裏切られる事には慣れているから
『お前なんか変なんだよ。気持ち悪い。』
そう言われた。
白い肌に白い髪。色素の薄いブラウンの瞳。
何時までたっても成長しない身体。
僕は薄々気が付いていて、独りぼっちになるのが怖くて。
普通のフリをするのに必死だった。
『貴方は誰なの?』
見慣れた人影の無機質な声に振る向くと、透明な涙をを流しながら包丁を持っていることに直ぐに気が付いた。
『貴方は誰なの?』
まるで私の子を返せとでも言うように見慣れた人影は包丁を振り下ろした。
焼けるような痛みにうめき声が出る。
白い肌を赤黒い血が滴る。
僕はただそれを見て、「綺麗だな」なんて思っていた。
『裏切るより、裏切られる方が100倍マシ。』
僕はそういった。
白い肌に薄い一筋の傷を付けて。
少しだけ赤く染まったそれが成長したと錯覚させた。
僕はハッキリと気が付いていて、一人で居るのも怖くなくなって。
でも大人のフリをするのに必死だった。
「君は誰なの?」
路地裏で始めて見る少女に声を掛ける。透明な涙を流して雨に塗られてうずくまっている。
「どうしたの?」
こんなに優しい声が出せたのか?と自分でも思うと少女は顔を上げる。
『貴方は誰なの?』
見知らない少女は尋ねる、普通ではない僕に。まるで知られているような気がしたが悪い気はしなかった。
「君の味方だよ。」
僕が裏切られるまで一緒に居てあげる。
少し自分でもおかしくて笑い声が出る。
白い手を少女に差し出す。
掴む少女を見て。「綺麗だな」なんて思っていた。