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骸骨の夢  作者: 読歩人
第十章 魔王編
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不幸な言葉

たった一言が運命を変えることがあります。

【ガガャアァァァァァァーーーーーー!!】


 魔族の幼女が吐き出した唾……もとい燃える泡により私の全身は炎に包まれた。


「これまで沢山の死に損ない(アンデッド)を焼き殺したワタシの灼熱の泡(バブリーバーニング)を味わうにぃ。変態」


 何より心外なことに変態と誤解されて。


【ロッガイダァァァァァァ!!】


 叫ぶ私を眺めながら今にも笑い出しそうな雰囲気で炎越しに幼女が問いかけてくる。


 はぁあ。味ですか?


 燃える泡に対する味の感想を求められた私は、とりあえず火達磨のまま口に泡を……下顎が無いので前歯に押し付ける。


 モシャモシャ……ふむ。味は感じないがふわふわした食感とパチパチ骨を(あぶ)るのがこれまで経験したことのない不思議な刺激……癖になりそうな味だ。


「おいっ! 変態! 何、ワタシの泡を喰ってるんだにぃ!?」


 味見を頼んできた魔族の子供が再び怒り始めた。


 いや、あなたが味わえと。


「こ、こんな変態死に損ない(アンデッド)がいるにぃんて……それになんで燃え尽きにぃい!? さっさと燃え尽きないとモフモフダンスが終わっちゃうにぃぃぃ!!」


 なんか更に誤解が深まっている。


 おまけに理不尽にも燃えないことまで怒られてる。


 私は燃え盛る泡を全身に纏ったままやれやれという風に両手と頭を振る。


 あの(・・)アイスなんとか要塞の業火を潜り抜けた私がこれぐらいの炎で焼けるわけないだろうに。

 せいぜい熱した油をかけられたぐらいの熱さだ。私にとっては一時的な痛みこそあるが、致命傷には程遠い。

 

 むしろ変態呼ばわりのほうが傷つく。主に私の硝子の心(テンダーハート)が。


 コメディ、慰めて。


 長年――約一ヶ月半ぐらい――の相棒に心を癒してもらおう。


「シャシャ」【ヘンタイ】


 賢蛇の一言。


【………………ハ?】


「ジャシャシャ」【ドヘンタイ】


【………………へ?】


「ジャシャシャシャ」【ドヘンタイスアナ】


 心がひび割れる音が聞こえる。


 誰の心?


 大鉈(わたし)の心。


 真っ二つにされたジフ様を見たときに匹敵する精神的攻撃が私を襲った。


 端的に表現すると痛恨の一撃。


【ゴカイガアアアァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーー!!】


 竜さえ凌駕する異形の邪神が大地に倒れこんだ。


「な、なんにぃ! 急にぃ?」


 自慢の炎に包まれながらも平然としていた死に損ない(アンデッド)が、突然断末魔の叫びとともに崩れ落ちたことに魔族の少女も面食らっている。

 ポカンと開いた口からは鋭い犬歯が丸見えだ。


 まぁ、そんな些細なことは心底どうでもいい。

 今重要なのは、コメディの誤解を……変態認定をどのようにして取り消すかである。


 まずは……まずは…………まずは………………なんも思いつかない。

 いや! 諦めるな私! 頑張れ私! 負けるんじゃない私! たぶん何とか成る私!


【何かブツブツ呟いているが? 彼は変態ではなく馬鹿なだけではないのかね……コメディ?】


「シャー」【知らない】


【君達は、仲が良いようで悪いようで、それでいて何故か一体としてある。とても不思議だよ……コメディ、オオナタ】


 微かに会話が伝わるが混乱状態の私を覚醒させることは……


「よっし! これにて任務完了にぃ!」


 誰にも不可能……


「ジフサマ大サーカスの夜の部に間に合うにぃ」


 ……ジ・フ・サ・マ……


 ジフ様!?


 グワッバ!!


 幼女が口にした究極にして至高の存在の名に、大地と抱擁していた体を起こす。


「にぃ!!」


 そして神速で伸ばした腕は、いつの間にか蟹腕の少女を握り締めていた。


【お嬢ちゃん、お話聞かせて?】


 私はとてもとても紳士的に尋ねる。


 ジフ様について……

それが幸運か不幸かは口にしないと分かりません。

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