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骸骨の夢  作者: 読歩人
第二章 幽霊船編
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特訓

特別訓練の略です。

血濡れの骸骨兵(ブラッドスケルトン)さん、船長って言うのは船で一番偉い人のことなの。だから幽霊船の船長になることは出世したことになるのよ」


 死霊魔術師(ネクロマンサー)ケルゲレン様が丁寧に教えてくださった。つまり私は、ジフ様の御命令を達成したのだ。ジフ様、派遣された翌日のうちに成果を上げ出世をしました。御喜びください。


「勢いでド素人に幽霊船免状を渡すことになっちまった。これから幽霊船の船長に必要なことを叩き込まないとな。喜べ!たった一週間で終わる地獄のフルコースがおまえを待っているぞ」


 船長ガデム様が、面倒くさそうな態度から一変、楽しそうに声を掛けてきた。つまり私は、これから地獄を見るということだ。ジフ様、派遣された翌日から真の地獄が始まりました。御助けください。


~一日目~


「パゾクも含めて幽霊船には意思がある。勝手に人間探して、勝手に動いて、勝手に戦いを挑む!ワシ達は、幽霊船の武器だ!剣だ!盾だ!人間の船に突っ込んだら殺せ!殺せ!殺せ!」


 船長ガデム様、前に言っていたことと違います。私は心の中で突っ込みながら大鉈を振るう。


「一人やられたら、二人殺せ!二人やられたら、四人殺せ!生きてる奴は敵だ!死んでる奴は味方だ!」


 私と蛇骨兵達は、朝から翌朝まで武器を振るわされる・・・仲間の死体水兵(・・・・・・)に向かって。ちなみに蛇骨兵達は、私のついでだそうだ。恨めしげな視線が痛い。


「肉を切る感覚を覚えろ!殺されても相手を殺せ!敵の攻撃は無視しろ!相打ち上等!」


 死体水兵(シーゾンビ)達は、盾や武器を持ちながら防御と回避しかしないように命令されている。仲間を攻撃して初めて分かるが死に損ない(アンデッド)は死ににくい。首を半分切られても問題なく動くのだ。


「殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!・・・」


 仲間同士の偽りの死闘が延々と続いた。


~二日目~


「今日はおまえ達が、案山子になる番だ!ただし避けるな!受けるな!砕かれろ!」


 は?何を言っているんだ。船長ガデム様の滅茶苦茶な話に抗議しようと・・・


死体水兵(シーゾンビ)!昨日の御礼をしてやれ!頭蓋骨を砕かなければ何をしても構わん!」


 私達六人に私達が一日中攻め続けた死体水兵(シーゾンビ)が襲い掛かってきた。逃げ場は・・・ない!?


「避けるな!受けるな!砕かれろ!敵の攻撃を恐れるな!死に損ない(アンデッド)のしぶとさは蛆虫以上だ!おまえ達は蛆虫だ!蛆虫になるんだ!」


 バラバラにされては組み立てられ、またバラバラにされては組み立てられ、また・・・

 翌朝までの間にバラバラにされた回数は、覚えていない。ただ骨に傷だけが刻まれる。


~三日目~


「ド素人が!おまえ達はやっと素人への入り口に立った。ここからが本番だ!幽霊船は、嵐や霧などの天候を操れる!しかし幽霊船との信頼関係がないと頼んでも無視される!幽霊船様に恋をしろ、愛を持て、その掃除道具がおまえ達の武器だ!」


 なんとすばらしい教育だろう。二日間続いた死闘から解放された私は、心のそこからそう思い全身全霊を込めて甲板掃除をする。


「幽霊船は、船底の藻やフジツボが嫌いだ!喜んで飛び込め!おまえ達の恋人が待っているぞ!」


 船長ガデム様の声を聞き、私は躊躇せず海に飛び込んだ。


~四日目~


「幽霊船を愛しているか!」


「シャー!」「シャー!」「シャー!」「シャー!」「シャー!」【はいー!】


「幽霊船を守りたいか!」


「シャー!」「シャー!」「シャー!」「シャー!」「シャー!」【はいー!】


「幽霊船を愛する素人!人間は幽霊船を見たら襲い掛かってくる!奴らを許せるか!」


「シャー!」「シャー!」「シャー!」「シャー!」「シャー!」【いいえー!】


「人間は卑怯だ!襲われる前に襲え!おまえ達の空の頭蓋骨は誰のためにある!」


「シャシャ!」「シャシャ!」「シャシャ!」「シャシャ!」「シャシャ!」【幽霊船!】


「ならば学べワシの戦術を!幽霊船のために!ワシは最高か!」


「シャシャ!」「シャシャ!」「シャシャ!」「シャシャ!」「シャシャ!」【最高です!】


~五日目~


「幽霊船のために死ねるか!」


「シャー!」「シャー!」「シャー!」「シャー!」「シャー!」【はいー!】


「死んでも幽霊船を守りたいか!」


「シャ!」「シャ!」「シャ!」「シャ!」「シャ!」【当然!】


「ならば死霊魔術師(ネクロマンサー)を守れ!」


「シャ!」「シャ!」「シャ!」「シャ!」「シャ!」【守る!】


死霊魔術師(ネクロマンサー)は、おまえ達を死から呼び戻す!死を恐れるな!」


「シャッ!」「シャッ!」「シャッ!」「シャッ!」「シャッ!」【恐れない!】


~六日目~


「人間の船を見つけた!おまえ達の死に場所がきたぞ!嬉しいか!」


「シャ!」「シャ!」「シャ!」「シャ!」「シャ!」【当然!】


「嵐の中の突撃だ!幸せだろ!幸せだろ!幸せだろ!」


「シャッ!」「シャッ!」「シャッ!」「シャッ!」「シャッ!」【幸せだ!】


 その後突撃した人間達の艦隊は、半日もせず私達の仲間になった。こちらの被害は、蛇骨兵三人と死体水兵五人だった。


~七日目~


「幽霊船を愛する玄人(プロ)!おまえ達と戦えて幸せだ!」


「シャー!」「シャー!」【私もです!】


「騎士の剣にも、神官の浄化にも、魔術師の火矢呪文(ファイアアロー)にも突っ込むその愛は本物だ!」


「シャー!」「シャー!」【本物です!】


「最高の玄人(プロ)に幽霊船免状を送る。死ぬほど喜べ!」


「シャー!」「シャー!」【嬉しいです!】


 私達は、敬愛する船長ガデム様より幽霊船免状をいただいた。


「男の友情って美しいわね」


 死霊魔術師(ネクロマンサー)ケルゲレン様の声と・・・


「シャー?」【ジフは?】


 一週間寝ていたコメディの声が聞こえた。

海兵隊式ではありません。ただの洗脳です。

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