表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
骸骨の夢  作者: 読歩人
第六章 人類反撃編
82/223

勝利に向かって

圧倒的な敵に勝つ方法・・・・・・


中に入って壊す。もっと大きな力を持ってくる。相手の力を利用する。


いろいろあります。

 それはまだ遠くにありながらはっきりと確認できた。


 とにかく大きいのだ。その異様な外見さえなければ入道雲と思ったことだろう。


 水平に流れ星をばら撒く巨大な水晶と、その上に立つ高い壁と無数の塔の連なり――城がなければ。


 白銀の尖塔が瞬くと本当の入道雲のように雷が地に落ちる。


【綺麗】


「そうね~ん・・・・・・下にいるのが死に損ない(アンデッド)じゃなければね~ん」


 感動する私にアーネスト・エンド様が同意を・・・・・・示さなかった。それどころか下に仲間がいるとか言われる。

 私は空飛ぶ城の下に眼窩を向ける。瓦礫の山や街の壁が邪魔で確認できない。


「聖都と北聖都ノスセト(ここ)の間かっ! 十万、二十万じゃねえぞ! 早く逃げろって伝えねえとっ!」


「無駄じゃな~い? 雷はともかくモーゼスお爺ちゃんを薙ぎ払った銀の流星・・・・・・たぶん聖なる光(ホーリーレイ)の強化連射だと思うけど~ん。あれから逃げるのは無理よ?」


「・・・・・・爺もやられたかっ・・・・・・」


 御汚れ厚着のバトゥーリア様が激しく死に損ない(なかま)の心配をしたが、桃色道化師の軽く冷たい指摘に絶句している。

 仰ぎ見た空には、『解体ー!』と叫ぶ浮遊干物死霊魔術師(ネクロマンサー)の姿は無かった。


 ・・・・・・ジフ様・・・・・・昇進先ができました!


「ピョピョン!」「ワオ~ン!」「チュチュチュ~ン!」


 空を睨むバトゥーリア様を囲み死体獣踊子隊ゾンビビーストダンサーズが勇ましい踊りを踊っている。


 ジフ様の昇進を喜ぶ踊りだろうか?


「ありがとよ! チビども!」


 どうやら違うようだ。バトゥーリア様を励ましているらしい。


「よし! アーネスト! 行くぞ!」


 精気に溢れたその姿が勇ましい声とともに空に舞い上がる。


「ええ」


 珍しく真剣にアーネスト・エンド様が応じた。


「あいつらを一つ残らず叩き・・・・・・」

「さっさと逃げましょうね~ん」

「・・・・・・はあっ!?」


 気の抜けた声とともにバトゥーリア様が落ちてきた。濡れた布を叩きつける音が響く。


「汚いわね~ん。血が跳ねるじゃない。気合で飛ばないでちゃんと魔術使いなさいよ~ん」


 ・・・・・・死霊魔術師(ネクロマンサー)様って気合で飛べるんだ。


「・・・・・・」


「それよりアーネスト・エンド様・・・・・・逃げるとは?」


 血の海に墜落して沈黙するバトゥーリア様に代わり死霊魔術師(ネクロマンサー)デニム様が質問した。


「デニムちゃ~ん、性格は少し変わっているけどモーゼスのお爺ちゃんは強いわよ。魔術だけなら死霊王様に匹敵するわ。その魔術の達人がかなわない相手に勝てると思う? わたくしは思わないわ~ん」


 桃色道化師は、地にめり込むバトゥーリア様に眼窩を向け続ける。


「だいたいね~ん。バトゥちゃんだって『逃げろ』って言っていたでしょう? 何、熱くなっているの? わたくし達に体温なんて無いのに」


「・・・・・・は~」


 デニム様が溜め息をつき、


「・・・・・・かちっ」


 地面から這い出たバトゥーリア様が顎骨打ちをした。


「でもよ! 逃げるたってどうすんだっ! さっき逃げられないって言ってなかったか!?」


大聖堂(ここ)の転移陣で”絶望の岬”へ行くだけよ~ん」


「はっ!? 何言ってんだ!」


「だ・か・ら! 転移で”絶望の岬”に行けばいいのよって言ってるの~ん」


「『の~ん』じゃねえっ! 死に損ない(なかま)はどうすんだ! 今もバリバリやられてんだぞ!」


 雷で焼かれる骸骨兵(スケルトン)死体兵(ゾンビ)の群が水晶玉に映っている。まさに地獄絵図である。


死に損ない(アンデッド)を助けられないのは悲しいけど。他に手は無いわ。死霊軍団の()が生かせないこの状況じゃ、どうしようもないのよ」


「・・・・・・しかたねえってのか!」


「・・・・・・」


 アーネスト・エンド様の撤退意見に私を除く全員が納得しているようだ。しかし私は反対する。ここで逃げるわけにはいかないからだ。


【逃げるの反対!】


「・・・・・・戦う(やる)気なのかよ! 血塗れ骸骨騎士(てめえ)いい根性だな!」


「ジーンの奴はどうする気だ! 考え直せ!」


「・・・・・・わたしくにはなんとなく理由が分かるけど・・・・・・一応聞いてあげるわ~ん」


 三者三様の言葉に私は続ける。


【ジフ様の出世が!】


「主想いはいいけどよ! 血塗れ骸骨騎士(てめえ)、頭蓋骨の中身無いだろう!」


「・・・・・・そうだな・・・・・・おまえはそういう骸骨兵(スケルトン)だったな・・・・・・」


「予想どおりね! 大丈夫よ~ん! 死霊王様に進言すれば出世はできるわん。幽霊船免状もあるから謁見も問題なし」


 ・・・・・・ふむ?


【逃げましょう】


 私は柔軟に意見を翻すと大聖堂の奥――転移陣のある部屋へ歩き出した。もちろんジフ様も一緒である。


「さあさあ! 二人とも急いでよ! 神聖騎士団が突っ込んできたら面倒だしね~ん」


「・・・・・・今、攻撃受けてんのに何でこんなに暢気なんだこいつら・・・・・」


「・・・・・・分かりません」


 背後では死霊魔術師(ネクロマンサー)様達が喋り、人間達の反撃の狼煙が虚しく昇っていた。

逃げるが勝ち。


相手にしないという手段もあります。


目的を忘れないことがポイントです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ