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空想能力剣闘士  作者: 筋肉の脈動
6/6

剣闘死合

携帯投稿諦めました

電話で二回も書いていた文章消えました

「もうすぐ出番だ。準備して入場門へ来るように」


衛兵が来てそう告げ、私は頷いて入場門へと向かう

いよいよだ、この恐怖にも似た高揚感はいつになっても慣れない





.

.


入場門へ来るとそこには死合う相手の彼が既に準備をして待機していた


少し浅目の兜、両肩まで伸びた簡易鎧に近い胸当て、脛の半ばまで守られたレッグ、刺突剣を腰に差して左手にバックラーを装備した出で立ちだ

地味にゴージャス、殺意が湧いてきた…!


まぁ、聞いていた情報と何ら変わりなく、スピードに特化してダメージを与えるスタイルのようだ


「驚いた。噂には聞いていたが本当に着の身着のままで闘うのだな」


私の姿を見て彼は驚きの顔で言う分からない事はない

私はというと…


着の身着のままというのは流石に言い過ぎだが、防具は皮で出来た身軽な小手のみ、動きやすい服を身に付けて、帯で邪魔になる部分を縛っている出で立ちだ


「イマイチ自分にあった武器に出会えなくてね。不本意だが無手で闘っているよ」


本当は得意な武器があるのだが…あるんだけど…



流石にフォークを持って闘うのは恥ずかしすぎるんだよなぁ…





.

.


この世界に来て初めて使った武器?が小刀サイズ程もあったフォークで、5年もの間フォークと体1つでサバイバルをしてきた

その影響でフォークの扱いだけが異様に上手くなってしまい、それ以外の武器を使ってもしっくりとこないのだ

あの無駄にでかい鳥(アイン)には感謝しているが、フォークを武器だと言わんばかりに入れていたのは許せない

私は彼にフォーク無しでは生きられない身体にさせられたのよ!


ちなみに、三股槍、アーマーブレイカーといった、見た目や用途が近い武器も使ってみたりしたがやはりダメだった

本当に不本意ながらに無手と言う訳だ





.

.


「同じスピードタイプでもリーチで私に部がある訳だな。悪いが油断や手加減は一切しないよ、それで死んだ奴は沢山見てきたんだ」


ニヤリと笑う顔の濃い君である

普通にしていれば彼と呼べるのだが笑うと|顔の濃い君(臭そうな顔の君)になる

…残念系だ


「油断や手加減をしてくれれば助かるんだがね」


軽くサムズアップしながら答える

むしろぅち女の子ゃヵらわざと負けてぇーや♪


そこに衛兵が近づいてくる

始まるようだ


「1vs1総合戦だ。武器戦闘、魔法戦闘に制限はない。何か質問は?」


2人揃って首を横に振る

今さら聞く事もない


闘技場(うえ)の準備ができている。そちらも準備はいいな?」


私は右手を胸の前に出してガッツポーズを取る

準備万端の意志表示だ

肉食系女子として魅せてやろうじゃないの!

あ、でも顔の濃い君はNGです


「よし。では…開門!」


私達の確認を取り、衛兵が合図する

始まった…入場門がキリキリ、ギシギシといった重い音を立てながら開いていく

後戻りはできない


入ったが最後、生死不問の剣闘死合

地獄門とすら感じる入場門が開いた


「入場!」


その言葉に合わせて私達は地獄門へと踏み出していった





.

.


こちらの世界には幅広く剣闘会が行われている

私の居る国は最大級の国土を誇り、サーズニア帝国と言うのだが…

この国だけに限らずに隣国、はたまた隣々国までもが剣闘場を保有し、剣闘を嗜んでいる

まぁ、私の居た世界と比べて極端に娯楽が少ないのだ

こちらの世界の娯楽が剣闘会だと思って欲しい


そして何故そんな話をしたのか

こちらの世界には娯楽が少ない

大事な事なので二度言ったが、その少ない娯楽を少しでも楽しめるように創意工夫が凝らされているのだ



その創意工夫とは


私達剣闘士の登場演出であったり

剣闘場を実際の戦場のようにしていたり

大迫力で見れるようにしたり

剣闘士の強さを数字で表現したり

勝敗の勝ち負けに金銭を絡ませ、博打を催したり

私のサービスシーン(死語)があったり



等々、様々な工夫を凝らされているのだ


もうすぐ闘技場へとたどり着くのだが、私達が乗っているこの大きいエスカレーターみたいなのもその内の1つなのだ

闘技場の中心部へと上がって私達の派手な登場演出をする、アイドルもびっくりの登場演出である


私達の登場に観客が歓声を上げ、私達は観客へと手を振りアピールする

剣闘士界のアイドル、ジュリアちゃんだよー☆



「闘技場が縮小致します。観客席も配置が変わるよう動く為、巻き込まれないよう席に着いてお待ち下さい」


大きく注意喚起を呼びかける声が聞こえてきた

これからまた1つ、観客を楽しませるイベントが始まるのだ

観客はその声を聞いて手慣れたように素早く席に着く。遠目に見ると軍隊みたいだ


ドドンッ、地面から激しい地響きと共にそんな音がして、闘技場全体が揺れ始めた

闘技場が変形するのだ


変化が訪れたのは観客席だった

中心から外側に行く程山なりになっていた観客席がゆっくりと下降していく

高さが平面になるのと合わせて、1つに繋がっていた席も同じようにゆっくりとそしてバラバラになっていく

観客席がほぼ平面になった時か、ゴゴンッと大きな音がして闘技場の剣闘フィールド外縁部が現在の広さの半分を切り取る形で上昇を始めた

縮小という言葉通り、私達の立つ場所は直径が半分ぐらいになっている

観客席は未だ動いている、変形の途中だろう


私達の剣闘フィールドを切り取った部分が観客席と同じ高さまで上がり、今度は席が前方へと進み始めた

まるで合体ロボに乗る時のパイロットみたいだ

変形!闘技場ロボ!なんてならないかなぁ


観客席の全てが前に来ると観客席後部が上昇していく

見やすい形に戻るのだろう

それと同時に席そのものが闘技フィールドの動きと連結しているのか、上昇に合わせて綺麗に整っていく

建築が組み上がっていく様を早送りで見ているような気分だ、気持ちいい

ドォン、そんな音がして地響きが収まり静かになった


「縮小が終わりました」


短くアナウンスが聞こえた

観客も自分の見やすい位置取りをしているし終わったようだ


「中々緻密な作りをしている…。素晴らしいギミックだ」


周囲を見渡し、見惚れるように呟く

何度も見ている私でも飽きないのだ、初めて見るなら当たり前の反応だろう


やっぱり変形は男のロマンだよね!

私、女の子だけどね!


「皆様、大変長らくお待たせ致しました。これより第3死合、1vs1総合戦を開始します」


私はその一言に気を引き締めて構えを取る

彼も呆け顔を戻し、構えを取っている

じっくり、ゆっくりと構えを取り、気持ちを落ち着かせる


「初め!」


甲高い金属を叩く音と共に開始の合図を告げられた





.

.


先手必勝!勝負は主導を握った方が勝つ!

私は昔格闘技をやっていた訳ではないが、その言葉は一般的な生活を送っていても耳に入る言葉だった

なのでそれを信じて速攻をかけて主導権を把握しに掛かる事にしている

魔物相手でも剣闘士相手でも有効だったしデメリットも少なかったのだ


瞬く間に近づき、大きく顔面目掛けて振り抜く

初心者剣闘士ならば怯み、直撃を受ける一撃だが相手は熟練剣闘士だ

案の定バックラーで軌道を反らすように回避し、そして刺突剣での反撃までしてきた

闘いに身を置く者ならば当たり前の反応だ

私の拳は受け流されたが体までは流されていない

その突きをひらりと躱して一足で方向転換、近づけまいと彼が突きを放つが体を深く落として躱し、更に深く接近する

こちらの間合いに入った、そのままラッシュだ

顔へ、腹へ、盾へと打ち込んでいく

息継ぎも出来ない猛攻だ

が、同じスピードタイプに慣れているのだろうか?

こちらの攻撃は刺突剣の柄でガードし、体制を変えて胸当てで受け、盾によって反らすように受け流す

息の続く限りの攻防をしていく


「ッハ!」


悔しいが私が先制で動いた分、私の呼吸に限界がきた

呼吸すると同時に後ろへ下がる

追撃はない


「ッフー、なんて手数と攻撃の重さだ。受けた部分も痺れてる…。危うく初手で沈められるかと思ったよ」


最初の飛び込みから数分か、呼吸も忘れて防御をしたのか、既に彼の顔には汗が見える


「私は沈めるつもりだったがね。懐に飛び込んだところまではよかったが受けきられてしまうとは」


お互いににらみ合いながら賞賛とも取れる言葉を放つ


いや、割りと真面目に全部受けきられるのは予想外だった

1、2発はガードの薄い部分に打ち込み、動きを鈍らせる事ができると思ったのに…


「君のその拳は空想能力か?鉄でできた盾を殴って無傷。受けた場所は痺れてる程に重い。モーニングスターぐらいの打撃力はある」


冷静に自分と私を観察しているようだ

いやらしいタイプだな…


「そうだ。拳に魔力を纏わせている。鉄拳(アイアンフィスト)という空想能力だ」


拳に魔力を纏わせるまでは事実だが空想能力ではない

固くなるのは確かに魔力のおかげだが威力は単純に私の膂力だ

失礼な事を言われている気がする


会話して回復させる訳にはいかない

もう一度踏み込み、酸欠状態にして冷静な思考をはぎ取ってやる…!

私は構えを取った状態を解除し、脱力させる

そして一気にトップスピードに乗る


先ほどよりも随分と速度を上げているのだ緩急によって反応を一瞬、遅らせる

私が懐に飛び込んだのは一瞬、彼が攻防一体の反応が出来ずに防御だけをした結果だ

そのまましゃがみ、下から突き上げるように全体重の乗ったタックルを腹にぶちかます


「おぁぁぁぁぁぁ!」


気合と共に叫び、力ずくのタックルだ、技術なんてありゃしない

だが、この場では正解だ

懐に潜り込まれ、回避は出来ない、剣も今はただの棒切れだ

残りは盾でガードしかないのだ


ゴガァ!激しい音が私の体と彼の盾の間で打ち鳴らす

彼は衝撃をモロに受けて身体が浮き上がるように吹き飛ぶ

地面に足を付けてない、腰の入らない剣と盾しか残らなくなったのだ

そのまま飛び込む様に弾かれて浮いた身体に接近し、2発

顔、腹と打ち込む

しかし上手くはいかなかった

彼は両手をガードに使い、顔のガードを捨てて腹部のみを堅く守る

1発は脇へ、1発は腹へ狙った訳だが脇への一撃は腕、腹への一撃は盾でガードされてしまった

着地後追撃をしようとする私へ刺突剣を薙ぎ払い、けん制をして若干の距離を取られる

彼は左手に刺突剣を持ち替え、懐に入ろうとする私を防ぐ

逆手に持ったはずの刺突剣だが、私が攻撃に移る程に余裕のない乱打だ

一気に攻守が入れ替わる形になる

盾を持ったままの刺突剣にも関わらず、鋭く隙のない攻撃をしてくる

やっぱり剣闘士というのは理不尽な所が多い

例え両手を捥がれても噛みついてくるのだ


彼の怒涛の乱打を回避し、あわよくば接近できるように立ち回る

恐らく私の一撃で片手は使用不能とまではいかないが限界に近い

攻勢を受け、下がりながら時計回りに立ち位置を調整する

隙ができるならばこちら側だからだ

少し大きく下がりながら土を蹴り、浴びせる

右手で防がれる

動きは鈍いがまだあの右手は使えるようだ

下がったと思わせる緩急の足取りをして距離感を狂わせ、接近しようとするが冷静な思考を保っているようだ

掛からずにしっかりと間合いを取られているのでこちらもダメだった

くそっ、じり貧だ…





.

.


ひたすら避け、私の間合いに入ろうとするが彼はそれを許してくれない、もう何度目の攻勢か、攻めに転じようとしても出鼻を挫かれ全て失敗している

この状態に入ってどのくらい経過しただろうか

彼の利き手もだいぶ回復したようだし一度距離を開けて様子見をするべきだ

このまま攻勢を受け続けてはいつか被弾する

私は素早く判断し、少し距離が開いた所で大きくバックステップをした

お互いに荒い息遣いが聞こえる

男女の荒く、興奮したような息遣いだ

ん?勿論生死を掛けた闘いの方ですよ?勘違いしないでくださいね?


「ッハァ、想像以上に厄介だね、君は…!」


苦しそうな顔をして一息ついたのか、彼が言う


「そちらこそ、右手を貰った時は勝ちを確信したのにそれからの方がしぶとい。だいぶ右手も回復してきているようだし、もう奇襲も無理だろう。どう攻めるか悩んでいるが、もう一つの空想能力を使うしか手立てが見つからないよ」


「私も同じ意見だよ。次に懐に入られたら確実にやられる。入られない様に必死に守っている現状では引き分けがいい所だろう」


この男と同じ意見なのは癪に障るが…仕方ない

お互いに距離を取り、魔力を練り上げる

私は深呼吸をして魔力を丹田に集中する

気持ちを落ち着かせ、腕を顔の前で交差させて全身に力を込め…


「コォォォォォ…ハッ!」


ドンッ!


爆音と共に私の周囲に土煙が舞う


土煙で視界が遮られているが、向こうにも彼が空想能力を発言するべく瞑想しているのが、いるの…

ええい、私の空想能力は闘技場で発動させると暫く前が見えないんだ!


私は彼の動向に気にする事なくそのまま土煙が収まるのを待つ



少ししてからだろうか、ようやく土煙が晴れ、私と彼は相対するのだった


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