再起
蛙の子は蛙。
『ジフ殿が蘇る』
その言葉が骨に響くと同時に私は跳びあがった。・・・・・・死霊騎士ユウ様に向かって。
「なっ!」
「顎骨で!?」
死霊騎士ユウ様と長身の骸骨がありえないものを見たような声を上げた。私は跳躍をそのままに兜と鎧の狭間に噛り付く。
「グゥェ!? なっ、何をする骸骨兵」
「今の跳躍は顎骨の力だけなのか? それとも精気の放出で跳躍を?」
「デニム殿っ! 冷静に考えるより助けっ! ギュエ」
【死霊騎士ユウ様。その話、ゆっくりと全て一つ漏らさず御聞かせ願えますか?】
死霊騎士ユウ様の首の骨に圧力を加えつつ私は、ジフ様のように丁寧に尋ねる。上官には敬意を持って丁寧に対応しなくてはいけないのだ。はやる気持ちを懸命に抑え私は続ける。
【ジフ様を蘇らすにはどうすればいいのですか?】
「グゲフ! 貴殿、本当に骸骨兵か? ・・・・・・はて? この流れ以前にも経験が」
「その骸骨兵でしたら、正確には血塗れ骸骨兵ですが?」
【そんなことよりジフ様を蘇らすにどうすればよいのでしょうか】
私はさらに顎を閉じた。上下の歯の間から、木が軋むような音がする。
「ギュアァァァーーー!? 話すっ! 話すっ! 死霊軍団の幹部に最期の道化師と呼ばれる方がいる。死霊軍団最悪の処刑執行人だが、最近、死に損ないのの治療に凝っているのだ。だから、あの方ならジフ殿を蘇らせることができるかもしれない」
【その方はどこに?】
「大陸中央だ! 最前線で治療の実験台を探している。ジフ殿のことも非常に気に掛けていた。頼めば必ず応じてくれるはずだ!?」
大陸中央にいる最期の道化師・・・・・・よし覚えた!
私は、ジフ様を蘇らせてくれる人のことを魂に刻み込んだ。後は、死霊騎士ユウ様に感謝を伝える。顎骨に力を込めて全力で!!!
「ギュベ! 全部話したぞ!? なっぜっ」
ペキ
驚きと苦痛の悲鳴が上がる中、非常に軽い音と共に死霊騎士ユウ様の首が折れた。
以前と同じく床に落ちた頭部は、非常に重い音を奏でた。
私はジフ様と同じように首を折ることで、最大級の感謝を伝えた。
周囲では、|死体獣&骸骨騎士踊子団《ゾンビビーストアンドスケルトンナイトダンサーズ》がまだ踊っていた。
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私は、”骸骨洞窟”の出口に向かって地上への通路を歩いている。ジフ様を蘇らせるため大陸中央に行くためだ。
死霊騎士ユウ様の首を落とした後、骸骨騎士達が集めてくれた骨・・・・・勇者に倒された同胞達の骨で体を組み立てた。残念ながら全身を組み立てるだけの人骨がなかったので、足りない分は他の骨で代用した。いや、むしろ焼け残った同胞達の骨を全て使ったのだ。共にジフ様を蘇らせるために。
・・・・・・骨を集める中で見つかった蛇の頭蓋骨は、一つ残らず砕かれ焼かれていた。このことは、ジフ様だけでなくコメディまで奪った勇者達への憎悪を一層深めることになった。
また左腕の竜骨毒手も小指が斬りおとされていた。長身の骸骨・・・・・・ジョウ・デニムと名乗られた死霊魔術師様曰く『聖女の解毒のためだろう。魔術師なら解毒方法を調べるために毒の回収ぐらいはする』とのことらしい。
上の部屋では、部屋中に灰が広がっていた。勇者達を迎え撃った同胞達が浄化されたのだ。
ジフ様の部屋へと続く階段の前では、傷つき灰にまみれた全身鎧が転がっているのを見つけた。勇者をジフ様のところに行かせないよう最期まで戦ったのだろう、彼の鎧は私が身に着けることにした。
ジフ様の亡骸は魔術師の外套で丁寧に包み、先日送られてきた豪華な棺に納めた。棺の隙間には、同胞の焼けた灰を詰めたのでジフ様も寂しくはないだろう。ジフ様の棺も私が背負うことにした。他の誰かに任すわけにはいかない。
そう、他の誰か・・・・・・いま私と共に出口に向かう死霊騎士ユウ様達とはいえ任せるわけにはいかない。
彼らは大陸中央から最寄の拠点に転移して、そこから骸骨馬に乗って”骸骨洞窟”まできたらしい。”骸骨洞窟”で生存者を確保した彼らはこれから大陸中央へ戻る。
私は彼らについて大陸中央へ向かう。ジフ様のために!
外は昼なのだろう日の光を眩しく感じながら、私は洞窟の外に第一歩を踏み出した。
作品とは創造主の個性がでます。