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骸骨の夢  作者: 読歩人
第二章 幽霊船編
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死に損ないの戦い

人間との戦いが始まります。

「そうだな・・・・・・『高速輸送船を傷つけないで乗員を皆殺にする』を勝利条件にするか。そして貴重品があればいただいく。重要人物なら生捕りだ」


 それなんて無理遊戯ですか? 船を傷つけずに襲えって・・・・・・


「安心しろ。ここからが死に損ない(アンデッド)の戦い方が始まる。徹底的に、本格的に教えてやる・・・・・・」


 船長ガデム様が嬉しそうに笑う。その手元では水晶玉がクルクルと回っていた。



 翌日、私達は海中にいた。また船長ガデム様に投げ込まれた訳ではない。いや? 海中にいるのは、船長ガデム様の命令だから違うのか?


 私は、船長ガデム様が語った血も涙も無い悪辣な死に損ない(アンデッド)の戦い方を思い返す。


『人間は死にやすい。息ができないと死ぬ。食事をしないと死ぬ。眠らないと死ぬ。刺されても死ぬ。毒でも死ぬ。他にもまだまだあるが簡単に死ぬ。死なないまでも、ワシ達と違い簡単に弱くなる。

 さっきからパゾクに頼んで、高速輸送船を嵐で襲っている。小さい船だからな・・・・・・乗ってる人間は、半日で動けなくなるだろう』


 聞いたときは、嵐の中で船を襲わせられるのかと恐怖した。まあもっと酷かったのだが・・・・・・


『半日ばかり、船を揺さぶってやった後、夕方ぐらいに嵐を鎮めてやるのさ。人間は、疲れると休憩が必要になる。嵐を乗り越えたと安心して食事を取って、酒を飲んで寝ちまう・・・・・・休憩したら不味いと思うか?』


 不味いと思ったのだが・・・・・・


『休んでいるところを襲うのさ。一度危機を乗り越えると気が緩んでいてな、何もできなくなるんだ』


 なるほどと感心した。その次の言葉が出るまで・・・・・・


『後は深夜に霧を発生させて、静かに海中(・・)から襲いかかってお仕舞いだ』


 結果、私と蛇骨兵は、幽霊船から高速輸送船に向かって泳いでいる。霧のせいで月の光も届かない海の闇の中、うっすらと緑色の光が見えてきた。


 高速輸送船に使われている木材の精気だ!


【碇、鎖】


 コメディの意識が伝わってくる。


 コメディいい子だぞ。


 私は、船首にある碇の鎖に向けて泳ぎ、掴み取る。鎖が大きな音を出さないように注意して上がっていく。海面から上は、霧に包まれ精気の光だけが頼りだ。


【見張り注意】


 本当にいい子だ。コメディサイコー!


 船上に這い上がると蛇骨兵達が上がってくるのを待つ。しかし二人目が上がってくる前に、霧の中に赤く光る人影が近づいてくる。


 見張りか!? ジフ様、成果が近づいてきました!?


 私は、いそいそと大鉈を構え・・・・・・


【待つ】


 なぜだコメディ? 成果が・・・・・・


【待つ】


 赤い光が離れていく。


 ああ、成果が逃げていく。


【全員、待つ】


 全員? 幽霊船から海中に落とされたときに、船長ガデム様が言ったことがよみがえる。


『甲板に上がっても全員揃うまで、誰も殺すなよ! 霧の中なら、疲れた人間は目の前に竜がいても気づかないが! 断末魔の悲鳴は誰でも気づく!』


 おお!? コメディ、あの言葉を覚えていたのか! ・・・・・・私は忘れていたぞ。


 蛇骨兵が全員上がると行動を再開する。まずは甲板にいる見張りを確認する。全員で四人、水晶玉で確認しておいた人数と同じである。蛇骨兵二人が船内への扉の前に移動し、私と残りの三人が見張りに近づいていく十分に近づいたところで・・・・・・


【今っ】


 全員に精気を放ちつつ、赤く光る人影の頭部に大鉈を振り下ろす。


「ぐふ!」「がざ!」「ずだ!」「ないちぃ!」


 四つの呻き声が上がり、人が倒れる音が続く。扉の方向に眼窩を向けるが、誰かが出てくる気配はない。


 私達は、静かに扉を開けると眠れる人間に死を届けるため闇に身を投じた。

卑怯? なにそれ? 美味しいの?

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