森の仲間達
森の中で仲間探しです。
私は森の中を踊るように進む。木々の間から降り注ぐ日の光がとても心地よい。
ジフ様に褒められた!
歓喜に全身の骨と肋骨内の骸骨蛇を震わせながらも、私の冴え渡る頭蓋骨の空洞は、冷静に死体を探す方法を考える。
ジフ様に褒められた! ジフ様に褒められた!!
再びジフ様に褒められるために。
ジフ様に褒められた! ジフ様に褒められた!!! ジフ様に褒められた!!!
・・・・・・冷静になれ。冷静になれ。ジフ様、私はやりました!!!
「シャー」
ん?
いつの間にか肋骨から這い出してきた骸骨蛇が、鎌首をもたげ私の頭蓋骨を覗き込んでいる。若干肉の残っている蛇の頭蓋骨は、至近距離で見るとなかなかに恐ろしい。
いや、ジフ様にいただいたこの骸骨蛇だ大切に可愛がらなければ。それに昔からペットを飼いたいと思っていたのだ。貧しくてとてもじゃないが無理だった。むしろ食っていたし・・・
「シャー!」
再び骸骨蛇が私の頭蓋骨を覗き込んでくる。
大丈夫だ! 食べないから眼窩に頭を突っ込むな!
骸骨蛇を頭蓋骨から引き抜いた私は、ペットの可愛がりかたを考える。
そうまずは、名前だ。名前をつけてあげよう。マックス、バディ、ジェイク、ロッキー、ベイリー、バスター、コメディ・・・うむ。コメディ、コメディにしよう。
「シャー! ジャー!! ジャジャー!!!」
骸骨蛇、いやコメディも喜んでいるのか。首の骨に巻きつきながら、頭蓋骨に噛みつきじゃれてくる。首の骨が折れそうなので、落ち着くように撫でてやる。
そんなに喜んでくれて嬉しいぞコメディ! 蛇一号にしようか迷ったが、コメディにして良かった。
「ジャ!?」
ん?
コメディが急にじゃれつくのをやめた。
どうしたのだろう?
コメディはしばしのあいだ動きのを止め、その後静かに肋骨の中に戻っていった。
私は、コメディの行動に頭蓋骨を回転させかけたが、疲れたのだろうと思い死体探しを再開した。
~~~~~~~~~
何も見つからない。
冴え渡る頭蓋骨の空洞は、コメディのように動物を殺して死体を手に入れるという画期的な方法を考えついていた。しかし昨日と同じで死体も動物も見つけられない。
時々コメディが、木の洞に隠れた栗鼠などを見つけ捕まえるぐらいだ。持って行けば死体栗鼠が増えるだろうが、ジフ様に怒られそうなのでやめておいた。
せめて日が落ちれば、動物の精気を感じることで見つけやすくなるのだが。日が落ちるまで待つことができない私は、なんとか死体を手に入れようと深く森の中に踏み込んでいく。
森の中少し斜面になったところで私は、それを見つけた。”骸骨洞窟”ほどではないが、人が入れそうな大きさの穴である。
”骸骨洞窟”と異なり土が剥き出しであり地面には、頻繁に動物が出入りしているのか大きな足で掘り返された跡があった。
狼だろうか? 猪だろうか? 穴にすむ動物って何がいただろうか?
私は、期待に肋骨を鳴らしながら。微塵の躊躇も無く穴の奥を確かめようと歩みを進める。さほど進むことも無く奥のほうに赤い光が見えた。
生物発見!さてさてどんなやつだろうか?
近づくにつれて徐々に大きくはっきりするその生物は正体は・・・・・・
四つん這いで。私より大きく。太い前足と愛らしくも大きい口を開けた・・・・・・熊さん?
私は、迅速に死んだふりと逃走から逃走を選ぶと全速力で走り始めた。四肢を地面につけた状態で私より大きいってなんですか?
穴から出たところで、背後を確認すると熊さんは全速力で追いかけてくる。
私はうまく無いぞ! 骨だけだぞ!?
冷静かつ紳士的に話し合いを提案したが、熊はけだもののごとく私に襲い掛かってきた。体当たりを受けあっさり押し倒される。
大鉈を振ろうにも前足で押さえ込まれており、腕が動かせない。恐怖に顎を鳴らしていると熊が口を大きく開けて私の頭蓋骨をくわえ込んだ。
いだい! いだい! 割れる割れる頭蓋骨が割れる。首が首が!?
くわえ込まれた頭蓋骨が、鈍い音を鳴らしつつ変形していくのが分かる。
「ジャ」
骨が潰れる音に混じり、コメディの声が聞こえた。次の瞬間私は、頭蓋骨の無い人骨を押し倒す熊とその熊ののどに噛みつく骸骨蛇を見下ろしていた。
あれはコメディ?
一瞬の疑問に答えを見つける間もなく、私の視界は急速に地面に近づき地に落ちた。視界の先では、腕を振り回し苦しんでる熊と胸からコメディを伸ばした頭無しの骸骨兵が立っている。
あの骸骨兵は、私の体?
状況を理解しようとしている間に、熊は口から泡を吹きつつ倒れてしまった。骸骨兵はぎこちない動きながら熊に近づき、その胸からコメディが再度噛みつきを繰り返す。熊はしばらくの間、四肢を動かしていたが徐々に動きは小さくなり、最後にはまったく動かなくなった。
もしかしてコメディは、毒蛇なのだろうか? そして私は頭蓋骨を引っこ抜かれた? それよりあの熊どうやって運ぼう?
さまざまな疑問と難問が私の歪んだ頭蓋骨に駆け巡っていた。
森の仲間第二号の熊さんでした。