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骸骨の夢  作者: 読歩人
第九章 はぐれ骸骨放浪編
158/223

骸骨も歩けば……

棒ではありません。

 コン!


【痛!】


 死霊軍団の情報漏洩問題について考えることを一時保留――無期延期とも言う――にした私は、ジフ様の下に馳せ参じるため王城を後にした……一歩だけ。

 そして現在、石をぶつけられている。


「シスターを返せ!」


 コツン!!


「ロブを返せ!」


 ゴツン!!!


「ハーマンを返せ!」


 ドツン!!!!


 それも連続で……最後のは石というより岩だ。


 一体なんなのだ?


【どこの誰だ? 石だって当たり所が悪ければ死ぬんだぞ】


 そう。石や岩は、立派な武器だ。

 昔、街に死に損ない(アンデッド)がやってきた時は、死体兵(ゾンビ)骸骨兵(スケルトン)目掛けて石を投げたものだ。

 はて? ……なんで私は(・・・・・)そんなことをしたんだ・・・・・・・・・・・・

 味方に向かって石を投げるなんて……


「フィーネを返せっ!!」


 ドゴツン!!


【あだっ!?】


 自らの矛盾に気づきかけた私の思考を投石が邪魔した。


【危ないって言ってるだろう!!】


 そして私は、犯人への怒りによってその疑問さえ記憶に残すことなく忘れた。


「シャー」【あそこ】


 コメディが首で示すは、私の傍ら崩れた城門の瓦礫の上、そこに立つ……小さな人影。


「バンを返せっ!!」


 私――魔族の亡骸を繋ぎ合わせた異形の巨人を恐れることなく石を投げつけるその者は、一人の幼い子供だった。

 一見人間のように見えるが、その背には黒い羽毛に包まれた一対の翼がある。


 鳥人(バードマン)の子供?


 鳥人(バードマン)――人間に似た体と鳥の翼を持つ魔族である。


 また名誉人間か? だが戦士じゃなさそうだし……悪童なら殴るぐらいでいいか……?


「駄目! レイヴン!」


 私が街で経験――兵役で見回りをさせられてた――を元に猿の右腕を握り締めていると何者かが少年に飛びついた。


「はなせ! みんなの仇をっ!」


「馬鹿! あなたまで殺されるわよ!」


「邪魔すんな!」


 少年を押し倒しその手から岩――あの子供どんな腕力してるのだ?――を奪ったのはこれまた背中に翼のある女の鳥人(バードマン)だった。

 白い翼と服が汚れるのも構わず少年を止めようとしている。


 ふむ? 状況が良く分からないが先ずは誤解を解いておこうか。


【御嬢さん、石を投げられたぐらいで殺したりはしませんよ】


「は、なせ! このっ! なんで! なんで誰もあの化け物を倒そうとしないんだよ!」


「勝てるわけ無いでしょ! あんな怪物! あの(・・)人間達だって皆殺しにされたのよ!」


 ……無視された。


 …………しかも子供に化け物呼ばわり。


 ………………おまけに御嬢さん――若くて美人さんだった――にも『怪物』言われた。


 ……………………実家に帰ろうかな?


「シャシャシャーシャ」【そもそも念話が通じない】


 おぉぉぉ! コメディ、慰めてくれるのか? やっぱりいい子だなぁぁぁぁぁぁ!!


「シャ……」【バカ……】


 あっ……コメディにまでそっぽを向かれた!!? コメディにまで嫌われたら私はどうすれば!?


 私が一人で絶望の淵に突っ走っている隣では、少年と女性の話し合い……というか殴り合いが続いていた。


 いや、一方だけが殴ってるから違うのか?


「あんたが!」


「ゴッ!」


 風のような左が少年の顎を削り。


「馬鹿な事をするとぉぉぉぉぉぉ!!!!」


「モォ!?」


 右の掌底が鳩尾を貫く。


「本当の皆殺しにぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」


 女は空に舞い上がり。白翼が太陽を隠す。


「な! る! で! しょ! う!」


「ラッ! レッ! ロッ! ハッ! コッ!」


 み、見えた! 一瞬で両腕の手刀と両足の蹴りそして頭突き……計五発の空中殺法!!


 ……あの御嬢さん……強い!!


「ゲェスラァァァァァァ……」


 黒い羽を撒き散らし少年が地に伏した。

 胸から提げたひしゃげた聖印が、彼の受けた攻撃の凄まじさを物語る。


 ……私に石を投げたとはいえ明らかにやり過ぎだと思う。

 そんなあまりの残虐行為を前に無い頬を引きつらせていると。


 カッカッカッ……


 件の暴行魔――白鳥の御嬢様が近づいてくる。


 な、なんだ! 私は怪物じゃないぞ! 善良な一般骸骨兵(スケルトン)だぞ! あなた達の敵じゃないですよ!!


 しかし、少しだけ引き気味の私に対する彼女の行動は、殴る蹴るの暴行ではなく……


「お許しください! 邪神様! この子には二度と無礼な真似はさせません!」


 驚いたことに深く頭をさげ許しを請うことだったのだ。


【はい……? なぜ謝られているのでしょうか? それとその子、痙攣してますよ?】


 思わず丁寧語で応える私にコメディが更なる異常事態を告げる。


「シャシャー」【スアナあれ】


 あれ?


 反射的に振り向いた私の視界に映るのは……


「お許しを!!」「解放神よ! 祖霊の導き手よ!」「ぐくぅぅぅっ…………」「シニタクナイ! シニタクナイ!」「あぁぁぁぁぁぁ!!」「よくも……ワシの商売を……」


 恐怖、歓喜、苦渋、懇願、狂気、憎悪……その顔に様々な感情を浮かべながら私を見る魔族群集だった。

石と魔族に当たりました。


アンスター壊滅……これだけのことをやってタダですむわけないです。


これも結果(責任ともいいます)の一つです。

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