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骸骨の夢  作者: 読歩人
第六章 人類反撃編
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出世と安全

ハイリターン&ローリスクを求めるなら、冷静な判断力が必要です。


「まだだ! まだ足りん!! まだまったく足りん!!!」


 血塗れの手を握り締め絶叫するジフ様の姿に私の不安は増していく。


 何が足りないと!? もしや・・・・・・


「まだまだ足りん! 出世がっ!! 昇進がっ!!! ・・・・・・私は満たされないのだっ!!!!」


 不安的中! やっぱり出世である!


「第六席! 第五席! 第四席! 第三席! 次席!! 首席!! そしてぇぇぇーーー!!!」


 流石ジフ様! 志が高いっ・・・・・・しかしどこまで出世されるつもりなんだろう?


「いずれは死霊王!!! さらに()()くはっ・・・・・」


 ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ・・・・・・・!!!


 死体獣踊子隊ゾンビビーズトダンサーズが場を盛り上げる中、ジフ様の宣言が最高潮を迎えた・・・・・・


「ジフさま~ん! 大丈夫ですか~?」「ジーン! いや、ジーン様、心配したぞ!」


 ・・・・・・ところに桃色道化師アーネスト・エンド様と長身の死霊魔術師(ネクロマンサー)デニム様が追いついてきた。


「! ちょわっ!? 」


 世界に挑むかのように叫んでいたジフ様が慌てて口を押さえられた。


 不可思議な姿勢で固まるジフ様に御二人が話しかける。


「手も棺も血だらけ~んっ! 御怪我はありません? ジフ様!?」


「頭蓋骨は大丈夫かジーン様!? 正気に戻ったのなら答えてくれジーン様!?」


「あっああ・・・・・・」


「こいつらね! こいつらがジフ様にこんな酷いことを!!」


「この装いは聖一教の騎士と神官! 本当に大丈夫なのかジーン様!?」


「えっ? おっお!」


 御二人ともとてもジフ様を心配していたのか矢継ぎ早に話しかける。そのあまりの勢いにジフ様が碌に返事さえできない。死体獣踊子隊ゾンビビーズトダンサーズ支援(こうかおん)も途切れている。


「あら~~~ん? これは・・・・・・聖一教の一級大神官じゃな~い!!!」


「なんですと!?」


 床に転がる人間達の頭部――文字通りにコロコロ転がっている――を蹴っていたアーネスト・エンド様がある死体を見て驚いた。それは血で赤く染まった紫の大神官・・・・・・ジフ様が最初に潰した人間だった。


「すご~い! 聖一教の大物を殺し(やっ)ちゃうなんて最高よ~ん!! ジフ様!!!」


「一級大神官といえば特級大神官に次ぐ聖一教の幹部・・・・・・なぜ”絶望の岬”(こんなところ)に?」


「あ、ああ・・・・・・大丈夫だ聞こえてない。大丈夫だ聞かれてない・・・・・・相手は第九席・・・・・・私は第七席・・・・・・相手は私より二席下・・・・・・私は相手より二席上・・・・・・」


 桃色道化師と長身の魔術師が周囲の残骸に意識を向けるとジフ様が小声で喋り始めた。誰かに言い聞かせるように話しているが独り言にも聞こえる。しかし今の私にジフ様の御言葉を深く理解する余裕はなかった。


 ジフ様は出世したい・・・・・・しかし勇者は危険。


 ジフ様の望みとジフ様の安全・・・・・・この二つが私の頭蓋骨を悩ましていたのだ。今回ばかりは私の冴え渡る白色の・・・・・・いや、赤黒い脳無しの頭蓋骨もいい考えを導き出せない。


「お、おいっ! 第・九・席のアーネスト!」


 私が悩んでいるとジフ様が力を込め硬く強い調子でアーネスト・エンド様に呼びかけた。


「は~い! ジフ様?」


「こいつらが他に勇者がいると言っていた! その居場所を知ってるなら教えろ! ・・・・・・・・・・・・御願いします」


 振り向いた桃色の道化師にジフ様は竜の如く堂々と語りかけ・・・・・・蛇のように細々と御願いした。


 下の者でも丁寧に御願いする。素晴らしいです! ・・・・・・じゃなくて! ジフ様を止めるか? だがジフ様の邪魔をするなんて・・・・・・しかしあの勇者(・・・・)だけは不味い。


「勇者? それはえっと・・・・・・」


 私の苦悩も知らずにアーネスト・エンド様が問いに答えようとする。


 ・・・・・・ここは時間稼ぎに口を封じるか。


「御免なさ~い。詳しい場所は知らないの」


 だが、行動を起こす前にアーネスト・エンド様が答えてしまった・・・・・・この場合は良かったと思うべきだろう。私は左手の手刀を下げた。


「でも! 司令室に聞けば分かりま~~~~す!!」


 明るい声に私は再び竜骨毒手を構える。


 殺す(やる)

・・・・・・それがあればハイリスクに気づきますから。

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