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骸骨の夢  作者: 読歩人
第一章 骸骨洞窟編
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補給任務

外回りの話です。

 死体の捜索を再開して分かったことだが、”骸骨洞窟”は広くも深くもない洞窟だった。神官の死体を見つけた部屋から階段を上り、三度ほど角を曲がると日の光を浴びることになったからだ。

 洞窟の出口は、少し切り開かれた森の中にあるようだ。視線を走らせると並べられた人間二体と馬一頭の死体が木々の根元にあった。


 人間の死体は、ジフ様の部屋に持って行くとして馬の死体はどうしたものか?


 人間の死体をジフ様の部屋に運び。ジフ様に洞窟の外に馬の死体があったことを相談する。


「馬の死体? それも持って来・・・洞窟を通れんか。後で私自らが出向いて死体馬(ゾンビホース)にするからそのままにしておけ。それと洞窟の外に骸骨兵の残骸は無かったか?」


 私は、骸骨兵の残骸が無かったことを洞窟の外を思い浮かべながらジフ様に伝えた。


「予想通りか。聖一教の神官め、砕くだけでなく浄化までしてくれたようだな。お前達も気をつけろ頭蓋骨を砕かれたり、神官に浄化されれば再創造ができなくなるからな」


 ジフ様は、憤然とした調子で言いつつ私達に注意をしてくださった。

 私達骸骨兵の身を案じてくださるとはなんと御優しいか・・・・・・


「特に浄化は不味い。頭蓋骨を砕かれただけなら骨を再利用できるが、浄化されると材料探しから始めないといけないからめんどくさいことこの上ない」


 ・・・・・・た? ・・・・・・いや、仲間が減るのを懸念するのは創造者として当然のことである。なんとなく以前も似たようなことを言われたような気がしないでも無いが。はて?


「とにかく材料が足りない。森に行ってなんでもいいから生物の死体を持って来い」


 またもや生前への追憶をジフ様の命令で中断し、洞窟の外へ向かうことにした。


 洞窟の外に出ると太陽は未だ頭上にあり、周囲の木々が風でざわめいている。私は新たな仲間を増やすためそしてジフ様の命令を達成するために颯爽と森の中に歩みを進めた。



 迷った。



 生物の死体を捜しながら木々の間を歩いていたら洞窟に戻れなくなった。

 始めは調子よく木々の枝を大鉈で払ったりしながら進んだのだが。木の根に足骨を引っ掛け、木の枝に頭蓋骨をぶつけ死体を見つけられないまま損傷ばかりが増えた。そして日が傾き家が恋しくなってきたとき帰り道がわからないことに気づいたのだ。


 完全に日が落ちる前に”骸骨洞窟”に戻ろうと足早に周囲を探すが、木が多すぎてそれ以外何も見つけられない。このまま野垂れ死にするのではないかと絶望しているうちについに日が落ちてしまった。


 このまま私は、ジフ様に再会することなくこの森で彷徨い続けるのか!?


 暗闇に閉ざされた中、苦悩する私は思わず周囲の木々に大鉈を振るう。すると緑色の光が瞬き消えた。何事かと意識を向けると周囲の光景が一変していた。緑色の柱が乱立し、地面は黄緑色に染まっているのだ。


 これが木々の精気だろうか?思い返すとぼんやり光っていたような?


 周りが見えるようになり一安心していると緑色の柱の間から青白く光る骸骨が現れた。一瞬驚いたが、仲間の骸骨兵であった。私と同じように死体を探していたのだろう、その右手には青く光る兎を掴んでいた。


 仲間の成果を羨ましく思いつつも洞窟への帰り方を尋ねる。


 骸骨兵は頭蓋骨を傾けた後、私の真後ろを指差した。背後を振り返ると緑色に光る木々の間から、青い光が空に向かって伸びていた。あれは”骸骨洞窟”の陰の精気だろうか。

 仲間の骸骨兵は、私の肩を軽く叩いた後、羽でも生えてるような軽やかな足取りで兎を掲げつつ”骸骨洞窟”に向かっていった。


 ふん! 羨ましくなんかないんだから。


 私は、仲間の骸骨兵に負けじと兎を見つけるべく周囲を探し回る。迷わないように”骸骨洞窟”が見えているか確認するのも忘れない。赤い光が木のうろや地面の穴に隠れているが、なかなか青く光る兎が見つけられない。


 そんな時、長細い赤い光が青い光に巻きついているのを見つけた。よくよく見ると手でつかめるほどの蛇が兎を丸呑みにしているではないか。次の瞬間、私は兎を奪い取らんと大鉈を振り上げ蛇に襲い掛かっていた。



 首尾よく蛇から上前をはねた私は、兎の死体を手にジフ様の部屋に向かい洞窟の中を進む。途中、森の中で”骸骨洞窟”の帰り道を教えてくれた骸骨兵と擦れ違ったが、なぜか落ち込んでいた。

 ジフ様の部屋に入り、上の部屋から持ってきた死体に向かって踊りを踊っていたジフ様に成果を報告する。


「お前もか! この脳無しが!! そんな小動物が戦力になるか! この馬鹿者め!!」


 激しく怒られた。

初めての外回りは失敗するものです。(失敗の原因は、ジフ様の指示不足ですが)

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