掲示板に上げるかどうかは、個人の自由ですよ。そこを非難するのは筋違いかと。


 お得な狩り場とか採取ポイントとか、誰だって他人には教えてない情報ってのはあるからね。


 だねー。それにイツキ特有の素材をバザーで売りさばいて大儲け……みたいなアコギなことはやってないから、確かに非難することじゃない。まー、情報を上げてくれたら有難いってのは確かだけど。


 それにしても一体誰なんですかね、イツキを発見したのは。大手ギルドさんじゃないんですよね?


 大手さんは皆アルザーヌを目指してたみたいだから、違うと思いますよ。あ、それとは別に、ココで個人を特定するような真似はご法度ですよ。スレが消される可能性がありますのでご注意を!


 悪質な場合はペナルティーを食らうって話だからね ((((;゜Д゜))))ガクブル


 ホントですか? 以後、気を付けまーす。……でも、誰かはともかくなんか不思議だと思いませんか?


 不思議って何が? そのクエストを見つけたこと?


 と言うよりもですね、スベラギの町周辺でレベル20くらいまで上げたら南の端を目指すっていうのが、ミリオンワールドのセオリーですよね?


 攻略サイトとかではそう書いてあるね。


 そそ。魔物の強さ的にもそう進めていくのが堅実。南端のフィールドボスを斃してポータルを使えるようになったら、冒険者として一人前ってとこかな。


 というかレベリングに適した魔物を探していくと、自然にそういう順番になる。これは開発がそういう風に設計してるんだと思う。


 で、それが何か?


 ええと……、つまりそういう自然な流れでゲームを進めると、イツキへの転移条件が隠れたままなんですよ。


 あっ、そういうことか……。つまり彼らはどこかで自然な流れから外れてしまったんだな。


で、そのまま戻って来てないと。漂流かw


 わはは。遭難かもしれないねw


 普通に迷子では? でもまあ不思議っていうのは分かった。自由度の高いMMOといっても、大体の方向はみんな一緒だからね。その方が情報も人も集まりやすいし。


 考えてみれば、情報が外に全く漏れてこないってことは、彼らは誰にも協力を求めてないってことなのかもしれないね。


 本当に謎が多い話ですね~。彼らは今頃どこを彷徨っているのやら……







~ 情報交換掲示板「スベラギウォーカー」より ~




 最近になって、スベラギに冒険者経営のお店が増えてきましたね。あ、お店というのは露店ではなく、店舗を営業しているという意味です。念のため。


 露店の方は前から沢山ありますからね。


 中堅ギルドさんもお店を持つようになったからだね。大通りからちょっと外れると、いろんなお店があって面白いよ。


 っていうか、最近になって急に増えたような気がするんだけど……


 それは多分、アルザナイトバブルのせいだろうね~


 アルザーヌに到達した中堅ギルドが、アルザナイトでまとまった資金を稼いでお店を買うなり借りるなりしたってことだね。


 ってか、バブルww


 みんな、ディスコにいくわよ! 扇子は持ったかしらぁ~?


 お立ち台はアタシのものよっ!


 え? 何の話です? 私、分からないんですけど……(?_?)


 まさかのリアルバブル世代!?


 ち、ちち、違いますぅ~。資料映像で見たことがあるだけですぅ~


 わ、わわ、わわわわ私もそうですよぉ。いやだなぁ~、バブルなんていつの時代の話ですかぁ?


 激しく動揺してるww


 ってか、流石にリアルバブル世代はミリオンワールドをやってるわけが……いや、可能性はあるか?


 ミリオンワールドの年齢制限は満10歳以上だから、無いとは言い切れないかも?


 まあ、現実リアルを問うのはマナー違反だからこの話はここまでにしましょう。ところで、バブルという事は、やはりいつかは弾けるんでしょうか?


 まあ、供給は増え続けてるから、いつかは需要を超える時が来るんじゃない?


 そうしたら値段は一気に下がるかもね。だから転売で儲けようとしている人は結構危ないかも。


 …………やべっ(汗)


 ちょっと急いでバザーに行ってきます!


 ガタガタッ……ドドドド……、ギィーー、バタン! ピュ~~


 焦って家の外に出た……のかw


 ルール違反じゃないけど、あんまりあくどい転売はするなよ~。


 あはは。アルザーヌ発見直後はともかく、今はもう上手く転売しても大した利益にはならないだろうね。


 というか、話を戻しましょう。ここは「スベラギウォーカー」ですから。


 そそ。……で、冒険者がやってる新しいお店は、やっぱり鍛冶系装備が多いのかな?


 メインストリートに近い場所を見た限りではそんな感じですね。やっぱりアルザナイトでひと財産築いたわけですから、どうしても鍛冶職さんがメインになりますよ。


 まあ、生産系のギルドだといろんな職人を抱えているところもあるから、そういうギルドのお店だと装備品の総合店みたいな感じになってるよ。


 そういうお店でも今はアルザナイト製品がトレンドだから、パッと目に付くところには鍛冶製品が置いてあるよね。


 あ~、あるある。店の奥に行ってみたら革製の防具も扱ってた……みたいな。


 流行り廃りはあるから仕方がないとはいえ、今はちょっと、鍛冶以外の職人さんが不遇ですよね。


 そんなご時世に果敢に挑戦するかのようにオープンした、布と革製品専門店がありますよ!


 あ、それ知ってます。アレでしょ? メインストリートのポータルそばの道を西に入って、更に路地を北に曲がったところにある……


 そう、その名も「タカムラ洋品店」さん。オープンしたてですけど、魔法職と斥候職をやっている者の間では、既に有名店になりつつあります。


 金属製の装備ばっかり強化されるんじゃ、バランスが崩れるからな。そのお店の職人さんには頑張って欲しいですね


 まあ、お店じゃなくってバザーを探せば布製や革製の装備も沢山あるんですけどね。


 それを言ってしまっては……w でもお店の方が買い物をしてる感じがして、私は好きですよ。


 場所によっては試着もさせてもらえますからね。バザーのプレビューと、実際に着るのでは印象が変わるから、私もお店で買い物派です。


 ぐっ、それは現実リアルではネットショップばかりの俺に対する挑戦か? そうなのか!?


 へ? いえ、全然、そんなことは……。あ、もしかして……


 な、なにかな?


 ショップの店員に話しかけられるのが苦手な人だったりします?


 ぐはぁっ!! クリティカルヒット、俺に99999ダメージ、俺はチカラ尽きた。……みんな、後はたの……む……、バタッ。


 し、しっかりしろー! 衛生兵、衛生兵ーッ!


 そうだ、同類なかまは沢山いる! 実は僕もだ!


 なにっ! そうなのか!? 実は俺もだ!


 何を隠そう私もよ。そういう人は、女子にもいるわ!


 ……沢山の仲間の祈りが奇跡を呼んだ! 俺、復活! いや~、良かった。俺だけじゃないんだな~。


 何? このコントwww まあ、店員が鬱陶しい時は確かにあるよね。ミリオンワールドのお店でそういう目に遭ったことはないけど。


 ……そういえば、プレイヤーがお店を開く時って店員さんはどうするんだろう? 職人さんが店員もやってるの?


 工房と店が直結しているようなお店では、そういうこともありますね。後は商人プレイをしているギルメンに任せているというパターンもあります。ですが、やはりNPCを雇っているお店が多いですね。


 店番NPCはお店経営には必須。というより店番を雇えることが店舗を持つことの一番のメリットと言っていい。


 露店は自分でやるしかないから、時間が拘束されますからね~


 フムフム。つまりNPCに給料を払えるくらいコンスタントに稼げないと、お店は持てないと。私はまだしばらく露店でガンバル……><


 頑張ってください! 応援してます!


 がんばれー。……ところで露店といえば、大手~中堅ギルドが軒並みお店に移ったっていうのに、露店スペースは今でもいっぱいだよね? なんで?


 そういえば、大手さんがいっぱい確保してたスペースも、すぐに埋まっちゃいましたよね。


 それは新規参入組が露店を出してるからじゃないかな? たぶん経験値稼ぎを兼ねてるんだと思う。


 あ~、そういえばそんな方法もあったっけ。


 レベル10前後くらいまでなら、結構バカにならない経験値が入る……と、攻略サイトに書いてありました。低レベル帯でのお勧め経験値稼ぎ法の一つらしいです。


 そんな情報がサイトに載ってるから、露店はいつもいっぱいなんだろうな。最近は便利になったな~


 攻略まとめサイトがオープンしたのは、割と最近ですからね~。それまでは情報を集めるのも大変でした……


 だよな~。あの頃は口コミで話を集めるしかなかったからな~


 今はこの掲示板で情報交換できるからね。ってことで、ちょっと聞きたいんだけど、プレイヤーが作った料理を売ってるお店ってもうあるの? 露店でもお店でもいいんだけど……


 ああ、この間のアップデートでプレイヤーメイドの料理にはバフ効果が付くようになったからな。格上と戦う時には便利そう……なんだけど、そういうお店は見たことないな。


 NPCの飲食店なら、露店もお店もたくさんあるんですけどねぇ。


 ってか、正直言って料理って今まで見向きもされなかったスキルだろ? 店に出せるようなものは、まだ作れないんじゃないか?


 確かに職人さん……というか料理人さんがある程度育たないと、お店を開くことはできませんね。料理特有の問題もありますし……


 料理特有の問題?


 料理の作業はリアルにかなり近いんですよ。まあ雑にやっても一応完成するんですけど、丁寧に、現実と同じように作業すると、品質が向上するんです。


 ……つまり、実際に料理が出来ないと上手に作れない?


 スキルレベルが上がるまでは、そうなるんじゃないですかね。ちなみにちゃんと作って品質を上げた料理じゃないと、バフ効果はつかないって話ですよ。


 なるほどね~。確かにお料理屋さんはしばらく現れないかも><


 でもそれって逆に、リアルで料理が出来る人ならすぐに売れるモノを作れるってことなんじゃない?


 理屈はそうだけど。じゃあ料理が“ちゃんと”出来る人ってココにいる?


 目玉焼きなら……


 レトルトとカップ麺なら……


 電子レンジなら使える……


 こんな有様ですからねぇw っていうか、最後のは機械の使い方でしょ。もはや料理でもなんでもないww


 確かにw まあこれから始める新人さんには、最初から料理人を目指す人もいるんじゃないかね? それに期待しましょう。


 たいへんたいへんたいへん! みんな、大ニュースだよっ!!


 なんだなんだ、変態か? ヘンタイが出たのか!?


 変な人は結構いるよ、ミリオンワールドには。ふれんずさんとか……


 変な人かもだけど、優しい、いい人たちですよ。つまり……変人紳士?


 新たなジャンルだな、変人紳士。変態紳士と比べてどちらが真人間に近いのか。考察の余地がありそうだ。


 ……バカ話はそれくらいでいいかな?(#^ω^)ピキッ


 ごめんなさい。で、大ニュースとは? プレイヤーの飲食店でもオープンした?


 違いま~す。あ、でも近いかも?


 近くて違う?


 このスレでもちょくちょく話題に出るトイボックスさんなんですけど、近々露店は店仕舞いするそうです


 な、なんだってー!!


 一大事じゃないですか! 急いでお野菜シリーズを揃えに行かないと! ちょ、ちょ~っとお財布が軽くなっちゃいますけど……><


 えっ? お野菜シリーズって何ですか? それ知らないです。


 あ~、ここしばらくあの露店は開いてなかったからな~。タイミングを逃すと見たことないってこともあるか。


 収穫祭イベントの魔物のフィギュアのことです。っていうか話が逸れるので、前スレを見て下さい。というか話には続きがあって、露店をやめて代わりにお店をオープンするんだそうです。


 えっ、マジっすか!?


 そりゃあ、確かに大ニュースだね。今まではお金があってもタイミングが合わないと買えないっていうお店だったからね。


 (´▽`) ホッ それなら一安心です。……ところで、近いっていうのはどの辺が近いんですか?


 そのオープンするお店というのがですね、なんと“カフェ”らしいんですよ! で、そのカフェにトイボックスさんの玩具アイテムも置くってことなんだそうです。


 見事に繋がった! それにしても飲食店はNPC任せにできないよな。あの人たちはこれからお店に専念するのかね?


 あ、そうではなくて、カフェの方は知り合いが経営するんだそうです。ちなみに露店は今度の土曜までで、お店のオープンはその次の土曜っていう予定でした。


 なるほど。確かにグッドニュースでしたねっ! ^^b


 今からオープンが待ち遠しいですねー


 ……あれっ? ちょっと待って。ってことは、トイボックスさんたちはお店に立たなくなっちゃうってこと? それじゃあ、似顔絵はどうなっちゃうの?


 あっ!!


 そうだ、それがあった!


 私も気になったんでちゃんと聞いてきました! 似顔絵屋さんは今までと同じくらいの頻度で、これからもやるつもりだと言ってました。ただ、店内でやるかどうかは、まだ決めていないそうです。


 そりゃ良かった。……けど、あの似顔絵がレアアイテムっていうのは、今後も変わらんわけか。


 ひとつひとつ手描きなんだから、それは仕方ないでしょ。


 ふっふっふ……、その似顔絵を描いて貰った私。ついでに出力サービスを使って、今はリアルのお部屋にも飾っています^^


 なん……だと。


 なんて運のいい……。それにしても屋台ではなく、いきなりカフェをオープンとは。やっぱりトイボックスさんたちは面白いですね!


 ですです!


 コレだから目が離せない^^


 ってか、すぐに居なくなっちゃうからね~w


 あはは、確かにww







 その日の露店の営業を終えたマーチトイボックス(弥生のおもちゃ箱)の五人は、休憩兼ちょっとしたギルド会議の為に一旦ホームへと帰還していた。


 本日の議題は新メンバー加入についての話である。そう、弥生の妹である凛が、遂に受験から解放され<ミリオンワールド>を始めるのである。


「ってわけで、次の日曜から凛が<ミリオンワールド>を始めますので、悪いんだけどみんなフォローをお願いします」


 弥生がペコリと頭を下げる。


「凛ちゃんなら大歓迎よ。……で、受験の方はどうだったのよ? そっちが気になったらやっぱりゲームどころじゃないんじゃない?」


「ああ、それは多分大丈夫。正式な結果発表はまだだけど、試験を受けられる時点で合格はほぼ確定しているようなものだっていう話だし、アレは試験も良くできたっていう顔だったから」


「「「「おお~~」」」」


 四人にパチパチと拍手をされた弥生は、ちょっと誇らしげな笑顔をしている。ほぼ合格が確定しているとはいっても試験は試験なので、弥生はこのところ凛のことをずっと気にかけていたのだ。


「それにしても、あの凛ちゃんが清歌さんの通ってた中学に通うのか……。なんかちょっと不思議な感じがするなぁ」


「そう言えば悠司は、小さい頃は一緒に遊んでいたという話だったか?」


「小学校低学年の頃までだけどな。だからたぶん、その時のイメージが強く残ってるんだろうな~。あのよく笑う賑やかな子がお嬢様学校にねぇ……って感じだ」


「ま、凛ちゃんだって成長してるわよ、きっと。それより清歌は気が気じゃないんじゃないの? 中学時代の悪行が凛ちゃんに伝わっちゃうかもしれないって(ニヤリ★)」


 人の悪い笑みの絵梨が清歌をからかう。しかし言うまでもなく、この程度のことでは清歌を動揺させるにはまるで足りない。


「ふふっ、悪行……と言うほどの事はしていませんよ。ちょっとした騒動になったことがある程度です」


 実際、清歌たち当時の生徒会メンバーは、校則を破るようなこと、意図的に校則スレスレのことなどをすることは決して無かった。ただ、過去最高と呼ばれるほどカリスマ性のあるメンバーだったので、何かする度に騒ぎが大きくなりがちだったというだけなのである。


 もっとも騒ぎが大きくなることを承知の上で、確信犯的にアレコレやっていた――主に生徒会長が主導して――というのは紛れもない事実なので、教師側の視点では悪行(・・)というのは、当たらなくも遠からじといったところであろう。


「ただ、出来れば隠しておきたい事もありますから、その辺りはちゃんと手を打っておきました。ですから何も問題はありません(ニッコリ☆)」


「「「「………………」」」」


 いつもと変わらないニッコリ笑顔にも拘らず、何やら背筋にゾゾッとくるものがあり、どのような手を打ったのか追及することが出来ない四人なのであった。


「あ、そうそう、それで凛の友達で清歌の知り合いでもある千代ちゃんって子も、一緒に始めることになるから、そっちもよろしくね」


「そういえば、前にそんな話をしてたわね。千代ちゃんの方も、冒険者の抽選に当たったのね」


「実は抽選は少し前に当たっていて、先月から始められたそうです。凛ちゃんと一緒に始めたくて、待っていたのだそうですよ」


「へ~、タイミングが良過ぎるなとは思ってたんだけど、そういう事だったんだ」


 凛と千代は二人とも若干内弁慶なところがあるので、二人一緒に始める方がお互いにとって都合が良かったのである。


「しかし、次の日曜と言えば、近藤と田村さんが<ミリオンワールド>を始める日と同じだが……どうするのだ?」


「ああ、うん、そうなんだよね。少なくとも田村さんがあのお店を使えるようにしなきゃならないから、一度は合流してフレンド登録しとかないといけないんだよね。その辺の予定はこれから立てておくよ」


「それは任せた。それより凛ちゃんたちのレベリングとかはどうするんだ?」


「ギルドに入れるようになるくらいまで、自力で頑張るって言ってたから、暫くは装備とアイテムの支援くらいで大丈夫だと思う。だからこっちは予定通りお店の準備を進められるんじゃないかな」


「なるほど、来週は忙しくなりそうだな。商品のストックもちょっと増やしておきたいし……、イツキの探索はちょっとお休みかな」


 悠司としては先日取得した裁縫のスキルレベル上げもしたいところなのだが、次の日曜からは色々と忙しそうなので、そちらまでは手が回りそうにない。


 店については最初、田村たちに大部分を丸投げしてしまおうとも思っていたのだが、いつの間にやら掲示板で妙に期待されてしまっていたので、あまり手抜きなことも出来ないのである。


「ふむ。だが空き時間を使って、イツキの魔物の調査兼スキルの検証くらいなら出来るのではないか?」


「ま、そのくらいならできるんじゃないかしら。店の準備だって毎日時間いっぱいすることは無いでしょうし。そうよね?」


「うん。店内の商品配置とか飾りつけとかをやったら、あとは……あ、そうだ、田村さんたちは接客の練習をした方が良いだろうから、それに付き合うくらいかな」


 接客のシミュレーションに付き合うにしても、全員でやる必要はない。ついでに言えば天都と五十川も協力するだろうから、マーチトイボックス(弥生のおもちゃ箱)のメンバーはそれほど長時間拘束されることは無いだろう。


 弥生の予想に四人が頷く。――と、その時、清歌が何かを思い付いたように、袂からウィンドウを取り出した。


「これはもしかしたら……。あの、皆さん、ちょっと試してみたいことがあるのですけれど、よろしいでしょうか?」


 清歌の思い付きは少々お金がかかり、失敗した場合は全くの無駄になってしまう事だったのだが、それを聞いた四人は「それは面白そうだ!」と二つ返事で了承。早速全員でスベラギのとあるお店へと行くことになるのであった。


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