御鳥様
聖水スタイル
「よく喋る人間よの」
突然、ひれ伏したくなるような声が頭に響く
私はビビって硬直し、股関に温い感覚を感じる
プロローグに続いて二度目のおもらしだ
「汝、どうしてここにおる」
そう告げられた、いや、念話ってやつなんだろうけど、その…神様からのお告げを貰うような…貰った事はないけど、そんな感覚を覚えた
ビビりながらも、それ以降に会話をされずに目…多分目だろう、一途に見られている感覚だったので恐る恐るに答える
「夢の神様?」
フッ 小馬鹿にされたような感覚を覚える
「夢ではない。股関に手を宛ててみるがよい」
そう言われ、股関に手を…
「当てないよ!漏らしてるんだよ!ビビったの、悪い!?」
「ならば分かるだろう、夢ではない、現実だ。もう一度問う。汝、どうしてここにおる?」
そう言われ、思考の海に入る
目を覚ますとここにいた。至ってシンプルだ
しかし、自分の名前も分からず、足元には巨木、目の前には巨鳥、自分の常識には当てはまらないものばかりで、全部夢ではなく現実…
「分かりません。目を覚ますとこの非常識な大きさの木の上で、そして遠くに…失礼ですが、こちらもまた、非常識な大きさの御鳥様がいらっしゃいました」
「ふむ…汝、名は?そして住んでいた国、分からぬならば住んでいた町、村でもよい、申してみよ」
一言、考えるような発言の後にそう聞かれた
「名前は…分かりません。覚えてないのです。国も…分かりません。こちらも覚えてないのです。しかし、住んでいた大陸、いえ、住んでいた惑星の名前なら分かります。地球、という惑星に住んでいました」
「迷い子か…あい分かった。汝、我が使途として名を与える。我が名はアイン。アイン・フォートレス。汝の名はジュリア。ジュリア・フォートレスと名乗るがよい。」
ジュリア…なんか違和感ある名前だなぁ…と心の中に不満を持つが、我慢する
相手は偉そうだし、不満を垂れ流すと同時に身も垂れ流しそうなのだ。最後の矜持だけは保たなければならない!
「ありがとうございます。しかし、節介名を頂いたのですが食料も水もなく…そしてこの巨木から降りる事すらできません。せめて下の森へと行きたいのですが、何か方法はありませんか?それと、できれば中に浮いてる状態をなんとかして欲しいのです…」
返事がない…口調からしてお爺ちゃんっぽいし話の途中で寝たのだろうか
鳥って目を開けて寝るのかなぁ…なんて失礼な事を考えると真横に黒い影が音もなく現れ、条件反射で体を捻る
「我が眷族である、安心せい」
体長…5メートル?翼を広げている状態なら更にでかい!多分…多分鷹だ!
でかい!怖い!かっちょええ!
「汝、今のままではこの世界の言葉も話せぬであろう。そして下は魔物の領域である。このまま下に降ろせば魔物の餌、到底抜けられるとは思えぬが抜けても人間の輪に入る事はできぬ。そこでそやつの出番だ。」
隣から視線を感じる
隣を見ると捕食者がこちらをガン見している
オイシクナイヨ?ホーラ、トナリノリンゴハイカガ
カネ?
「そやつに森の入口まで送らせる。入口ならば汝でも魔物を狩り、水を確保し、生きる事ができるであろう。言葉は五年程かかるが、魔法にて負担なく覚える事ができる。五年間森で鍛え上げ、生きる知識を身につけるのだ」
アイン様からそう告げられた。五年も森で生きらますか?私、女の子ですのよ?
「ありがとうございます。アイン様に見つけて下さって命拾いしました。ですがもう夜も来ます。せめて一夜、安全な所で気持ちの整理をさせて頂きたいのです」
「よかろう。この場で我が眷族と夜を過ごすがよい。夜は人間には耐えきれぬ寒さだが、我が眷族の魔力によって包む。寒さはなくなるだろう。気持ちの整理をつけるのだ」
そう言いながら枝へと体を移してくれた。アイン様優しい!ダンディだね!
「あの!服、あとご飯!どうにかなりませんか…?」
フッ 小馬鹿にされたような感覚を覚える
が、無言のままに飛び立つ
今度は暴風に襲われないが、そのまま飛び去ってしまった
くそ、ダンディじゃない!意地悪じいさんだ!
そんな風に思っていると、隣のでっかい鳥がまるでテントのように体を丸める
中で休め、らしい
あぁ…鷹ちゃんはダンディだね…
とりあえずパンツを脱いで鳥に体を寄せて横になる
色々あって疲れていたのだろう
すぐに眠気が来て何時の間にか寝ていたのだった