旧友
友人との再会は嬉しいものです。
私がジフ様の明かされた真実に悩んでいると死霊騎士ユウ様が重い口調で言葉を紡ぐ。
「・・・・・・デニム殿、私は個人的に親しい死霊魔術師は首席殿しかいないのだが、こんな死霊魔術師は多いのか?」
「ユウ殿、こんながどちらの意味かは分かりませんが、仲間を陥れて成果を奪う者も頭蓋骨の中身が足りない者も滅多に――」
死霊魔術師デニム様の反論に目出し帽死霊魔術師の声が割り込む。
「抜け駆けして出世する奴は仲間じゃないのさ! それにジフの自慢話を聞いてこちらに向かっている同志は百を超えるよ!」
「――少数です。そう! 数千人中たった百人という少数です!!」
「・・・・・・分かった! 分かったから! デニム殿、そんな悲しそうに頭蓋骨を抱え込まなくていい。聞いた私が悪かった!」
頭を抱える長身の魔術師を騎士が慰めている。それどころか周囲で聞いていた骸骨騎士達も近寄っていき肩を叩いたり背中をさすっている。
私はそのほほえましい光景に思わず胸が痛くなる。ありし日の”骸骨洞窟”が思い出されたのだ。
ジフ様に創造していただいてすぐに全身鎧の騎士を殺したこと、蛇と兎を取り合ったこと、ああ・・・・・・何もかもが懐かしい。
そのとき慰められていた可哀想な骨が喋りだす。
「ありがとうございます。すいません急に悲しくなりまして・・・・・・水晶玉に遠話がありました・・・・・・近くにいた死霊魔術師が援軍としてきてくれるそうです」
死霊魔術師デニム様が若干嬉しそうな声で続ける。
「援軍としてくるのは私の友人です。ジーンの奴とも友人だった死霊魔術師で、名前をスレダー・ブルトゥスといいます。真面目で仕事熱心ないい奴ですよ」
その言葉に死霊騎士ユウ様をはじめ骸骨騎士も明るくなる。どちらかというと援軍の報より元気になったことを喜んでいるように見える。
はて? スレダーってどこかで聞いたことがあるような?
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「見えました! あれが援軍です」
死霊魔術師デニム様が嬉しそうに平原を近づいてくる死に損ないの集団を指差した。
日が落ち全天に星が瞬く中、松明を掲げて数十・・・・・・いや百を超える死体兵や骸骨兵が一糸乱れぬ隊列で行進している。
先頭を歩く骸骨は、杖を持ちながら魔術師の外套ではなく軍服を着ていた。その骸骨が私達の前まできて歩みを止めると全ての死に損ないが同時に動きを止めた。
「私は死霊魔術師第1234席スレダー・ブルトゥス申します。死霊騎士ユウ・バジーナ様とともに”骸骨洞窟”の最重要救助者を”死体墓地”まで護衛するように命令を受けました!」
「よくきてくれたスレダー・ブルトゥス殿。私がユウ・バジーナだ。宜しく頼む」
「久しぶりだなブルトゥス! おまえがきてくれて嬉しいぞ!」
死霊魔術師ブルトゥス様が挨拶をし、それに御二人が返される。
「御久しぶりですデニム様・・・・・・ジーンのことは残念でした。彼が残した骸骨兵は必ず守ります・・・・・・周囲警戒態勢」
死霊魔術師ブルトゥス様の命令に彼が率いてきた死に損ないが私達の周囲を囲むように広がっていく。
「よろしく頼むぞブルトゥス! それと骸骨兵は最重要救助者じゃない。確かにジフが創造したし勇者と戦い生き残った強者だが、最重要救助者は別にいるんだ」
長身の魔術師の言葉に死霊魔術師ブルトゥス様は私をいや、私の背中を見ながら確認するように話す。
「そうだったのですか。ではその棺の中に最重要救助者がいるのですね」
私はその声に死者にはありえない欲望を感じた。
飢えだ。
相手も同じならいいのですが。