お宝探し
仕事の報酬です。
「戦闘が終わったらいろいろやることがある。最初に仲間を直して、次に生き残った敵を殺する」
船内に戻りながら船長ガデム様は続ける。
「最後に金目のものや武器、防具そして地図や書物を集めて終わりだ。今回は、船ごともらうから確認するだけだがな」
武器や防具・・・私の大鉈はさっき拾ったので問題なし。地図や書物は何のために?
「さて。ここが船長室か・・・派手に散らかっているな。航海日誌はどこだ?おまえ達!表紙にアンスターの国章・・・六角形と星がある冊子を探せ」
大きな部屋・・・船長室に入ると航海日誌探しを命令される。航海の日記か・・・人の日記を読もうとするなんて趣味が悪いな船長ガデム様。
「シャー!」
壊れた机や椅子を除けながら航海日誌を探しているとコメディが声を上げた。なんだコメディ見つけたのか?見ると壊れた机の下に表紙にアンスターの国章が描かれた冊子が落ちている。これか?
「おおっ。見つけたか。よくやっぞ蛇」
船長ガデム様もコメディが見つけたのに気づき、私達を労いつつ航海日誌を手に取る。
「高速輸送船コロンブス航海日誌・・・間違いないこれだな。なになに・・・
十月二十日夜、昨日からの嵐を抜けた。神とあの方達の加護であろうか。船員は、みな疲労が激しい・・・
十月二十日昼、昨日からの嵐が続く。船員達は全員で対処・・・
十月二十日朝、昨日からの嵐が続く。船員・・・
十月十九日夜、昼から嵐が続く。・・・
十月十九日・・・」
船長ガデム様が読み上げる航海日誌は、船長ガデム様が幽霊船にやらせた嵐による攻撃のことが書き綴られているようだ。相当嫌だったのだろう。
「十月十五日昼、あの方達を北東半島中部の廃港に送ることができた。無事にここまで辿り着けたのが信じられない。あの方達にの御力があったとはいえ奇跡だ・・・
十月十日夜、魔族の襲撃を受けた。魚人の大軍をあの方達は易々と倒された。伝説の英雄が現れたのだ。御伽噺だと思っていた自分が愚かだった。神よ御許しください。
十月五日朝、司令部より重要人物達の輸送を命令された。単独で海の魔族が跳梁闊歩する東海を縦断し、死に損ないの支配する北東半島を目指せとのことだ。船団を組まずに今の東海を航海することは沈みにいくような・・・」
船長ガデム様はそこで読むのを止めると、航海日誌を閉じ早足で船長室を出て甲板へ向かう。どうされたのだろう?
後についていくと甲板に出た船長ガデム様は、水晶玉を手にして真剣な声で独り言を呟いて・・・いや遠話だろうか?
「・・・さっさと死霊王様か首席殿に代われ。二桁の死霊魔術師では話にならない。・・・無礼だと?ド素人が!・・・何が部下無しだ!ワシら骸骨兵は、壊れて何ぼ!相打ち上等だろうが!」
・・・水晶玉に怒鳴り始めた。相手の声が聞こえないためか一人で喧嘩しているようにも見える。
「おおっ!首席殿!やっと代わったか。部下の教育が悪いですぞ。だいたい・・・首席殿?伝わりが悪いですぞ?もう少し精気を強く・・・」
「これでよいかガデム」
あ。相手の声も聞こえるようになった。鷹揚としながも性別が分かりにくい声である。
「強すぎ過ぎるが聞こえるぞ首席殿」
「それで報告とは?」
「ああ。本日深夜、アンスター所属の高速輸送船コロンブスを襲撃し拿捕に成功。船員を死体水兵にした後、船内の貴重品及び情報の収集をした」
「なにがあった」
「航海日誌にな。直接の記載は無かったが、伝説の英雄に御伽噺の人物と描写されていた。ついでに十日前に魚人の大軍を倒しているらしい」
「魚人の件は、海月王様に確認する。御伽噺の彼らは、今どこに?」
「五日前に北東半島中部の廃港で降りたと記載されている。周辺の死に損ないに伝えといたほうがいい」
「同意しよう。後ほどそちらに転移する。準備を」
「了解した首席殿。マダム・ケルゲレンに伝えておく」
話が終わったのか。船長ガデム様は、水晶玉を頭蓋骨に戻しながら呟く。
「勇者、か・・・とんでもないものを見つけたな」
情報の価値は、人によって違います。