表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

木星の重力の海より

GL注意報

「おはよう、エルシオーネ。今日の朝ごはんは何かしら」


「おはようございます、姉さま。本日の朝はいつも通りハムとチーズの盛り合わせにトースト、ポーチドエッグですが、本来おはようという挨拶が適する時間帯より数時間ほど遅れたお目覚めですよ」


「あら、そうだったかしら。宇宙空間というものは時間感覚が狂うからいやね」


「狂うも何も、地上においでの時から地球の自転など気にせぬ生活をなさっていたように思いますが?」


「そうだったかしらね。生憎と、過去にはこだわらない事にしているの」


「ええ、承知の上で申し上げました」


「あら、悪い子ね」


「お褒めいただきありがとうございます」


「褒めた覚えはないのだけれど。むしろその逆ではないかしら」


「ええ、承知の上で申し上げました。それより、早くお支度をしていただきませんと折角温めた朝ごはんが冷めてしまいます。それとも姉さまはわたくしにもう一度ポーチドエッグを作れと仰りたいのでしょうか」


「まったく、貴女は本当に性格の悪い子ね。そのように急かされては私の行動が遅いように聞こえてしまうわ」


「事実、姉さまの起床は普段よりも数時間遅いものでした。ところで、お飲み物は何にいたしましょう?」


「そうね、いつも通りブラックのコーヒーでいいわ。もちろん砂糖は一ミリたりとて入れてはいけなくてよ?」


「承知しております。ではまた後ほど」


「ああ、待って。待ちなさいエルシオーネ。貴女、一つ大事なものを忘れていてよ」


「なんでしょうか、姉さま。何も忘れてはいないように思えるのですが、よければ教えていただけますか?」


「貴女は本当に悪い子ね、エルシオーネ。この私にねだらせたいと言うのかしら?」


「いいえ、そのようなつもりは毛頭ございません。ただ少し、姉さまの困ったお顔を見てみたいと思っただけなのです。御気分を害されたようでしたら平に謝らせていただきます」


「あと十秒以内に朝の日課を済ませてくれるのなら、この件については不問にしてあげましょう。ほら、早くなさい」


「了解いたしました。では失礼して」



「あら、今日は頬なのね。昨日は指先で一昨日は髪。唇にしてくれるのはいつなのかしら」


「それは……まだ勤務時間中ですので」


「ふふ、貴女は本当に悪い子ね、エルシオーネ。愛しているわよ」


「わたくしもです、姉さま。では、良き一日を」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ