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骸骨の夢  作者: 読歩人
第六章 人類反撃編
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黒い脇役

白とくれば次は黒。


黄金じゃないのかって?


「はずれだな」


 死者の眠る墓所にジフ様の声が響く。


 はずれ・・・・・・確かにはずれ(・・・)である。


 主の御言葉に心の中で同意しつつ改めて人間達を見る。


「何がはずれなんだぁー? 棺桶野郎」


 血の滴る剣を構えた男――鎧に盾そして剣まで黄金に輝く戦士は仲間の神官に振り向く。(わたしたち)を前にして視線を逸らすその余裕はどこからくるのか。


「エタリキ! こいつは希少魔族か?」


「ふむ? 初めて見る魔族ですね。指輪や冠は高く売れそうですが・・・・・・凶暴そうですし欲しがる貴族はいないでしょう」


 エタリキと呼ばれた神官は、胸から提げた聖印・・・・・・ではなく算盤を弾きながら答えた。白い神官服と六角形の描かれた帽子がなければその男は商人に見えただろう。

 神官はジフ様を値踏みするように見ながら再び口を開く。


死に損ない(アンデッド)のことなら私よりイーデス嬢のほうが詳しいでしょう。ねえイーデスさん?」


「・・・・・・普通の死に損ない(アンデッド)じゃないと思うけど・・・・・・さっきこの神聖騎士達が言っていた『棺の化け物』なら”絶望の岬(ここ)”の番人じゃない?」


 血溜まりの中に沈む神聖騎士を蹴りながら喋るのは長髪の女魔術師。髪に隠れてほとんど見えない顔の中、唯一見える唇は死人のように黒い。


「まあ、死に損ない(アンデッド)である限りあたしの敵じゃない。あっ! 希少種の頭蓋骨は高額で取引されるから壊すんじゃないよ」


 私は女魔術師の言葉に頭蓋骨を押さえる。


 頭蓋骨(これ)売れるのか?


「特にウドー! あんたいつもいつも貴重な部位をぶっ壊すんだから忘れんじゃないよ!」


 私がいくらぐらいなんだろうと考えていると女魔術師が杖――先端に髑髏のついた悪趣味なものだ――を振り回しながら最後の人間に注意した。

 その最後の人間は、仲間に顔も向けず返事をする。


「それだけ我の一撃が強力ということだ。壊されるのが嫌なら自分達だけで倒せ」


 落ち着いた声のその男・・・・・・もう一人の戦士は、周囲に並ぶ石棺の中から黙々と指輪や腕輪を取り出しながら続ける。


「我は落し物を拾うのに忙しいのだ・・・・・・しかし聖一教の狂信者は本当に気前がいい。浄化しただけで金貨も武具も全部残してくれるのだから」


 立派な体格と精悍な顔に似合わないせこいことを言う。ついでにそれは落し物ではなくて副葬品では?


 とにかく全員、あの勇者達(・・・・・)とは違う。なんというか・・・・・・似ているのもいるがあの目も眩むほどの精気が全く感じられない。


 ジフ様の壁になろうと決意していた私が肩透かし食らっていると背後から足音がする。


「ジーン様! 向上心があるのはいいことだが一人で突っ走る癖は・・・・・・」


「やっと追いついたわ~ん! 御無事ですかぁ~んジフ様」


 死霊魔術師(ネクロマンサー)デニム様とアーネスト・エンド様の御二人が追いついてきたようだ。


「ちっ! 二匹増えたじゃねーか。これ以上増えると面倒だしさっさと始末するぜー」


 最初の男、金ピカの戦士が面倒くさそうに言ってから薄ら笑いを浮かべる。


「じゃー化け物ども、ありがたく死にな。

 南部王国連合最強の国、ダブロス王国公認の最強勇者、このアライ・フォー様とその一味に倒されたことをあの世で自慢するといーぜ」


 ダブロス王国の最強勇者? 聞いたことがないな。


「アライ・フォー? 誰だ?」「勇者ってアンスター王国よね?」「はい、アーネスト様。確認されているのはそうです」


 ジフ様や他の御二人も御存じないようだ。


「へっ! これだからスチナの田舎者はよー

 こ・の・オ・レこそが魔王を倒し世界を救う伝説の勇者だ。金色に輝く黄金鎧(ゴールドアーマー)とあらゆる敵をニ撃で倒す超絶剣技・・・・・・雷光の勇者アライ・フォー様がなぁーーー!!!」


 自称最強勇者が偉そうに言う。


 スチナのどこが田舎だ! 魔術大国として有名なんだぞ! ・・・・・・滅びたけど。


「だいたいよー! アンスターの勇者だぁ? 聖一教の聖女様と一緒に旅をしときながら死なせちまう奴が勇者のはずねーだろ。たかが雑魚(・・・・・)死霊魔術師(ネクロマンサー)一体相手に命がけとかダサすぎるぜっ! それに・・・・・・」


 おや?


 棺が・・・・・・ジフ様がゆっくりと宙に舞う。


「・・・・・・つー訳で俺様こそが最強にして最高の真の勇者だ! 分かったか死に損ない(アンデッド)野郎共」


 長い無駄話が終わる。しかし私とデニム様そしてアーネスト・エンド様は金ピカ男の話などもう聞いてはいない。なぜなら骨が震えるほどの陰の精気が部屋を青黒く染めていたからだ。


「ジーン様?」「ジフ様?」


 陰気の源に向けて御二人が心配そうに声をかける。


金色の勇者(あいつら)じゃないからどうでもいいと思ったが・・・・・・誰が雑魚だと?」


 その源――ジフ様――の返事は深く静かな怒りだった。

外見とは言ってません。


末路も白い脇役と違うといいですね。

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