表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
骸骨の夢  作者: 読歩人
第五章 死霊軍団編
69/223

本題は遠く

会議を短くする方法はなんでしょう。


時間を決める、参加者を絞るなどがあります。

「この子達は、私の特殊部隊とする」


「・・・・・・賛成」


「それでいいから早く聖都攻略作戦の話し合いを」


「そして普段は、忙しい首席様に代わってわたくしが面倒を見る。目指すは世界よ!」


「それをクロノちゃんが見て楽しむ。ね~クロノちゃん」


 やっと幹部達の結論が出た。死体獣踊子隊ゾンビビーストダンサーズのデビューが決まったのだ。私は右手に持ったジフ様にも報告する。


 ジフ様・・・・・・ジフ様の子が行きます。


「悪夢が終わった・・・・・・今までのは夢だったんだ・・・・・・そう夢だ」


 隣では死霊魔術師(ネクロマンサー)デニム様が起き上がる。会議が退屈だったのか途中から寝られてたのだ。『職場を変えたい』『ユウ殿はどこだ? 奴らを』とかうなされていた。


「それでは次の議題だ。この子達の名前を・・・・・・」


「待て! 今度こそ待て!! 幹部が集まって話す内容じゃない!!!」


 再び首席様の話を遮り、厚着死霊魔術師(ネクロマンサー)バトゥーリア様が意見する。今回はちゃんと手を上げている。


「バトゥーリアなんだ?」


「頼むから重要な議題を先にしてくれ」


「・・・・・・分かった。それでは粛清した死霊魔術師(ネクロマンサー)達の後任について」


「今回は、席次順に昇進させて繰り上げればいいんじゃない? 真面目な死霊魔術師(ネクロマンサー)が得をするし、やる気を出すわ」


「・・・・・・賛成」


「いいんじゃないかしら? ね~クロノちゃん」


「外見と口調は、変人になったが中身はまともだな。俺もそれに賛成だ」


 桃色道化師の意見に白い紳士、喪服の女、厚着の骸骨・・・・・・三人の幹部が同意を示す。


「分かった。各死霊魔術師(ネクロマンサー)には昇進を連絡する・・・・・・また忙しくなるな・・・・・・次の議題は、勇者の件だ。第248席デニム報告を」


 首席殿――黒い蛞蝓(なめくじ)人間――がこちらを向きながら言う。一度は治まった嫌悪感が再び背骨に走る。


「はっ! 勇者に襲撃された”骸骨洞窟”は、骸骨兵(スケルトン)一体及び死体獣(ゾンビビースト)一箱を残して全滅。勇者は既に撤退しておりました。戦闘の詳細は、こちらの骸骨兵(スケルトン)から御確認ください・・・・・・骸骨兵(スケルトン)、戦闘の情景を思い浮かべて精気で伝えろ」


 長身の死霊魔術師(ネクロマンサー)が報告してから私にあの時のことを伝えるように指示する。


 私は蛞蝓(なめくじ)への嫌悪感を押さえ込みながらジフ様の勇姿を思い浮かべていく。


 勇者に不意討ちの死の呪文(デススペル)を打ち込むジフ様。


 勇者達を罠に掛けるジフ様。


 勇者達に多勢で掛かるよう命令されるジフ様。


 聖女に庇われて動揺する勇者に襲い掛かるジフ様。


 ジフ様を中心にした戦いが私の中で再現される。最後に二つに斬られたジフ様の頭蓋骨が浮かんだ。


【ジーフーーさーーーまーーーー!!!】


 私の悲しみに呼応して青い光が周囲を照らした。その光は波に変化して部屋の中にいる全ての者に私の思いを伝える。


蛞蝓(なめくじ)?」


「・・・・・・聖女殺害?」


「待て! 死霊魔術師(ネクロマンサー)が素手で殴りかかるな!!」


「この方が骸骨兵(スケルトン)さんの創造主なの? クロノちゃんはどう思う?」


「あぁぁぁぁぁ!? ジフ様・・・・・・直接御会いする前にこんな事になるなんて・・・・・・あの時拉致していれば」


「おっ落ち着け! もう十分伝わった!」


 幹部達の声と隣からの制止に私の感情が落ち着いていく。虚脱していく体の中で唯一ジフ様の棺を持つ右腕だけが強張り震えている。


「御苦労、質問がある。私のどこが蛞蝓(なめくじ)・・・・・・」


「待て! 今度も待て!! 聞くなら聖女に刺さった毒手の性能だろ!? ついでにおまえの見た目は蛞蝓(なめくじ)(ヒル)だ!」


 三度首席様の話を遮り、厚着死霊魔術師(ネクロマンサー)様が意見する。今回もちゃんと手を上げている。


蛞蝓(なめくじ)(ヒル)・・・・・・」


 首席様が呟き椅子から崩れ落ちた。自分の外見にやっと気がついたのだろうか。


「・・・・・・同意」


 白い紳士死霊魔術師(ネクロマンサー)フロスト様が止めを刺している。


骸骨兵(スケルトン)さん頑張るのよ」


「ジフ様! あんなに素晴らしい子達を創造するあなたに、せめて一目だけでも御会いしたかった! 本当に惜しい方を亡くしたわ」


 他の幹部の方々は私に御優しい言葉を掛けてくださった。ありがとうございます、死霊魔術師(ネクロマンサー)カリン様と桃色道化服の方・・・・・・確かアーネストだったけ? どこかで聞いたような・・・・


 私や幹部達を気にせず死体獣踊子隊ゾンビビーストダンサーズはただただ踊る。


「勇者の話はしないのか・・・・・・」


 長身の魔術師の悲痛な声が聞こえた。

利害が絡む場合は妥協するのも手です。


・・・・・・本当に大事なことはとことんまで話し合いましょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ