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骸骨の夢  作者: 読歩人
第十章 魔王編
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蝿と骨

交渉は初見の人同士がやるより、縁のある人が……

「はい。覚えてます。覚えてます。デニムさん、ジフ・ジーン様と一緒にいた骸骨兵(スケルトン)さんでしたか」


 『はいーー!? な、なんでそのことを知っているんですかぁーーー!?』と驚く蝿魔人に、『あなたが金貨欲しさに人間に召喚されて以下略』の際にいたこと、私がジフ様の部下ということを話すと手のひらを拳でポンッと叩きながら頷き納得してくれた。


 見た目蝿なのに話が通じるとは……なんと素晴らしい!

 そうだよな。蟹娘や蜥蜴なんかより蝿のほうが死に損ない(アンデッド)と仲良しだもんな。

 街に押し寄せた死霊軍団と戦った時も蛆と蝿が……


「はい~しかし、しかし、以前も普通の骸骨兵(スケルトン)とは違って見えましたけど随分と格好良くなられて。若い魔人()だったらその体に夢中にですよ」


 ……たくさん湧いて…………い、今なんと?


 生前の負け戦に思いを馳せていた私は、二ヶ月ばかりの骨生(じんせい)――生きていた時も含めてかな?――で『格好良く』『若い()が夢中』なんて言葉は掛けられた覚えがない。


 伝説のモテ木にでも寄生されたのだろうか!?


 ――ちなみにモテ木とは、人間に寄生する植物である。寄生された人はむやみやたらと異性を惹きつけまくるが最終的に刃傷沙汰に発展し非業な結末を迎えるらしい。有名な被害者はジパン王国のマコトという少年で伝わる話は九割以上悲劇だ。


 私は頭蓋骨を巡らし自らの『呪われた遺物』からなる肉体を見る。


 朽ち果てた巨人に猿、猫、熊、狼……何十体もの獣が継がれ絡み合う邪体。人間からすれば完全に化け物である。そして当然植物は生えてない。宿木の槍は持っているだけだ。


 魔族の感覚って一体……というか……魔族に好かれてもな。


 驚き、疑い、そして安堵。最後に冷めたツッコミを自分に入れる。


「はい。それにしても噂の邪神さんがあの時の骸骨兵(スケルトン)さんとは本当に驚きです。アンスターが開発した合成魔獣とか、過去の魔王の亡霊とか憶測だけが広がってまして。中には、ジフサマ大サーカスを見るために大陸を縦断していると上申した魔人も……」


 そうそれだ!


 客の機嫌をとる商人のようにペラペラ喋る蝿魔人。適当に聞き流しているその言葉の羅列の中に私の求める主の名があった。


【ジフ様どこ!!】


「はい? ジフサマ? ジフ・ジーン様のことですか? それでしたら街の中央広場で公演中ですよ」


 よし! やはりあの街の中なのだな。中央の広場なら迷うことも無いだろう……迷ったらそこら辺の人間に道を尋ねればいい。


 私はそんな事を考えながら体を街へ捻った。


「はい。ジフ・ジーン様に会いたいのでしたら私が案内させていただきますよ。魔王様にもできうる限りの歓迎をと言われてますし」


 蝿魔人――クイッタだったか――が羽を、蟲の透明で光沢のある羽でなく蝙蝠のような暗い膜を広げ中に浮かぶ。


 どうやら私の目的を察し先導してくれるようだ。


 いきなり攻撃してきた蟹娘とは偉い違いだ。蟹娘は、『姉』とか言っていたが……


 チラリと活造りになっているヴァルキノス・マファット嬢に眼窩を向ける。


「………………」


 先ほどまでピクピク動きながら喚いていたのに今は全く動いていない。


 赤い精気が感じられるから死んではいなようだが……


「はい? どうされましたオオナタ様? ……はい? ヴァルちゃん、何でこんなところで美味しそうな活造りになっているんですか? あなたは、邪神を、オオナタ様を監視……お迎えに行ったはずですよね」


 蝿魔人クイッタも大地に転がる哀れな妹に気づいたようだ。ただ口から紡がれる言葉に傷ついた妹を心配するものはなく。本当に『どうしてここに?』以外の感情は読み取れなかった。


「………………」


 そしてその言葉に対して蟹娘の反応は無い。死んだようにピクリとも動かない。


「はい!」


 ドス!


「ギエェェェェェェェェェーーーーーーーーー!!」


 へ?


 蝿魔人の手が微かに揺れると蟹娘の腹にナイフが、以前会ったとき蝿魔人が持っていた巨大ナイフが突き刺さっていた。


「はい。もう一度聞きますね。なんでそんな姿で(・・・・)魔人化(デモンフォーム)してここにいるんですか?」


「マ、待つにぃ、お、お…………」


 ザク!


「ギャニィィィィィィィィィッ!?」


「はい。報告は簡潔且つ明瞭にしてくださいね」


「チ、チガウンダニィ」


 ドス!


「!! シャーーーーーーーーーーーーー!!」


「は~い。これで二度目ですよ。報告は簡潔且つ明瞭に」


 ヴァルキノス嬢の体に次々とナイフにフォーク、スプーンが生えていく。


 ……うん。姉妹というのは嘘だな。


 質問や折檻と言うにはかなり凄惨な光景を前に勝手に結論付けた。


「ギェェェェェェェェーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」


「はい。一から十まで早く話してくださいね」


 蝿と蟹……二人の心が凍てつく拷問(だんらん)が始まる。

順調に交渉が終了したので……問題起こした蟹娘に対する後始末。


なぜかクイッタと大鉈は話がこじれないです。


ちなみに別ルートでは、最初からクイッタさんが登場。

副業がばれたクイッタさんが魔族達の口封じしようとするのを止める(ブレーキ)話でした。

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