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骸骨の夢  作者: 読歩人
第三章 死体獣の主編
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超蛇骨兵

戻った職場に見慣れぬ影。

 何だ奴らは!?


 私は、部屋の隅で解体される死体にも並べられた蛇の骨にも目を留めず、ジフ様の両脇にいる二体を見つめた。

 赤黒く血に染まった頭蓋骨は風格があり、両脇と腰骨から伸びる二対四本の蛇体は本来の腕と併せて三面六臂の鬼族、阿修羅のようだ。何より私が装備できない盾まで持っている。・・・竜骨毒手で持つと溶けてしまうのだ。

 と・に・か・く!すごく負けた気分になるのだ!何だきさまら!!!


「ん?何だおまえら?」


 ジフ様それはこちらの台詞です。私達に気づいたジフ様に心の中で突っ込む。


「もしかして・・・幽霊船に送った蛇骨兵か!何故ここに?まだ十日かそこらしかたっていないぞ」


【その骸骨兵は!!!】


 私は、珍しくジフ様の言葉を遮り問いを伝える。


「な!?なんだ今のは?精気か?・・・まあいい・・・良くぞ聞いた!」


 ジフ様は、私の問いに一瞬戸惑ったがサラッと流されて御答えくださった。鷹揚なジフ様は、顎割れ死体騎士のように些細なことに拘らない。両手を広げた決め姿も格好いい。


「アア。マタ始マッタ」


 後ろで追いかけてきた顎割れ死体騎士が、疲れたように呟いた。どうしたのだろうか?何か悩み事でもあるのか?


「この二体の新しい骸骨兵は、おまえ達を幽霊船に送った後、あの死霊騎士の難癖を封じ込めるために創造したのだ!」


 ここで一回転するジフ様。流石だ!決まっている。


「残っていた骸骨兵二体に、今までの蛇骨兵以上の四体の蛇を追加しさらに剣、盾、鎧で完全武装させたのだ!これで聖水だろうが火矢呪文(ファイヤーアロー)だろうが問題ない!」


 残っていた骸骨兵?・・・私の同期か!改めて見れば何処と無く見覚えがある。私が幽霊船で地獄を味わっている間におまえ達は、なんて豪華に!?


「この二体は、優秀だぞ。たった数日でこの森の獣をほとんど狩ってしまうほどだ!」


 なるほど。部屋の隅にズラッと並んでいる各種小動物の死体獣(ゾンビビースト)を確認する。兎、栗鼠、鼠、狐などの小さくてモフモフなのが踊っている。


小さな死体獣(あれ)は、この前の死霊騎士に送る。・・・なぜか死体騎士がそうしたほうが良いと進言したのでな」


 顎割れ死体騎士よ。おまえは何を考えているんだ。ジフ様の面倒ごとを増やすな!


「とにかく!この究極!最高!絶対!の骸骨兵!その名も超蛇骨兵スーパーバイパーヘッドスカルは、私を必ずきっと出世させるだろう」


 スー・パー・バイパー・ヘッド・スカルだって!!!???私はあまりの驚きに顎骨が落ちる。あっ!?・・・コメディが拾ってくれた。ありがとう。


「し!か!も!二体だけではないのだ!昨日、近隣の村や街を超蛇骨兵スーパーバイパーヘッドスカル死体獣(ゾンビビースト)に梯子させて超蛇骨兵スーパーバイパーヘッドスカルの材料を大量に手に入れたのだ!」


 ジフ様は、私が先ほど無視した人間を解体している場所を示した。そこでは、蝋燭の淡い明かりの中死体兵(ゾンビ)が人間達の死体を血肉と骨にばらし血肉は壷に、骨は大鍋に入れてグツグツ煮ていた・・・人骨スープでも作るのだろうか?


「凄いだろう!?大量の人骨を予め準備しておいた蛇の骨と組み合わせているのだ!」


 先の場所の隣では、茹でられた人骨が蛇の骨と組み合わされ血肉の壷に漬した筆で血塗りにされている。作業している死体兵(ゾンビ)の美術性か、同じ赤でも濃淡があり炎のような模様になっている。なかなかの芸術家(アーティスト)だ。


「ああ。あれか?知り合いの死霊魔術師(ネクロマンサー)骸骨兵(スケルトン)を血で塗ると評価が三倍になると聞いてな・・・そういえばあいつ昨日、遠話してたら急に左遷されたとか言っていたっけ」


 骸骨兵(スケルトン)を血で塗る?どこかで何か聞いたような?ジフ様に伝えるべきことがあったような?


死体獣(ゾンビビースト)を率いる超蛇骨兵スーパーバイパーヘッドスカル。そしてそれを操る天才死霊魔術師(ネクロマンサー)の私!これで成果も出世も思いのままだ・・・そうだ!おまえ達、成果と出世はどうした!?」


 ジフ様に伝えるべき大切なことを思い出す前に、ジフ様よりの質問が頭蓋骨に響く。成果でしたらこの肩の女魔術師(おみやげ)が・・・


【船】【四隻】


 一緒に幽霊船に派遣されていた蛇骨兵が答える。いつの間に船と死体水兵(シーゾンビ)が増えてたあの件だ。いや考えるのはよそう。また頭蓋骨が痛くなる。


「なんだと!たった十日で船を四隻もか!・・・それで出世はどうなった!?」


【これ】【もらった】


 蛇骨兵達は、少し焦げた幽霊船免状を差し出す。火矢呪文(ファイヤーアロー)で燃えないとはどんな紙を使っているのだろうか?疑問に思いつつも私も腰骨の間から取り出した幽霊船免状を差し出す。


「幽霊船免状だと?貸せ!?」


 焦げていないからだろうか私の手から幽霊船免状を手に取られる。


「え~と、なになに。

 ・・・死霊王様へ、この免状持ちし血塗れ骸骨兵(ブラッドスケルトン)、優秀なものなれば幽霊船を下賜いただきたい。キャプテン・ガデムより。

 追記・・・つー訳で幽霊船を頼む。首席殿の言質は取ったから安心してくれ。小言を言われる心配はない。じゃあまたな!そのうち飲もうぜ・・・」


 ジフ様は、私の幽霊船免状を読み終えるとなぜか(・・・)無言になって蛇骨兵達の幽霊船免状に目を通し始める。


 どうですか?見事、成果と出世の両方を手に入れました。お褒めください! 

同期が出世していることもよくあることです。

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