未来は私の手のなかに
アンチ悪役令嬢
気が付いたら私は超絶美人のお嬢様だった。
どうやら死んでしまって、転生とかいうものをしてしまったらしい。
現在は十五歳です。中学三年生の金持ちの娘。
しかも、「悪役」とかいう役割のようです。
そんなこといきなり言われても困ってしまう。
よくわからないけれど、とある漫画に出てくる典型的な悪役だそうだ。
きっとあれだろう、特撮によくあるタイプの敵みたいなもんだろう。たくさんいて、「ヤー」とか「イー」とか言うのだろう。
それとも指示を出すほうか?最終回間際で死んだり改心するタイプか。
ちょっと楽しそうだわぁ。
そんなふうに思っていたら、同じく転生者だとかいう同級生がいろいろ教えてくれた。彼女は「主人公の友人その①」らしい。へー、その②とかもいるんだー。
彼女曰く、私は庶民の主人公を階段から突き落としたり、物を隠したり、服を破いたり、人前で罵ったりといういじわるをするそうだ。
え、なんだそれ。そんなことして何が楽しいのだろう。私の人生おわっちゃうじゃん、それ。
どうでもいいけれど、シナリオが昭和臭いのは気のせいだろうか。お母様の本棚で見た、昔の漫画のようなイジメではないか。
しかも、どっちかといえば「あの子にされたの!」と言って自演で使用されるタイプのいじめである。
原作を知らないのだが、とりあえず同級生情報では高校一年生から漫画が始まるらしい。
めんどくさいなあと思っていたが、なんかシナリオ通りに悪役をしないといけないらしい。しかも、バレたらうちのお父様の会社が潰れるらしいよ?
強制力とか言うそうだ。わあ、ウザい。
そもそも、巷でよく言われているらしい「悪役令嬢」なんて、あんまり漫画には登場してないんじゃないかなあ?
いるのはせいぜい「憎まれ役」である「悪役」(損な役回り)のライバル令嬢(真面目な金持ちお嬢様)か、当て馬令嬢(幼馴染み系金持ち美人婚約者)か、悪女(傲慢な金持ちで権力ありの美人か、スクールカーストが上の方の庶民元カノ)だろう。それとも、すべてひっくるめて主人公の味方じゃない女は「悪役」なのだろうか。
だとしたら、私は努力して最終的に友人を目指すべきだと思う。
原作は知らないが、やはりいじめはよくない。うん。
悪役は回避しよう。
そう思って主人公と出会ったら、彼女も転生者だったらしい。
だから、初対面で「ひ、ひどい!そんな怖い顔で睨まないでください〜、シクシク」とか言われて全力でディスられたっぽいので、考えられる限りの最大限の嫌がらせをしてやった。
自演臭いいじめなど生温い!
とりあえず、私は海外に留学することにして、現在自宅に引きこもっている。
――――学校に行かないことが、私からの、主人公への最大の嫌がらせである。
【父親視点】
娘が入学式の日から、高校へ行かなくなった。
「学校に行ったら会社が潰れるから、行かない。もし、私が学校に行かなくても潰れたら、それは潰れる運命だと思うんだ、私」
父親である私は、「そうかもな……」と言って、会社が潰れないよう死ぬ気で働くしかなかった。