表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
骸骨の夢  作者: 読歩人
第五章 死霊軍団編
75/223

治療開始

治療中、付き添いの方は静かに待ちましょう。

 クチャクチャ・・・・・・


 今、私は壁を向いて座り骨素(ホネノモト)を噛んでいる。


「これで両腕はいいわね!」


「はい。次は両足を」


 背後では桃色道化師アーネスト・エンド様と死霊魔術師(ネクロマンサー)デニム様がジフ様の治療をしている。私の口の中にあるのと同じ骨素(ホネノモト)で折れた骨を接合しているのだ。


「ここまで粉々だと中々厄介ね~ん」


「私もです。もう少し楽だと思ってました」


 ジフ様の治療は時間が掛かりそうだ。本来であれば私も手伝いたい。アーネスト様が始めた骨の接合は、木工細工のようにも見え私にもできそうだったのだ。


「小さな骨は割れてないから・・・・・・」


「頚椎から尾椎を揃えましょう」


 しかし私が手伝おうとすると御二人から『ダ~メ!』『止めろ!』と制止された。

 別に手の指を十本にしてしまったとか、腕と脚を間違ったとか失敗をした訳では無い。


「ところで~? 血塗れ骸骨騎士(あのこ)ってもしかしておバカ?」


「・・・・・・思慮が足りないとは感じます」


 ジフ様の骨に触ることなく『その左手よ!』『これ以上壊す気か!』と言われ部屋の隅に追いやられたのだ・・・・・・今だけは、この竜骨毒手がとても憎い。


「戦力としてはかなりのものなんだけどね~」


「そうなのですか? 確かにあの左腕と右腕は強そうですが・・・・・・」


 しかし、『これあげるから大人しくしてなさい』と渡されたこの骨素(ホネノモト)・・・・・・噛んでると満腹感・・・・・・いや、満足感が出てくる。磨り潰した芋のような見た目だが、コシ(・・)があり噛み切れないのがまたいい。


「それだけじゃなくて・・・・・・これよ!」


「幽霊船免状ですか? 失礼します・・・・・・骸骨兵(あれ)のですか!?」


 む! 死体獣踊子隊ゾンビビーストダンサーズが物欲しそうにこちらを見ている。骨素(これ)が欲しいのか? ・・・・・・そんな濁った目で見ても・・・・・・尻尾を振ったところで・・・・・・半分だけだぞ。


「そうよ。しかも書いたのはキャプテン・ガデムなのよ」


「聞いたことはあります。地獄のフルコースがどうとか」


 ・・・・・・結局全部渡してしまった。喜んでいるからまあいい・・・・・・コメディがいたら半分こにして・・・・・・コメディ・・・・・・ジフ様がもうすぐ治るぞ。喜んでくれるよな。


「人間相手の戦闘なら骸骨騎士(スケルトンナイト)より強いはずよ」


「それにあの両腕と忠誠心・・・・・・」


 死体獣踊子隊ゾンビビーストダンサーズが踊り始めた。アーネスト様の猫、鼠、狸も混じっている・・・・・・あの三匹・・・・・・先ほどと動きが違う!


「はいっ! これで胸骨と肋骨だけね・・・・・・たぶん勇者や神官以外には負けないわよ」


「そこまでの力が!?」


 まっまさか!!! この短時間で覚えたというのか! 教え方が上手いのか学んだほうが優秀なのか・・・・・・またはその両方か?


「あの左腕・・・・・・魔術を切り裂いて鉄鎚を受け止めたでしょ~? 体の強度が高ければ戦士と魔女も殺せてたかも」


「・・・・・・ジーンの奴・・・・・・とんでもないのを創造したな」


 死体獣踊子隊ゾンビビーストダンサーズも新たな踊りに開眼したようだ。滑らかさの中に芯が感じられる。それが踊り全体にメリハリを生み更なる進化を遂げている・・・・・・この踊り私にもできるのではないだろうか?


「流石ジフ様ね! ・・・・・・先に別々に分けたほうがいいわね。曲がり方で分けるのよ!」


「はい・・・・・・もうすぐだぞジーン」


 ターン! スピン! ポーズ! ・・・・・・違う・・・・・・勢いが足りないのだろうか? ターン!! スピン!! ポーズ!! ターン!!! あっ!


「あらっと!?」


「えっ! ギェベブ!?」


 勢いよく回転したら右手が伸びてデニム様に当たってしまった。幸いにもジフ様には当らなかったようだ。デニム様が頭蓋骨を押さえながら起き上がる。


【デニム様、大丈夫で・・・・・・】


「出てけーーーーーーーーー!!!」


 部屋から追い出された。




~~~~~~~~~


 朝日が昇り始めた。窓から差し込む光が廊下を照らす。

 私は治療室の扉の前でジフ様が起きるのを今か今かと待っている。


 デニム様・・・・・・何も追い出さなくてもいいのに・・・・・・


 追い出された当初は扉を叩き喚いたのだが、アーネスト・エンド様に『静かにするのと永眠(ねる)のどっちがい~い?』と言われたので大人しくすることにしたのだ。


 クチャクチャ・・・・・・


 再び渡された骨素(ホネノモト)を噛みながら朝日に眼窩を向ける。

 

 ジフ様~朝ですよ~!


 心の中でジフ様に朝の挨拶をしているとデニム様の声が響いた。


骸骨兵(スケルトン)、入っていいぞ!」


【ジフ様ーーーーーーーーー!!!】


 バダンッ!!!


 吹き飛ばす勢いで開けた扉の向こう、懐かしき主の姿が・・・・・・

でないと放り出されます。


・・・・・・マジですよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ