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骸骨の夢  作者: 読歩人
第五章 死霊軍団編
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魂の激励

心が挫けそうなとき周囲からの応援は力になります。

「・・・・・・」


 私は、虚ろな眼窩で佇むジフ様を見つめた。


「精気を抑えろ!」


「わたくしに心当たりが何人かいるから先にそれを・・・・・・」


 死霊魔術師(ネクロマンサー)デニム様とアーネスト・エンド様が呼びかけてくるが無視した。

 私はただ想う・・・・・・覚醒してから勇者に挑むまでの全てのジフ様を。


 『私を守れ!』・・・・・・命令をするジフ様。


 『人間共め!』・・・・・・罵るジフ様。


 『これでノルマが達成できるぞ!』・・・・・・喜ぶジフ様!


 『一に出世! 二に出世! 三四も出世! 五も出世だ!』・・・・・・元気なジフ様!!


 『その首もらったーーー!!! 私の出世はこんなところでは終わりはしないのだーーー!!!』・・・・・・歓喜狂乱するジフ様!!!


 私の中の全てのジフ様を想い・・・・・・叫ぶ。


【出世っです!!! ジフ様!!!】


 鼓舞するために!


【出世です!!! ジフ様!!! 出世です!!!】


 両手を掲げ叫ぶ。激励するために!!


【出世です! 出世です!! 出世です!!! ・・・・・・】


 怪しく踊る。力づけるために!!!


「・・・・・・なっなにを?」


「・・・・・・・出世?」


 叫び踊る私にデニム様が呆然としアーネスト・エンド様が頭蓋骨を傾げる。

 そして・・・・・・


「・・・・・・せっ」


 最後の一人が――偉大なる主の顎骨が微かに動いた。私はひたすらに叫び踊り続ける。ジフ様が歓喜狂乱したあの時を思い出すことを願って。

 私の応援に反応したジフ様を見て御二人が疲れたように声を漏らす。


「デニムちゃ~ん、もしかしてジフ様って案外・・・・・・俗物?」


「・・・・・・向上心の強い奴ではありました」


【出世っ! 出世っ! 出世っ! 出世っ! 出世っ! 出世っ!】

「チュウチュ! チュウチュ! チュウチュ! チュウチュ! チュウチュ! チュウチュ!」

「ピョンピョ! ピョンピョ! ピョンピョ! ピョンピョ! ピョンピョ! ピョンピョ!」

「コンコ! コンコ! コンコ! コンコ! コンコ! コンコ!」


「・・・・・・っせっ」


 同胞(なかま)達も一緒に踊り励まし始めた・・・・・・ジフ様! 皆が待っています。


【ジフ様!!! 皆待ってる!!!】


 私の叫びに!


「・・・・・・」


 ジフ様の反応がなくなった・・・・・・はて?


「わたくしの神様・・・・・・ちょーぞ・く・ぶ・つ?」


「いえそこまでは・・・・・・多少上昇志向があるだけで」


 御二人が疲れきった・・・・・・呆れきった声で話していた。

 それよりなぜ動かなくなったのであろうか? 同胞(なかま)達との応援で確かに元気が出ていたように見えたのだが。


「えっとね~! ちょっと代わってね」


 頭蓋骨を傾ける私を桃色道化師――アーネスト・エンド様が押しのけた。

 もう一度応援をしようと思っていたのになんなのだ。


「あ~あっと、ジフ様459席に昇進ですよ」


「・・・・・・しゅっーーー・・・・・・せっーーー」


 今! 確かに喋られた!


 アーネスト・エンド様の控えめな声にジフ様が長く息を吐くような調子で応えられたのだ。

 ・・・・・・私と同胞の応援より反応が大きいのはなぜだ。


「よし! 私も! ジーン喜べ! ・・・・・・第十席に昇進だぞ! 凄いな!」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 返事はないただの骸骨のようだ。


「あれ?」


 長身の魔術師が自分の呼びかけとそれに対するジフ様の無反応に疑問の声を上げた。


 ジフ様、いつの間にそんなに出世されてたのですか。


 私はジフ様の偉大さに改めて驚いていた。


「・・・・・・嘘は駄目ってことね・・・・・・無意識に虚実言霊(ライワード)でも使ってるのかしら~ん?」


 ・・・・・・デニム様、嘘は駄目ですよ。嘘つきは泥棒の始まりです。


「ジーンの奴、いつの間にそんな高等魔術を・・・・・・」


 私が非難の視線を向けてもデニム様は他の事に驚かれているようで気づかれなかった。


「・・・・・・よし! 首席様に言ってジフ様を昇進させましょう! 水晶玉! 水晶玉!」


「アーネスト・エンド様! 流石にそれは!」


「だいじょーぶよ! 首席様もあの子達にメロメロだから二つ返事で了解するわ・・・・・・断ったら狩る!」


 そう言いながらアーネスト・エンド様は、桃色道化服の袖口から水晶玉を取り出し軽く撫でた。遠話というやつで首席様と話されるのだろう。


「首席様! 首席様! 聞こえる~? ・・・・・・おかしいわね? 繋がらない。傷でもつけちゃったかしら?」


 水晶玉が壊れているようだ。壊れやすいものなのだろう。 


「それでしたら私の水晶玉を・・・・・・アーネスト様!」


 デニム様が自分の水晶玉を使おうとして急に鋭い声を上げる。その声は驚きと警戒を含む緊迫した気配を漂わせていた。

 どうしたのかと思い、私は水晶玉を覗き込む。


【お城?】


 覗き込んだ水晶玉には、立派なお城と・・・・・・人間が映っていた。

現実的な報酬も大きな力になります。

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