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骸骨の夢  作者: 読歩人
第六章 人類反撃編
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天の使いを迎え撃て!

頑張って空飛ぶ敵を倒しましょう。

 死霊軍団幹部と空飛ぶ燃える車輪の戦いが今まさに始まろうというとき。


【ジフ様の昇進が】


骸骨兵(スケルトン)、おまえ余裕だな!」


 悲観にくれる私は、死霊魔術師(ネクロマンサー)デニム様に突っ込まれていた。だが敵との戦いよりジフ様の出世が後回しにされた事実が私を悩ますのだ。


「・・・・・・」


 棺の中のジフ様も元気が無い。


「ほら! ほら! そんなに落ち込まないで!」


 大聖堂から出てきた道化師――アーネスト・エンド様が私を励まそうする。


「幹部達の様子を確認しましょう? ・・・・・・誰かが倒されれば空席が・・・・・・ジフ様の昇進先が確保されるし!」


 ・・・・・・なるほど!


 アーネスト・エンド様の心強い御言葉に思わず頷いた。昇進先が確保されればジフ様の出世が早くなることを私は理解したのだ。


「アーーーネスト!!! 味方の不幸を願うな!!!」


「アーネスト様、それはいくらなんでも・・・・・・」


 この場にいる他の御二人――バトゥーリア様とデニム様には不評のようだった。


【なぜ?】


『なぜじゃない!』


 私の疑問には、一字一句見事に調和した二つの声が返された。御二人共、何か被っている。それどころか顔を見合わせて『分かってくれるか! いい奴だな!』『はい』とか言っている。友情でも芽生えたようだ。


「ん~~~ん? あら! 予想外!?」


 隣ではその感動の場面を無視して水晶玉を眺めていたアーネスト・エンド様が驚嘆していた。予想外と言っているにしては余裕のある態度である。


「どうした! 見せろ!」「私も!」【・・・・・・】


 私も含めて全員が水晶玉を覗き込む。

 そこには、燃え盛る車輪を呑み込む青い塊が映っていた。空高くの戦いを遠視しているのだろう、青い空を背景にして幽霊の集合体が炎ごと敵を包み込んでいる。一見、喪服の死霊魔術師(ネクロマンサー)カリン様が優勢に思える。


「昼間なのによくやるな・・・・・・母は強しってか!」


「これなら・・・・・・」


「何言ってんのよ? 焼かれてるわよ幽霊(・・)が」


 安堵する二つの声に冷たい指摘が突き刺さった。そう青い粘塊――幽霊達の量が減っているのだ。車輪の表面に焔が(はし)るとその部分に接触していた幽霊が消えていっている。


「・・・・・・あのでかさで浄化の結界付きかよ! だから援軍を・・・・・・」


 汚れた厚着骸骨の言葉は途中で止まった・・・・・・土砂降りの雨に中断させられたのだ。


 その雨の色は赤・・・・・・血と肉の雨である。


 水晶玉に注意を向けていた私達は気づかなかった。屍の巨人が大聖堂を守るように立っていたことも、その巨人が空飛ぶ車輪の攻撃により削り倒されたことにも。


 赤き雨は勢いを増し肉の雪崩(なだれ)となって大聖堂にいた私達に迫る。私はせめてジフ様だけでも守ろうと棺に覆い被さった。


「フロストッ! 何やられてんだ!」


 硬直する私達の中でもう一人――バトゥーリア様が反応し腕を振り上げ、


「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉるゃ!!!」


 叫びとともに床にこぶしを叩きつけた。


 するとそこを中心に青い光が立ち上がり壁のように私達を包む。血肉の奔流は、壁に当たると左右に分かれ大聖堂の中を蹂躙していった。

 青い壁越しに見る紫の流れは徐々に治まり周囲は血肉の海になる。大聖堂内にあった長椅子や祭壇は壁際に流されグチャグチャである。私は抱きしめる棺を確認する。


 よし! ジフ様も無事だ。それに・・・・・・


【バトゥーリア様、ありがとうございます】


 私は地に伏しジフ様の恩人に感謝の意思を伝えた。バトゥーリア様の壁が無ければジフ様がまた粉々になっていたかもしれないのだ。いくら感謝しても足りない。派手な服装と乱暴な口調とは違い善骨である。


「礼はいい! アーネスト! 首席と干物爺はどうだ!」


「ちょっとまって~ん・・・・・・首席様は街の南に移動中、モーゼスのお爺ちゃんは、天使達相手に乱戦よん! 巨大化、分身、召喚・・・・・・ほんと何でもありねあのお爺ちゃん」


 水晶玉を見るとアーネスト様の言うとおり燃え盛る車輪達を囲むように浮遊干物死霊魔術師(ネクロマンサー)モーゼス様が何人もいた。大きさも屍巨人ぐらいはあるだろう。周囲を飛ぶ小鳥達は・・・・・・よく見ると飛竜(ワイバーン)である。飛竜(あれ)って馬車より大きかったような。


「あっ!」


 同じように水晶玉を覗き込んでいたデニム様が声を上げる。理由は私にも分かる・・・・・・水晶玉を銀色の光が満たしたからだ。


「何が!?」


「浄化の光かしら? 外で直接見ましょ」


 私達は血塗れの大聖堂から外に出て空を見上げる。

 そこには全天を満たすほどの流れ星が燃える車輪の来た方角――南から北へと飛んでいた。その光景に私は呆然と顎骨を開け見蕩れる。


「はっ! 冗談きついぜ!」


「・・・・・・デービルちゃんの報告、マジだったのね~ん」


「天使の次は城か!」


 私以外の三人は、南の空を見て叫んだ。私もそちらを向く。

 視界に映ったのは、街の上空を飛ぶ燃える車輪達とそれが可愛く見える巨大な空飛ぶ城だった。

竹槍(大鉈)じゃ無理です。


戦闘機(死霊魔術師)に任しました。


独立記念日が登場です。

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