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骸骨の夢  作者: 読歩人
第十章 魔王編
189/223

魔人とは……興味ないです

あの方の登場です。


そしてついでに魔人の説明。

「はい……遥か遥か昔、遥か遥か遠く、今はアンスターと呼ばれる地……私どもの祖先は人間達に住処を奪われ、一族を殺され、神を滅ぼされ、それでも生きることを諦めず、戦うことを止めず、信じることを捨てませんでした……」


 魔人将軍クイッタは語る。


「は~い。それでも人間達の暴虐は凄まじく戦士は死に、女は犯され、子は喰われ……人魚(マーメイド)をはじめ数多の一族が血を絶やし、この世界から消えていきました」


【【【【【【【………………】】】】】】】


 自らが『ご先祖様』と言った『呪われた遺物』達に。


「はいはい。しかし、しかし全ての魔族が滅びたわけではありませんでした。戦士は民を、男は女を、親は子を……魔術に焼かれながらも、毒に侵されながらもある時は体を盾に、(それ)すら失っても魂を燃やし……」


 魔人の歴史を。


 正直、私は興味なかったのだが、ゼミノール以下数名の食いつきが凄かったのだ。


『ど、どう、うぃうことだね?! ……極悪魔人!?』『生き延びた一族がいたと?』『ガルグルガウウガガガル!!』『どうでもいいニャ~』


 ……例外もあったが。


「はい。そんな犠牲が犠牲を、死が死を招く悲劇と苦難の中、一部の魔族達が生き残るため新天地を目指し旅立ちました。勿論、決して楽な道ではありません。(しるべ)は無く、恐ろしい存在が跋扈していました」


 あーーー確かにスチナだと魔族は発見次第即駆除だからなぁ~~~生前は魔族なんてほとんど見たことなかった。聖一教も定期的に魔族討伐していると聞いたこともあるし。


「はい。安住の地を探す旅は長く険しいものになりました。北の国では魔術の材料として追い立てられ、西では自称聖なる狂信者に襲われ……」


 魔人が話しながら案内する先、巨大な何かが見えてくる。

 千年を生きる巨木より万の兵を抱える城より大きなそれは……色とりどりの旗に飾られた化け物テントだった。


 もしかしてあれがジフサマ大サーカスというやつか?


 魔術か魔族か知らないが宙を舞う光――炎か?――が照らすそれは幼いころ見た旅サーカスのそれとは比べ物にならない規模である。


 な、なんと素晴らしい!! あの中にジフ様が!!


「は~い。長く辛い旅路の中で数多の魔族がその命を散らしていきました」


【異郷の地に散ったのか。さぞ無念だったろう……同志よ】


 直ぐ空を飛んで突撃したい。が街に入る前『はいはい。暴れないでくださいね』と注意されたし……うむ! ここは大人しく進もう。ジフ様に会う前に骸骨料理にされてはかなわない。

 私は大局を見ることができる大人なのだ。


 ……


 一歩♪


 …………


 二歩♪


 ………………


 三歩♪


 トビコミタイ……ツッコミタイ……トツゲキシタイ…………我慢の限界が近いようだ。

 餌を前に『待て』と言われた地獄の番犬(ケルベロス)はこんな気分なのだろう。


「はい。そんな煉獄を歩むような放浪の終焉……(ドラゴン)や鬼が生きる氷と雪に包まれた北の大地に辿り着いたのはほんの一握りの民だけでした」


【遥か北の地か。喜ばしいことだ……同志達よ】【その中に純血の古妖精(エルフ)はいるかっ!?】【寒いのキライニャ~】


 ゼミノール達が盛り上がっている横で私は悩む。


 困った……ジフ様にもう直ぐ会えると思うだけで理性が保てなくなりそうだ……何か他のことで……羊でも数えて心を落ち着けよう。


 羊が一匹……


 羊が二匹……


 羊と棺って似てるな……


 棺といえばジフ様の……


 …………む、無理だ!! 不可能だ!! ジフ様のことが頭蓋骨から離れない!?


「はーいー……言いにくいのですが、純血の魔族は魔人の中に一人(・・)もいないと思います。氷雪の原に辿り着いたのは、それぞれの一族がそれこそ一人、二人でしたから……」


【一人、二人だと……】【グワット?】【ではどうやって? いや、異なる一族間でか】


 いや。頭を冷やそう……ジフ様にもう直ぐ会える。その準備をして時間を稼げばいいのだ。


「はい。辿り着いた魔族達は考えました。一族内だけで子孫を残すことはできない。ならば種族にこだわらず子を成そうと……」


 まずは身だしなみだ。布と刷毛で汚れを……


「はい。人狼(ワーウルフ)古妖精(エルフ)蛇女(ラミア)、更には北方に住んでいた魔族――(ドラゴン)吸血鬼(ヴァンパイア)金蝗(アバドン)など……本来、子を成せないはずの種族が交じり合い真なる魔族……魔人が生まれました」


【……確かにあまりに違いすぎる一族では子は成せない……極悪、いや、クイッタ嬢?】


 フキフキ! パフパフ!


 これで良し! 後は香水をつけて……リボンも巻いておこうか? この『呪われた遺物』(からだ)は全てジフ様のもの、綺麗にしておかなくては。


「は~い。本来混ざるはずがない魔を混じり紡いだ種がいたんです。女と見れば、蛇でも魚でもどんな種族でも口説いて子孫を残せる節操のない……おっと。着いたようですね」


 プシュプシュ♪


 香水もつけた。自分で匂いは嗅げないがきっといい香りがすることだろう。


 準備万端。完璧な状態で私は街の中心を覆う巨大テントへ辿り着いた。


 ああ! ジフ様! 貴方様の大鉈が帰ってきましたよ! ……思えば長かった。勇者に敗れ、売られ、調理され……しかし、今こそ全ての苦労が報われる。


 万感の想いを抱いて私は分厚い幕の切れ目に身を進ませる。


「はい? この精気は陛下の……」


 周囲に満ちる濃く暗い精気を気にすることなく。


「よくぞ来た邪神よ」


 そんな私の前に黒い何かが立ちはだかる――宙に浮いているから飛びはだかるか?


 その闇が人型をとったような何者かは偉そうに言葉を吐く。夢と希望が最高値な私の邪魔をしている癖に。


「我こそが魔――」


 ジフ様と私の間に立ちふさがった世界の闇を集めたような誰かは……


【邪魔】


 ペシッ!


 私の振るった一撃の元に床のシミになった。

章の題になっているあの方が登場……即退場しました。


魔人の親玉ですから当然、出オチ。


ちなみに昔、水が貴重な戦場では、体臭を誤魔化すために香水をつけたりしたそうです。

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