表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
骸骨の夢  作者: 読歩人
第三章 死体獣の主編
38/223

英断

ピンチとチャンスは紙一重です。

「ジフ様、新タナ仲間ノ歓迎モヨイデスガ、人間ノ反撃ガ予想サレマス。対策ヲ練ラレテハイカガデショウカ?」


 決め姿のまま死霊魔術師(ネクロマンサー)について語っていたジフ様を顎割れ死体騎士が邪魔した。せっかくジフ様の役者のような姿を観賞していたのに。


「ん? ああ、そっ、そうだな。そうか人間の反撃があるのか」


 ジフ様は、顎骨を手でつまみ御考えになる。ジフ様、人間の反撃などこの私が防いで見せます。『攻めてくる人間は殺せ! 逃げる人間も殺せ! 殺さない人間は死んだ人間(なかま)だけだ』と頭蓋骨の中にも響いております。


「魔術師もいるとか言ってたな」


 いつの間にか死体獣踊子隊ゾンビビーストダンサーズに囲まれている名前の分からない死霊魔術師(ネクロマンサー)様をチラッと見てから確認するように呟かれる。


「ハイ、デスカラロッキー山脈要塞ヲ監視シテ、人間ノ出撃及ビ戦力ヲ確認シマス。ソシテ森ニ入ッタラ死体獣(ゾンビビースト)ニヨッテ夜間奇襲ヲ行イ魔術師達ヲ殺害シ……」


「死体騎士、現在の戦力はどれぐらいだ?」


「エッ? ハッ、ハイ、死体騎士(ゾンビナイト)一体、死体兵(ゾンビ)二十三体、骸骨兵(スケルトン)一体、蛇骨兵(バイパーヘッドスカル)二体、超蛇骨兵スーパーバイパーヘッドスカルガ……五十体、死体獣(ゾンビビースト)ガ大型三十八頭、中型ハ百一匹ニナリマス……ソレト死霊魔術師(ネクロマンサー)様ガ御一人加ワルカモシレマセン」


「人型が八十に、獣が百四十か……よし出撃準備だ!」


「ハッ? 今ナント」


【了解】

「シャー」

「シャー」


 ジフ様の命令に顎割れ死体騎士は間の抜けた声で、私達幽霊船派遣(じごくフルコース)組は鋭い返事で答える。

 さて出撃準備をしよう……何をどうすればいいのだろうか?

 ロッキー山脈はどこだ?


「ジフ様! 出撃トハドコニ?」


 縋るような声で顎割れ死体騎士がジフ様に質問している。

 愚かだな顎割れ死体騎士よ。どこをどう聞いてもロッキー山脈の要塞とやらに人間を殺しにいくに決まっているじゃないか。


「ロッキー山脈要塞にだ。決まっているだろう」


「何ヲシニ!?」


「人間を殺しに決まってるだろう」


 ほらな……どうした顎割れ死体騎士、なんで頭を抱えて天を仰いでいるんだ? 

 更になんか呟き始めた。


「要塞ダゾ……魔術師……脳無……ドウ考エ……不可……逃……イヤ……シカシ……」


 よく聞こえなかったが顎割れ死体騎士の呟きが終わった。

 大きく肩を落とし息を吐いている。

 深呼吸だろうか? 私達には呼吸の必要がないのに変わった奴だ。


「ジフ様、ジフ様ノ任務ハ戦力ノ確保ト拠点ノ防衛デス。許可モナク拠点ヲ離レテ、人間ヲ攻メルノハ出世ニ影響スルノデハ」


「うっ! ……大丈夫だ! ロッキー山脈要塞を攻めるのは、”骸骨洞窟”を守るための行動だ。いわゆる過剰防衛、いや違うか? ……そう専守防衛と言う奴だ。これなら問題なかろう」


「私ガ問題ニシテイルノハ、留守ニシテイル間ニ”骸骨洞窟”ガ落トサレル可能性ヲ……」


「ここから北は、魔王軍の占領下だ。そして南のアンスター王国とは、ロッキー山脈で隔てられてる。どこから攻めてくるんだ?

 というかあのロッキー山脈要塞があるから人間どもの国に攻め込めないんだ! あの要塞さえなければここも主戦場になって出世し放題なのに!!!」


「シカシ、モシ上層部ニバレレバ……」


「誰がばらすんだ?」


「……ソレハ……」


「上層部には、要塞を落としてから報告すればいい。それに要塞を落とせば、また死霊魔術師(ネクロマンサー)が増えるかもしれない。そうすれば死霊魔術(ネクロマンシー)ジフ・ジーン流として一門を持つことができる」


 ここでジフ様がニ回転半した。いつも一回転なのによほど興奮されているのだろう。


超蛇骨兵スーパーバイパーヘッドスカルの創造!

 ”二つ名”死体獣の主ゾンビビーストマスター

 幽霊船艦隊! ロッキー山脈要塞の攻略!

 死霊魔術師(ネクロマンサー)の弟子達!

 ……完璧だ!! これだけの功績があれば出世どころか最前線への栄転、いや次期首席候補も夢ではないはず!!!」


「ダメダ。出世ニ目ガ眩ンデイル」


 顎割れ死体騎士が、両手両膝を床について何か言っている。

 まあ、今はそんなことよりジフ様の命令が大事だ。


「これより”骸骨洞窟”はその全力を持ってロッキー山脈要塞に進軍する! 全ては私の出世のために!!!」

どちらになるかは当事者しだいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ