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骸骨の夢  作者: 読歩人
第六章 人類反撃編
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ジフ様を追え

迷宮に(自分から)消えたジフ様。


凶悪な敵(勇者)の魔の手(正義の鉄鎚)より早く見つけましょう。


・・・・・・ジフ様がヒロインのようです。

「・・・・・・」


 一同が呆然と穴を見る中、


「・・・・・・ドルフィーレン、片付けておけ」


 最初に視線を外したのは死霊王様だった。机に向かい作業――勉強なのだろう――を再開する。それを皮切りに全員が動き始める。


 私がやることは決まっている。ジフ様を追いかけるのだ。勇者に遭遇する前に御止めしないといけない。”骸骨洞窟”の二の舞は御免である。


 私は、平らになったがらくた――ジフ様が吹き飛ばした元山である――を駆け壁の穴へと向かう。


「ま、待てっ! 私も行くぞ! 骸骨兵(スケルトン)!」


「デニムちゃ~ん、お先ね!」


 死霊魔術師(ネクロマンサー)デニム様の声が背を叩き、アーネスト・エンド様が私の横に並ぶ。


「俺も行くぞ!」「御供します!!」


 バトゥーリア様とマサ様もジフ様を心配して・・・・・・


「バトゥーリア様は、司令室にて指揮を御願いします」


「なぜだ! ドルフィーレン! 死霊王がいるだろ!」


「死霊王様は、『些事は任せる』とのことです」


「言ってねぇだろ!」


「些事は任せる」


「とのことです」


「・・・・・・」


 ・・・・・・バトゥーリア様はついてこれないようだ。


「俺にも戦わせろぉぉぉーーーーーーーーー!」


 バトゥーリア様の遠吠えが響く中、私達三人はジフ様を追う。幸いジフ様が開けた穴は人一人楽に通れるほど大きい。


「兄貴!! 御供します!!」


 謁見の間から届くマサ様の兄弟愛に胸骨が震えた。


 私も負けてはいられない。


 主人(ジフさま)愛を(たぎ)らせ私は進む。




~~~~~~~~~


 ジフ様の後を追うのは非常に楽であった。崩れ落ちた壁、砕かれた岩、倒れている柱、竜でも暴れたような破壊の痕が続いている・・・・・・私はジフ様が怪我をしていないか不安に襲われる。


「・・・・・・アーネスト・エンド様、”絶望の岬”は巨大な大岩を魔術で刳り貫いたと聞いたことがあるのですが」


「大丈夫よ~ん! デニムちゃん! 少々壊されたぐらいで崩れたりしない・・・・・・」


 桃色道化師――アーネスト・エンド様は、途中で顎骨を閉じた。視線の先に通路を裂く罅割れ、いや、長く深い亀裂を見たためだろう。棺が落ちるほどの幅はないからジフ様が落ちている可能性は低い。


「早くジーン様をとっ捕まえましょう!」


「・・・・・・えぇ! 一刻も早く!」


 なぜか御二人のヤル気が上昇している。


 さらに進むと死に損ない(アンデッド)を見つけた。一応確認のため足を止める。


 恐らくは死霊騎士(デスナイト)だろう。なぜ恐らくかというと・・・・・・


「これは!?」


「あららら? 粉微塵」


 そうバラバラなのだ。特徴的な黒い鎧も骨の体も、大は掌、小は小指程度まで分解されている。


 頭蓋骨裏(のうり)に私の体を粉砕した勇者の仲間――鉄鎚の戦士が浮かぶ。


【おのれ! 勇者!】


影の鎧(シャドーアーマー)は、修復の魔術が刻まれているはずですが・・・・・・」


「魔術・・・・・・違うわね。精気で引き裂いたように見えるわ~ん。これじゃ魔術を刻んでいても無駄よ」


 残虐な勇者達の行いに怒る私の横で、デニム様が困惑しアーネスト・エンド様が冷静に確認している。


「精気ですか?」


「えぇ、とても強い精気・・・・・・陰のね」


「陰ですか・・・・・・」


「他の精気が感じられないもの・・・・・・とにかく急ぎましょう!!」


「はい!!」


 御二人のヤル気が急上昇した。私と同じく勇者の非道にジフ様の危機を感じたのだろう。


 しかし私達が再び走り始めたときそれが襲ってきた。


 突風である。


「うぉぉぉーーー!」「あらぁぁぁーーー!?」


 通路の先から衝撃のような風が吹き抜けたのだ。デニム様とアーネスト様の御二人は声だけ残して飛ばされていく。私も咄嗟に踏ん張ったが足骨を掬われ倒れてしまう。

 石の床を鎧が叩く耳障りな音を聞きながら思う。


 攻撃!?


 地に伏しながらも前方を睨むと複数の人影と宙を舞う棺――ジフ様を見つけた。


【ジフ様!】


 体を押さえつける風を振り払い立ち上がった。全身の骨が軋むが気にならない。

 私は風渦巻く戦場に飛び込む。


 勇者(ぜつぼう)からジフ様(きぼう)を救うために。

主人公より強いヒロインなんていくらでもいます。


役柄も肩書きも能力には関係ありません。

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