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骸骨の夢  作者: 読歩人
第六章 人類反撃編
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意思

言葉を使っても意思を伝えるの難しいものです。

「司令部に遠話しますから~ん。少し御待ちくださ~い!」


 アーネスト・エンド様は、ジフ様にそう言うと水晶玉を取り出し手をかざした。私はその遠話を止めるため桃色道化師の背後に回り必殺の左――竜骨毒手を打ち込もうと・・・・・・


 ピ~ヒャラ! ピ~ヒャラ! ピッ! ピッ! パラパ!


 ・・・・・・したところ鳴り響く音に腰骨が折れた。

 力が抜けたため躓いた私は、床に手をつき罵る。


 な、なんなのだ! この脱力感満載な音楽はっ!!!


 私は犯人・・・・・・死体獣踊子隊ゾンビビーストダンサーズを睨みつける。


【どういうつもりだ?】


 私が問うと死体獣踊子隊ゾンビビーストダンサーズの中から一体が進み出て鳴く。


「スキュフフ! キュフフ!」


 その死体獣(ゾンビビースト)――死体栗鼠(ゾンビスクィル)は、手に持った細長い枝――指揮棒だろうか――と首をフリフリ私に何かを訴えかけてくる。


 何を言いたい? 言いたいことがあるならはっきりと・・・・・・!?


 そこで私は死体獣(ゾンビビースト)達は喋れないことを思い出した。しかしそれでも私は同胞の言いたいこと、やりたいことを理解した。


 おまえ達はアーネスト・エンド様を傷つけるのを止めたいのか! その想いは分かった。確かにジフ様の恩人・・・・・・ではなく恩骨を手にかけるのは良くない。


 立ち上がった私は、三度左手を構える狙うは道化師の腕・・・・・・その先に輝く水晶玉。


「司令部聞こえる~ん? こちら癒しの道化師(ヒーリングクラウン)のアーネストよ~ん!」


 既に遠話が始まっている! 急がねばっ!!


 私は必中の左――竜骨毒手を打ち込もうと・・・・・・


 ピ~ヒャラ! ピ~ヒャラ! ピッ! ピッ! パラパ!


 ・・・・・・したところ、またもや鳴り響いた音に再び腰骨が折れた。今度は膝をつくだけで済んだが・・・・・・


 何なんだっ!


 再び死体獣踊子隊ゾンビビーストダンサーズを睨むと死体栗鼠(ゾンビスクィル)死体鼠(ゾンビラット)死体狐(ゾンビフォックス)・・・・・・何十という死体獣(ゾンビビースト)が私を見つめいた。


 ・・・・・・可愛くてもこれだけ数が揃うと・・・・・・


 私がほんの少し気圧されていると死体獣(ゾンビビースト)達が一斉に動いた。左右に首を振り始めたのだ。

 さまざまな小動物たちが並んでフルフル頭を揺らす姿は、本来なら心を和ませるのだが・・・・・・


 何が駄目なのだ?


「アーネストかっ! 俺の話を聞けーーーーーー!!!」


「はいはい! 何?」


「俺にも戦わせろぉぉぉーーーーーー!!!」


「はい! 聞いたわよバトゥーリアちゃん。だから侵入者・・・・・・勇者の情報をちょうだ~い」


 こうしている間にもジフ様があの勇者(・・・・)の居場所を知ってしまうかもしれないのだ!


 しかし死体獣(ゾンビビースト)達はただ首を振るのみ。その仕草は無理無理、駄目駄目、無駄無駄と・・・・・・とにかく否定の意思を私に伝えている。


 ・・・・・・もしかして?


 私は、まさかと思いつつ尋ねる。


【遠話をさせたいのか? ジフ様の望むままに?】


 死体獣(ゾンビビースト)小さく縦に頭を振った。私はその行動に驚く。

 なぜなら遠話をさせるということは、勇者の居場所を・・・・・・勇者とジフ様が戦うと言うことだからだ。


 この子達は何を考えているのだろうか? 勇者のことを知らないのだろうか? 悪者――主に魔王、たまに偽者の神様――がいれば脈絡もなく現れて、どんな危険も突破し最後には必ず勝利するあの英雄のことを。子供でも御伽噺で知っているというのに。


「勇者の情報だぁ!?」


「そうよ~ん。主に居場所を知りたいの~ん」


「ちっ! 自分だけ戦おう(たのしもう)ってか! ・・・・・・・まあいい! 一番分かりやすいのは・・・・・・生贄回廊辺りにいる聖一教の勇者達だ! こいつら”絶望の岬”を全部浄化するつもりか出会った死に損ない(アンデッド)を片っ端から・・・・・・」


聖一教の勇者(それ)ならジフ様が倒したわ~ん。他のを教えて~ん」


 まだあの勇者(・・・・)のことは分からないようだ。


 私は、アーネスト・エンド様の遠話も意識しつつ死体獣(ゾンビビースト)達の真意を考える。


 勇者とジフ様が戦うの止めない・・・・・・しかしジフ様が傷つくのをこの子達が望むはずがない・・・・・・どういうことなのだ?


 悩む私がうつむくと身に着けた鎧――顎割れ死体騎士の鎧が見えた。罅割れ灰に(まみ)れた同胞の形見・・・・・・ジフ様を守るため勇者に挑み浄化され灰になった顎割れ死体騎士。


 なるほどっ!


 私は死体獣踊子隊ゾンビビーストダンサーズの伝えたいことが分かった。


 ジフ様があの勇者(・・・・)との戦いを・・・・・・出世を望むのなら、止めさせるのではなく盾になってジフ様を守れと言いたいのだな!

 主の望みを叶えつつ守る・・・・・・まさに忠義の鏡。危うくジフ様の望みを邪魔するところだった。


【私はジフ様の壁になる・・・・・・ありがとう】


 私が感謝の意を伝えると死体獣踊子隊ゾンビビーストダンサーズはチョコンと小首を傾げた。


 控えめないい子達だ。


「聖一教の奴らを倒したのかっ! やるじゃねいか! 死霊騎士(デスナイト)の一団がまとめて消されたってのに・・・・・・じゃあ・・・・・・最期の墓所に南部王国連合所属の勇者がいる」


「最期の墓所ね? ありがと~ん・・・・・・ジフ様、ここから一階上にある最期の墓所に勇者がいるそうでぇ~す」


「よ、よし! 逝くぞっ、いや、行くぞ!」


 どうやら勇者の居場所が分かったようだ。しかし私は慌てない。ただ盾に、壁になればいい。


 迷いの消えた私は、ジフ様達に続いて歩き出す。

意思はともかく遺志は伝わったようです。

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