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骸骨の夢  作者: 読歩人
第九章 はぐれ骸骨放浪編
156/223

滅びの気配

何が滅びるか? 当然……

【ジフ様!】「じふさまぁ~~!」『ジブザマ』「よよよよよ……」【ジフ様何処?】


 王都中の……いや、アンスター中の死に損ない(アンデッド)ジフ様(きぼう)を失い、夢破れ、地に伏していく。


「しゃー! ジャ! シャ!」【起きろ! バカ! 働け!】


 少し訂正。コメディを除いた死に損ない(アンデッド)達が、だ。

 ただ一体だけ絶望することなく、アンスター各地でサボタージュ――破壊活動ではなく怠ける方――を始めた魂喰兵(ワイト)に働くよう命令している。


 その勇ましい姿は心強いが……今の私達に勤労意欲を湧かすには、ジフ様か死体獣踊子隊ゾンビビーストダンサーズが必要だと伝えるべきだろうか? 怒られるかな?


【え? なんで倒れるの? これは……神の奇跡?】


 ……もう一度訂正。生首死霊魔術師(ネクロマンサー)のマリエル様も除いた死に損ない(アンデッド)達が、だ。

 昨晩アンスター国王を倒してから、『アンスターが、アンスターが……』と呟き続けていた生首死霊魔術師(ネクロマンサー)様が驚いている。

 

 マリエル様、倒れているのはジフ様の行方が分からないからで、神の奇跡なんていうチンケなもののせいじゃありませんよ。

 後、何故そんなに嬉しそうなんですか?


 そんなコメディとマリエル様(れいがい)を置いて、事態は転がり始める。


【こんな世界間違ってる!!! ……消すか? ……世界】


 ちょっとだけ物騒な方向へ。


「いい……それ」

『ジフ様のいない世界に意味は無い!』

【同意】

『了解』

『全てを無に』

『滅びこそが美しい』

『イッツ! ショータァーーーーーーーィム!!』


 ある一体の魂喰兵(ワイト)の叫びにそれまで嘆き地に伏していた死に損ない(アンデッド)達が一体、また一体と立ち上がっていく。

 世界を混沌の渦に沈め星界の塵芥にせんと……


 短絡的過ぎるぞ! 狂ったか皆!! ……でも……それ……いいかも? ジフ様のいない世界に意味は無いし。全テヲ無ニ……ウツクシイホロビヲ……


「ジャーーーーーーーーー!!!」【バカーーーーーーーーー!!!】


 どうシタんダ? コメディ……一日で国一つを滅ぼせタんダ。世界ダッテ数週間もあれば……


【アンスターだけじゃなく世界の危機!!!】


 マリエル様まデ血相を変えテ……顔が青く光っテますよ?


【カリダ!!】【次の獲物か?】【この世に”狩猟の平原”を成すというのか……オオナタ】【こいつら狂ってる……】【それを君が言うかね?】


 私の体である『呪われた遺物』達も半分ぐらいは同意してくれている。


【よし! 滅ぼそう世界を!! それをもってジフ様への忠誠を示そうではないか!!!】


 そんな感じで私は古の伝説に語られる邪神ぽく世界滅亡を心に決めた。

 ちょっぴりいい気分だ……できることならジフ様にもこの気分を味わっていただきたかった。


「シャー! シャー!! シャシャー!!!」【落ち着け! 冷静に!! 正気に戻れ!!!】


 ハッハッハッ……こめでぃ、ワタシはレイセイだよ? こめでぃコソ、オチツイテ?


【何としても止めなさい蛇! こいつら狂ってるわ!!】


 まりえるサマモ、モチツイテクダサイ? ……オチツイテクダサイ?


「シャァァァァァァーーー!!!」【待てぇぇぇェェェーーー!!!】


 こめでぃ、チョットマッテテ……せかいヲホロボシタラキイテアゲル。


「ジャシャシャ! ジャシャァァァーーー!!」【ジフを見つける! 待てぇぇぇェェェーーーー!!】


 ……ジフ様を見つける?


 コメディのかなり必死な叫びにやっと私のどこかが少しだけ――噴火から山火事ぐらい――冷める。


【全軍停止】


 コメディの言葉を確かめるべく私は邪神ぽく仲間に指示を送った。


『了解』【全軍停止】「全軍停止」「ポッポー」【全軍停止】【停止!】「テイシ」


 そして尋ねる。


【ジフ様……見つける? ドウヤッテ? こめでぃ?】


「シャーシャ……」【あーそれは……】


 非常に珍しいことに賢蛇は、空を見上げ、地を見下ろし……何か悩んでいる。


【……全軍】


 なかなか教えてくれないのでやっぱり世界を……


「ジャ! ジャジャ!!」【地図! 地図じゃ!!】


 地図?


【ちょっと! 蛇!! 個人の居場所が地図に載るわけないでしょ!!】


 なるほど!


「シャ! シャー!! シャーシャジャ!!!」【黙れ! 小娘!! スアナはバカ!!!】


 流石はコメディ! 頭がいい!!


 コメディからジフ様に会える方法を教えてもらった私は有頂天になる。

 ……当然、マリエル様とコメディの会話なんか気にしちゃいない。


【地図か!!】「なるほど!!」『流石コメディ』【私の嫁!!】「ジフ様!!」「地図どこ?」【ここある】


 コメディの素晴らしい助言は、他の者にも伝わる。

 周囲のジフ様の狂信者(なかま)もコメディを讃え、”ジフ様の地図”を探し始めた。


「ここの地図、アンスターのだけ」【大陸地図あった】『ザペン自負寺院? 違う』【スチナか?】


 なにせ人数は、いくらでもいる。あっという間に見つかるだろう。


【……蛇、アンスター中の地図を探し終わるのにどれくらい掛かると思う?】


「シャーシャシャ……シャシャシャー……」【これは時間稼ぎ……この間に別の手を……】


「見つけたーーー!!!」


 マリエル様とコメディのヒソヒソ話を遮るように近くにいた逆首の魂喰兵(ワイト)が一枚の地図を掲げた。


 おぉぉ早速見つかったようだ!!


【へ?】

「シャ?」【何故?】


 『何故』って? なんでコメディが驚いているのだ?


 私は、提案者が驚いていることを訝しく思いつつ体を地図に近づけた。

 その地図には大陸北部――タリア王国と極地――が緻密に描かれており、ある一点に……


『十二月二十日 第七席ジフ・ジーン及び第九席アーネスト・エンド 公演中』


 確かにそう記載されていた。

自暴自棄になった人間(人骨?)は何をするか分かりません。


注意しましょう。

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