蛇骨兵
新たなる脅威の登場です。
「だいたい準備ができたようだな」
ジフ様は、私達が準備した頭蓋骨の無い人骨と蛇の骨を前にしてより激しく青い光、陰の精気を溢れさせていた。
その陰の精気の影響か、熊の死体が死体熊になって死体栗鼠達と同じように踊り始める。
私は、その狂気の光景を横目に見ながらジフ様の怪しい踊りが始まるのを待つ。
「片腕や両腕が無いのも含めて五体分か。異なる形のものを創造したほうが、実験としてはより有効だな・・・・・・さて、私自ら最後の準備をするか」
ジフ様自ら最後の準備? いったい何をされるのだろうか?
ジフ様は、蛇の骨を掴むと人骨の欠けた部分、首や肩につなぎ始めた。頭だけ蛇の人骨、頭と右腕が蛇の人骨、頭と両腕全てが蛇の人骨・・・異形の人骨が組み立てられていく。
「これで良かろう。お前達は運がいい。きっと死霊軍団の歴史を変え、たぶん私を出世させるであろう新しき骸骨兵創造の儀式に立ち会えるのだから」
仰ることの半分も理解できなかったが、ジフ様が怪しい踊りを始められた。心なしかこれまでの踊りより激しく、勢いがあり溢れ出る陰の精気もただの光ではなく圧力を持って私の体にぶつかってくる。
溢れ出る陰の精気が、異形の人骨に流れ込んでいく。蛇の頭蓋骨が顎を動かすと蛇体、胴、足と次々に連鎖する。そしてジフ様の踊りが終わるとともに、ゆっくりと五体の異形がその身を起こしていた。
「成功したか!? これでノルマが達成できるぞ! ふはははははははははは・・・・・・」
ジフ様は、喜びの声を上げ、両手を振り回しながら私達の肩を砕きそうな勢いで叩かれていく。
笑い過ぎです。顎骨が外れそうに・・・・・・あっ、直した。
「さて、歴史を変える予定の栄光ある骸骨兵には、新しい名を与えなければなるまい・・・・・・ジフ・ジーン式骸骨兵? ジーン式骸骨兵? いや、待てよ。私の名前はもっとすごいのにつけるべきだな・・・・・・とりあえず蛇骨兵とでも名づけようか」
「ジャー」「シャー」「ジャジャ」「ジャジャジャジャーン」「チッチッ」
「そうか、そうか、嬉しいか。私も嬉しいぞ!」
ジフ様に直接名前をつけていただくとは、羨ましいぞ蛇骨兵。だが新たな仲間の誕生は、本当に喜ばしいことだ。
それによくよく考えれば、コメディを連れている私も蛇骨兵になるのではないだろうか? 私も蛇骨兵だとジフ様に伝えておいたほうが良いのでは・・・・・・
「蛇骨兵達よ最初の任務だ!森に行き戦力になりそう動物の死体を持ってこい。そこの熊一号も一緒に行け」
ジフ様は、蛇骨兵達と死体熊に命令を下された後、私達の方を向き続けられる。
「骸骨兵達も引き続き死体を捜して持ってこい。回収部隊の到着まで後二日しかないんだぞ!」
ジフ様、私は骸骨兵ではなく蛇骨兵になるのではないでしょうか?
後、熊一号とは死体熊ことでしょうか?
「後は、外回りに出している死体騎士と死体兵達がどれだけ人間を狩ってこれるかだな。いざとなれば死体獣で水増しすればなんとかなるか?せめて狼か猪なら回収部隊を言い包めることができるのだが」
あの~。ジフ様、私は蛇骨兵になるのでは・・・・・・
「ん? どうした蛇一号、大鉈さっさと行け。時間が無いんだ! 山犬でも良いからとにかく戦える死体を探してこい」
・・・・・・そう私は、大鉈である。ただの骸骨兵ではないのである!
「シャー」
おお。コメディ、おまえもそう思うか。よしよしいい子だ。
私は、大鉈を強く握り締め夜の森に向かうべく部屋を後にした。
上司に可愛がられる後輩。負けるな即席骸骨兵。