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骸骨の夢  作者: 読歩人
第四章 争奪編
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現実

現実は悪夢と違い目覚めません。

「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー・・・」


 ジフ様が! ジフ様が!! ジフ様が!!!


 私は上下に断たれた頭蓋骨をつなぎあわせるため、無い腕を伸ばそうと藻掻き足掻き叫ぶ。


「・・・・・・ジフ殿であったか。残念だ」


「ジーンの奴っ! 報告があったとき、なんとしても止めていれば! こんなことには」


 背後で死霊騎士ユウ様と魔術師の外套(ローブ)の長身骸骨が悼むように話している。

 しかし、私には関係ないことだった。ジフ様を早く治さなければという思いが頭蓋骨を埋め尽くす。


 ジフ様が! ジフ様の!! ジフ様を!!!


骸骨兵(スケルトン)、ジフ殿を倒したのは誰だ? 報告のように本当に勇者が攻めてきたのか?」


 ジフ様が! ジフ様の!! ジフ様を!!!


「答えろ! 骸骨兵(スケルトン)! ジーンの奴は、勇者にやられたのか!?」


 私は、二人の問いかけにも答えず。なんとか顎骨を動かしジフ様に近寄ろうとする。


「あっ!」「おい!」


 カラン


 顎骨の動きだけで死霊騎士(デスナイト)ユウ様の手を這い出た私は、床に転がり落ちた。落ちた勢いのまま転がる私は、ついにジフ様の元に辿り着く。


【ジフ様! ジフ様! どうか! どうか! 今すぐに! 治します! 治します!・・・】


「これは、・・・・・・狂っているのか」


「忠誠心の高い”主なし(ロスト)”が狂うという話を聞いたことがあります」


「・・・・・・骸骨兵(スケルトン)よ。貴殿の主、ジフ殿は亡くなられたのだ。ジフ殿を倒した者のことを教えてくれ。仇は必ず討つ」


 ジフ様! ジフ様!! ジ、フ、さ・・・


 ジフ様の名を繰り返す私に死霊騎士(デスナイト)ユウ様の言葉が染み込んできた。


 ジフ様が亡くなった。仇を討つ。仇! かたき!! カタキ!!! カ・タ・キ!?


 眼窩の中に金色の戦士が浮かぶ。


【勇者! 勇者!! 勇者!!! ユーーーウーーーシャーーーーガーーーー】


「勇者なんだな!? どんな人間だった? 報告しろ骸骨兵(スケルトン)!」


 その言葉を聞くと『死んでも情報は伝えろ』声が頭蓋骨に響き、自然と精気が放たれた。


【勇者達、戦士男二人、神官女一人、魔術師女一人】


「四人組、腐敗王達を襲った勇者と同じ人数だな」


「はい、他の報告とも合致します」


【戦士一人、勇者、金色】


「金色の勇者か」


「金色の精気を纏いし者、伝説の勇者と同じですな」


【戦士一人、鎧と鉄鎚、赤い光】


「アンスター王国に城門を砕いた鉄鎚使いがいると聞くが」


「同一人物でしょう」


【神官、銀の光、罠破る】


「銀の光?」


「間違いありません。床にある金縛りの陣を浄化したのはその女です。恐らく聖一教の聖女」


【魔術師、紫の光、炎の槍】


「焼かれている骨は、その女魔術師の仕業か」


「紫の光、恐らくスチナ王国最後の大魔女エリザベートです。生前に会ったことがあります」


【罠破られ、皆焼かれた、コメディは戦士に噛みつき、私は毒手を勇者に投げた、聖女庇った】


「コメディとは?」


「蛇の骸骨でしょう。部屋中に砕かれた蛇の骨があります。それに毒手とは・・・・・・」


 私の報告を聞きながら話していた死霊騎士(デスナイト)ユウ様と長身の骸骨は、背後を振り向き続ける。視線の先には私の左手、竜骨毒手が転がっていた。


「・・・・・・触れただけで骸骨騎士(スケルトンナイト)の手を溶かした、あの紫色の骨でしょう」


「聖女にあれが・・・・・・」


「上の部屋は全てが浄化され灰になっていたのに、この部屋が浄化されていない理由が分かりました。聖女が死んだか、致命傷を負ったので撤退せざるえなかったのです」


「ジフ殿、見事一矢報いたか」


【戦士が私粉砕、ジフ様は勇者に挑む】


「ジーンめ! 一人で勇者に挑むとは」


 私の報告に死霊騎士(デスナイト)ユウ様と長身の骸骨は、悲しみを伴う複雑な声を漏らした。


「御報告します。転移の陣は、上の部屋の浄化の影響か発動しません。この地の陰の精気が大きく減少しています。また他の生存者は確認できません」


 先ほど、私を血肉の壷から取り出した骸骨騎士(スケルトンナイト)が二人に報告をした。私はその報告を聞き再び大きな悲しみに包まれる。


 コメディ! コメディまでもやられた! コメディまでもいなくなるのか!


【コメディ!】


 私は相棒を想いながら顎骨を動かし、戦士とコメディが戦っていた場所へ行こうとする。


骸骨兵(スケルトン)、待て!先に体をつけろ。・・・・・・誰か無事な骨を持ってこい! この忠義の士に体を・・・・・・」


 私を止めた死霊騎士(デスナイト)ユウ様が新たな命令を下す中、その声が響く。


「生存者発見!」

現実にも救いはあります。

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