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骸骨の夢  作者: 読歩人
第八章 御返し編
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コメディの罠

落とし穴、毒矢、転がる岩……


コメディの準備したのは一体?

 襲いかかる重い轟きに腰骨が震える。


 そう。震えるだけ(・・・・・)だ。なぜなら……


「な、なんだい!?」


 魔婆(ハグ)シスムの魔術は、まだ放たれておらず。


「オォォォ!?」


 白の鉄巨人は、大剣――斬艦刀(ザンバー)とか叫んでた――の構えを崩し。


「何事だ!?」「爆発だ!? ……あっちだ!」「なっ!? し、城がっ……」


 仮名”公認勇者になりたい人々”は、珍妙な姿勢――両手を交差させたり、腰で構えたり――のまま後ろを振り向いており。それなりの溜めていた精気が霧散していく。


【見つけたぁぁぁ! 端かぁぁぁぁぁぁらぁっ!! みなあぁぁぁぁぁぁご、ろ、しぃぃぃぃぃぃ!!】


 唯一幽霊少女のレミ嬢だけは、豪胆にも箒の柄を口元に寄せてノリノリで子守唄(?)を歌っていた。

 ……もしかしたら轟音に気づいていないだけかもしれないが。

 しかし、とんでもない子守唄だ。歌声にのって死の呪文(デススペル)がばら撒かれている……無差別に。

 もっとも死に損ない(アンデッド)の私達には関係な、あ……魔婆(ハグ)に当たった。


 とにかく王都を揺るがしたのは、人間達の攻撃ではない。

 では何かというと……


 私は、『殺せ!』右手で眼前の鉄巨人から武器を奪い取りながら――隙だらけで非常に楽だった――人間達がやってきた方向に一瞬だけ視線を送る。


 数えるのも面倒なほどの建物を超えたさらに先で、白い尖塔の群が黒煙に包まれていた。

 ただの煙ではない、赤い炎が見え隠れするそれは、破壊の証だ。

 アンスター王国を統べる者の住まう場所……王城王星(ザ・スター)が、王都の象徴が、亡者の侵入を阻んでいた絶対の聖域が――恐らく投石器(カタパルト)などの攻城兵器で城壁を破られたのだろう――何者かによって蹂躙されている。


 何者か? いや、たぶん……


「なガア!?」「へギぃ!?」「ぶグウゥゥゥ!?」「けゲエッ!!」「ッゴォォォォォォ……」


 『殺せ!』竜さえ屠れそうな鋼の塊で仮装集団――戦場で敵から顔逸らす馬鹿――を『殺せ』石畳ごと横薙ぎに斬りつつ、私の右肩でとぐろを巻いている犯人(犯蛇?)に頭蓋骨を向けた。

 肉片が舞い、魂が貪られる中、相棒(コメディ)は応じる。


「シャ、シャー」【城、落ちる】


 やっぱり! コメディが命令したのか……あっ、余所見してた癖に三人も避けたのか。やるな”公認勇者になりたい人々”。


 私は、『殺せ!』意識することなく自然に『殺せ!』人間達に刃を振るう……『殺せ!』冷静な狂気『殺せ!』とでも言うべきか。


 対する人間達は、自分達の拠点が襲われ、さらに仲間のほとんどを一瞬で失うという事態に、恐怖さえ感じることができない思考の空白に陥っていた。


 ……早い話が、『殺せ!』戦意の『殺せ!』喪失だ『殺せ!』『殺せ!』『殺せ!』『殺せ!』『殺せ!』。


 狂える髑髏は、座り込み、背を向け逃げる者達に素早く止めを刺していく。


 それにしても……この斬艦刀(ザンバー)だったか? まあまあの使い勝手だ。形も鉈っぽいしこのまま貰おうかな。


斬艦刀(ザンバー)を返せぇぇぇ!! 僕が一番上手く使えるんだ。一番、一ビャッ!!??」


 『殺せ!』()持ち主が、真正面から突っ込んできたので、『殺せ!』裁判沙汰にならないよう始末しておく『殺せ!』。

 四角い鉄板を何枚も重ねたような分厚い刃は、赤と黄色で装飾された巨大な白兜を見事に吹き飛ばした。


【な……何が起こっている……コメディ】


「シャジャ」【仕上げ】


 頭部を無くした鉄巨人が崩れ落ちるのを眺めながら蛇骨の賢者は語る……戦況に追いつけず狼狽するゼミノール達のために。

 ……いや、私も完全には理解してないのだが……まぁ、殺す(やる)こと殺し(やっ)といたし問題ないだろう。


「シャシャー、シャーシャー」【強い敵(・・・)を、ここに集めた(・・・)


 そんなためになる(・・・・・)話を頭蓋骨の右から左に流しつつ、私は迅速に右側の建物を粉砕する。


「レェミィィッィィィ!? 死に損ない(アンデッド)に効く呪文ォォォォォォアァァァァァァ!??」


 よし! やった!!


 青褪めた幽霊少女に怒鳴っていた一瞬の隙を突き、最悪の敵――シスムを仕留めといたのだ。

 死の呪文(デススペル)の直撃は平気でも、瓦礫に埋もれては流石に動けないだろう。


 安らかに眠れ魔婆(ハグ)よ。


「シャーシャ、シャーシャー」【最狂の罠(スアナ)に、誘き寄せた】


 賢蛇の言葉が終わる時、王城は魂喰兵(ワイト)の軍団が席巻し……


【御主人様!! 大丈夫ですか!? 鶏はいいんですかぁ?】

「………」

「さ、最期のシューティン、グ」

「に、逃げロォォォーー……ガック!?」


 星の栄光を背負う強者(つわもの)は地に伏し……


【一瞬とはいわんが、勇者を二呼吸でか!! 二流とはいえ十は超えてたぞ!?】

【カッタッ! カッタッ!! エモノヲカッタ!!!】

【御主、何者だ? 狂気の戦士(バーサーカー)か?】

【魂を喰らうモノ、神の畑を荒らすモノ、汝の名は……】


 復讐者は狩人を見つけ……


【うむ! 超大鉈と名づけよう!!】


 最狂(わたし)は、新しい武器を手にはしゃぎ……


「ジャー」【バカ】


 賢蛇は、再び溜め息をついた。

人食い宝箱にFF5のオ○ガ……こいつらが一番性質の悪い罠だと思うのは私だけでしょうか?


コメディの犠牲者……王城と精鋭戦力

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