後の祭り
事前に目的を決めておきましょう。
「死霊騎士ユウ・バジーナ参る!」
「死霊魔術師第248席ジョウ・デニムだ。我が友への暴言を後悔しろ」
二人は、私の左右を走り抜け百を超える敵に突っ込む。
「はっ!」
気合と共に振るわれる刃は、一度に数体の骸骨兵を切り散らし、
「爆散呪文」
力ある言葉と共に放たれる魔術は、纏めて十を超える骸骨兵を骨片に変えていく。
・・・・・・私の出番が無い。それと自分と同じ骸骨が、一瞬で粉々になるのはなんとも複雑な気分である。
百を数える間もなく森から現れた赤い骨は地に帰った。一瞬で敵を駆逐した御二人は、周囲を警戒しつつ森の中へ、ジフ様を馬鹿にした奴を目指し進む。
「おっおまえら! よくも!」
木々の葉が鳴り人影が出てきた。その姿は、魔術師の外套を着けた中骨中背の骸骨。
・・・・・・ジフ様!? いや、違う!
紛らわしいほどジフ様に似た外見の死霊魔術師は、ある一点だけジフ様と異なっていた。
すごく真っ赤です、ジフ様。
なぜかジフ様に報告しながらまじまじとその姿を見てしまう。頭蓋骨に両腕、両足全てが鮮やかな赤色である。
「よっよくも! よくも!! わたしの紅蓮の炎騎士団を!!!」
喚く赤い骸骨は、思わぬ効果をもたらした。呆然とその姿を見るのは私だけでなく、他にも二人いたのだ。
「赤い死霊魔術師?」
「まさか自分まで塗ったのか!?」
二人とも顎骨を外さんばかりに開けて呆れられている。
「よっよくも! 骸骨兵! ジフが! おまえが! 死ね! 死んでしまえ!・・・・・・喰らえ! 死の呪文」
私達が精神的に凍っている間に喚くだけ喚くといきなり魔術を放ってきた。放たれた魔術は、青い陰の精気の弾。頼りない軌道で風に流されるように私まで飛んできて当たる。
ん? 少し肩甲骨が軽くなったような。
「はっはは! どうだ参ったか! ・・・・・・なっなぜ死なないんだ!?」
え~と? 御二人はまだ呆然とされているし私が倒してもいいんだよな。
私は、冷静に状況を判断し再度右腕を限界まで伸ばす・・・・・・今度は頭上に向かって。木々の頂に届こうかというほどの高みから大鉈を振り下ろす。
「待て! 殺すな!」「ジーンを狙った訳をっ」
へ?
「ギャエ」
静止の声に驚きつつも大鉈が狙いを外さず赤い頭蓋骨を砕いた。背中のジフ様に御報告する。
ジフ様! 同胞と共に見事に敵を倒しました!
私は、崩れ落ちる死霊魔術師から眼窩を逸らし御二人に頭蓋骨を向ける。御二人とも顔を押さえたり、天を仰がれたりしている。
「しまったな」
「まだ意識があるかもしれません。尋問しましょう」
死霊魔術士デニム様の言葉に死霊騎士ユウ様が倒れた死霊魔術師に歩み寄る。御二人は、三割ほど砕けた赤い頭蓋骨に問う。
「何故、ジフ殿を襲おうとした?」
「ぎゃ助けて、あすけて」
「何故、ジフ殿を襲おうとした!」
「しゅ出世、あんな馬鹿、ゆっ許せないっ」
「・・・・・・ジフ殿の出世を妬んだのだな、愚かな」
「もう一つ答えろ。ジーンの秘密とはなんだ? なぜ棺を狙った?」
「しゅ出世! ありえない! ひっっひっっみっ」
それを最後に赤い頭蓋骨は、全ての動きを止めた。
「・・・・・・ジフ殿の秘密、知っていますか?」
「ジーンの出世はアレが理由のはずです。・・・・・・骸骨兵よ、他に何かあるのか?」
御二人は同時に頭蓋骨を私に向けた。
仲間にも伝えておきましょう。