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骸骨の夢  作者: 読歩人
第八章 御返し編
133/223

真昼の昼寝

しかし死者は眠りません。


寝るのは誰でしょう

 ザッ! ザッ! ザッ! ザッ! ザッ! ザッ!


 魔術師を含む中隊規模の軍隊か……『魔術師は、真っ先に殺せ! 殺せ!』了解です。船長ガデム様。


 私は宙に浮きながら見た敵戦力――こちらに向かって進軍する人間達の脅威を正しく理解する。


 それにしても……魔術師か。魔術師の放つ魔術は凶悪だ。

 昔、火炎弾呪文(ファイヤーボール)が一発で森を火の海にするのを見たことがある。


 ザッ! ザッ! ザッ! ザッ! ザッ! ザッ!


【魔術師は危険】【最優先目標】【シキカンハ?】【第二目標】【同意】【同じく】【了解】


 骸骨の花嫁や竜骨の仲間達も同じ結論のようだ。

 さらに青い光が飛び交い、どう戦うかに話は移っていく。


【正面は危険】【逃げる?】【……隠れて背後から】【囮は?】【駄目、命は大事に】【ジフ様!】


 なるほど……一度引いて背後から襲い掛かる。

 単純かつ分かりやすい戦い方だ。

 では、私も一端隠れて……


「止まれ!」


 ザッ!


 だが私達の後退の前に澄んだ声が響き渡り、人間の軍隊は動きを止めた。

 声を発したのは、集団の先頭にて騎乗する男――恐らく指揮官だろう。

 停止した場所は、まだかなりの距離がある。

 離れすぎていて大雑把な装備が確認できる程度だ。


 これだけ距離があれば、魔術を撃たれても近くの屋敷に余裕で逃げれるな。


「展開!」


 再び響く男の声に陽光に輝く装備を揺らしながら人間達が道の幅いっぱいに並ぶ。

 その兵士達の姿に私は違和感を覚えた。


 なんだ……あれは?


 私達と向かい合うように広がる兵士達がなにか(・・・)おかしいのだ。

 まず服装、全員紺色の軍服なのだが……やけに派手だ。

 肩や襟、帽子に金や銀の彫金がある。

 将軍や指揮官ならともかく、普通の兵(・・・・)はあんなものは着けない。


「構え!」


 次に兵士達の構える得物も異常だ。

 剣でも、槍でもないのだ。

 日の光に眩く煌くそれは、人の頭が入りそうな長い筒、巨大な金属の樽や弦が何本もある弓など。

 そんな見たこともない武器……いや、どこかで見たような気もしないでもない。

 あれは……


「攻撃開始!」


 ちっ!


 眺めている内に敵に先手を取られた。

 うっかり、逃げる時期を失った同胞達とともに身構える。

 そんな私達に人間達の攻撃が襲い掛かった。

  

 ララレ~ララララ! ラララ~ララララ! ラァ~ラァ~! ララララァ~!


 まるで死体獣踊子隊ゾンビビーストダンサーズが奏でそうな心地よい音楽が!


 …………何のつもりだ? 何かの罠か?


 ララララァァァ~~~! ララララァ~~~! ラララララァ~~~!


 人間達の意図が理解できず、私達が呆然としていると敵の指揮官がさらに指示を出す。


「魔術師! 支援開始!」


 魔術師――最大の脅威に私達は今度こそ後退をしようとした。

 しかし、私達は逃げることなくその場で固まってしまう。


「まかせて!」「了解や!」「はい、コーチ」「参ります」


 ……魔術師が兵士達の前(・・・・・)に出てきたからだ。

 魔術師が最前列に立ったため背後から襲うという作戦が破綻したせいもあるが……その四人の魔術師の格好がそれ以上の驚きをもたらした。


「さぁ! 私達の初戦よ!」


 短い髪の猫耳少女が赤い杖をクルクル振るう。


「気合入れていくでっ!」


 翼を羽ばたかせ鳥の乙女が杖を口元に寄せる。


「ちょっと! 私が真ん中よ!」 


 ブンブンと杖を振り回し蛇女が蛇身をくねらせ。


「天国に御送りします」


 刃のような瞳で人狼(ウェアウルフ)の姫が私達を見つめる。


 四人が四人とも魔族――少なくとも純粋な人間じゃない――なのも十分に驚くべきことだが……全員、魔術師の外套(ローブ)が薄く透けてる。


 ついでにフリルと言うのか。フリフリもたくさん。


「「「「私達の歌声で!」」」」


 しかも歌いだした。曲と合っていてなかなか。


「「「「天国に逝かせて上げる!」」」」


 さらに踊りだした。パチリと片目を一瞬だけ閉じる。


 ノリノリのようだが……これどないしろと……


【いい歌】【敵?】【けど魔族……】【これ攻撃?】【眠い】【グースカ】


 仲間達も混乱している。


 しかし、この歌と曲……とても眠気を誘う。

 歌も上手いし……ゆっくり聴いてたらそれだけで天国にいけそうだ。

 『逃げろ! 殺せ! 逃げろ! 殺せ!』……船長ガデム様……五月蝿いです。歌が聞こえません。

 魂が抜けていくような美しい声だ……あ、眼下に頭蓋骨(わたし)が見える。


対死に損ない特務部隊アンチアンデッドスペシャルフォース鎮魂の歌姫(レクイエム)……最新鋭楽器と呪歌の連携、御披露目前に実戦で成功か。

 御偉方もこれで広報宣伝(みせもの)部隊という考えを改めてくれればいいが……」


 昇天していく私にそんな指揮官の呟きが聞こえた。

死に損ないが寝るとき……それは鎮魂の歌が誘う天への導き。


昼の感染者……零


むしろマイナス?

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