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骸骨の夢  作者: 読歩人
第十章 魔王編
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不幸な魔人

悪逆非道、外道邪悪の存在に出会うことは不幸です。

 今日はついている。骨生(じんせい)で二番目についている日かもしれない。

 ……ちなみに一番についていた日は、ジフ様に創造していただいた日だ。


 なにせジフ様の手掛かり(・・・・)手を掛けた(・・・・・)のだから。


「は、放すに、にぃ! この変態! 死に損ない!! 馬鹿!! 脳無し!!」


【クックックックックックッケッケッケッケッケッ……】


 右腕に掴んだ手掛かり――幼女から罵られつつも私は溢れ出る喜悦に笑いを漏らす。自らの幸運と冗談の面白さ故だ。


【先ほどは、馬鹿なだけだと言ったが訂正しよう。間違いなくオオナタは変態だ……コメディ】


 頭蓋骨にお花畑が咲いている私には、今の状況が第三者(ゼミノール)達からどう見られるのかなんて微塵も考えない。


 手の中でもがく魔族の幼女からジフ様のことを聞き出す……この身に宿る全ての力を使って!


 しかし私は紳士だ。まずは丁寧に……


 ギュッ!


「この骨ヤギュニィっ!」


【知っていることを全て話してください】


 潰さない程度の力で手掛かり(ようじょ)を握り締めながら尋問を開始する。


 自慢ではないが、生前の私は『落しの大鉈』と呼ばれるほど尋問が上手かった。

 どんなゴロツキも私が愛用の大鉈を抜いて丁寧に話しかけると、まるで殺人狂に出会った善良な一般市民のように怯え、有ること無いこと何でも話し始めるのだ。

 おやっさんも『血の染み込んだその鉈とお前の笑顔は怖すぎる』と褒めてくれた。


「だぇがお前なんかに、はなすかにぃ……」


 しかし魔族のお嬢さんには効果が無いようだ。歯を食いしばりながらも眼光は鋭いまま私を睨み付けてくる。

 もしかしたら愛用の大鉈が無いせいだろうか。


 おのれ勇者め! こんな時さえ私の邪魔をするのか!!


 心の中で愛用の大鉈を微塵切りにしたあの勇者へ毒づく。


 さて次はどうしよう? 紳士的に言葉で聞く以外は……体に効くしかないのだが。


「こっの!! なんて硬いんだにぃ!」


 私は右手の中で鋏を突き立ててくる幼女――猿魔大王の腕には傷一つ無い――を見つめ、その小ささを再確認する。


 はぁーーー……拷問術も知っているが、こんな年端も行かない幼い子供にするわけにはいかない。だがジフ様のためなら致し方ないか……


 私は心を悪魔にして決断する。


 おやっさん! 先輩! 軽蔑するならするがいい! 私はジフ様のため社会道徳をかなぐり捨てて、あらゆる悪行、非道を行う覚悟がある!! ……というかジフ様のためならあらゆる外道、邪道も許される!!

 そうなのだ、これは『超ジフ様的処置』!

 私はジフ様のため、一人の可愛い幼女をあえて、あえて拷問にかけるのだ。

 あー! 心が痛む心が痛む。どんな拷問をしようかなぁ?

 くすぐり? 目隠し? それとも×××?

 この大鉈、入魂の拷問術を今ここに!


 そんな風に私が精神的苦痛と戦いながらどんなことをしようか悩んでいると……


「こうなりゃ本気で殺すにぃ! ぎぇーーーーーー!!」


 蟹の腕を振り上げた幼女が何か始めた。

 叫び声とともにその小さな体が光に包まれたのだ。


【なにっ!?】


 驚く私を無視して幼女の変化は続く。

 光の中、体のシルエットのみを残し着ていた服が解ける。

 そして蟹や海老のような殻が足、手、胸、腰と順番に装着されていく。

 最後に禍々しい蝙蝠の翼が背中と腰から二対広がった。


「魔人軍団将軍見習い、ヴァキノス・マファット。夜の闇よりただいま参上にぃ!!」


 蟹と蝙蝠を足して二で割ったような凶悪な面構えになった幼女――ヴァキノス嬢は、夕日に照らされながら蟹バサミに変じた両手を掲げ堂々と言い放った。


 ここは『夜じゃなくて黄昏ですよ?』とツッコムべきか? 無粋かな? 


【これは面妖な。誰かこの少女の一族を知っているか……同志達?】

化け蟹(カルキノス)の変種ではないかな? 言葉を話す蟹など他にはいないだろう】

吸血鬼(ヴァンパイア)ニオイスル】

合成獣(キマイラ)?】


 私の体――『呪われた遺物』達が幼女の変身、そう変身に驚きその正体を見極めようと一斉に会話しだした。

 重要なのは、そこではないのに……


「ぎぇっぎぇっぎぇっ!! この変態骨! 本気になったワタシの力は岩を切り裂き、大地を火の海に変えるにぃっ!」


 蟹蝙蝠の怪物は周辺の焼け野原を示す。……今更気づいたが焦げて朽ちた骨がそこら中に散らばっていた。


 ふむふむなるほど。


 そう……重要なのは、この怪物(・・)は、ジフ様のことを大人しく話す気は無く武力を持って抵抗する意思があるということだ。


 私は背中の扇を広げ、幸運と不運を支配する両腕に精気を集めた。


 相手が子供でなければ、手加減の必要は無い。罪悪感の欠片さえなく色々できる。


「軟弱な人間の国を滅ぼしたぐらいでいい気にぃなるにぃ! ワタシはお前をさっさと倒してサーカスを見にぃ……」


 元は幼女だったことについては……知らない気づかない~見なかったことにしよう!!


 夕日に照らされ邪神(へんたい)魔人(ようじょ)が再び激突する。

不幸が雪達磨式に増えていくからです。


ちなみに幼女が変身しなかった場合は……ご想像にお任せします。

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