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「死霊騎士バジーナ様、どうぞこちらです。狭いので御気をつけください」
「ああ。大丈夫だ。問題ない」
私は、ジフ様と死霊騎士、ついでに顎割れ死体騎士と共に”骸骨洞窟”の階段を下りている。
ジフ様と死霊騎士の問答は、ジフ様が死霊騎士に縋りつき、馬上から引きずり降ろすことによって終結した。
無論、ジフ様の勝利である。流石はジフ様、見事な技であった。
「それでジフ・ジーン殿、現在の戦力はどのぐらいで?」
「どうかジフと御呼びください。この先の部屋に整列させております。直接御覧頂ながら詳しく御説明致します」
「いや詳しい説明は、首席殿に・・・・・・」
「すぐに! すぐに済みます。私が新たに創造した骸骨兵をどうか御覧ください!」
ジフ様と死霊騎士が会話されてい内に階段が終わる。ジフ様は、部屋に入ると同時に部屋の中央を手で示した。
死体兎&死体栗鼠達が踊るその場所を!!!
「・・・・・・」
沈黙するジフ様。
「・・・・・・」
沈黙する死霊騎士。
「・・・・・・」
今回は、流石に沈黙する顎割れ死体騎士。
(・・・・・・)
もともと喋れない私。
四者の沈黙を伴奏に、整列した死体兵、骸骨兵を背景にした死体兎&死体栗鼠達の踊りは続く。
ジャンプ! ステップ!! スピン! ダブルスピン!! トリプルスピン!!!
優雅にして爆発的、滑らかにして過激、彼らの踊りに賭ける情熱が私の魂を削る。そうまるで、狼の舌で背骨を舐められるような気持ち良さと恐怖がじわじわと肋骨を満たす。
「ジャー」
おっと。どうしたコメディ?出番がないので寂しいのか?
コメディの声にジフ様が、我に返る。
「お前達!? 何をしている! 踊りをやめろ!! ・・・・・・よし! それでいい。」
叫ぶように死体兎&死体栗鼠達の踊りをやめさせた後、ジフ様は死霊騎士に視線を向ける。
「バジーナ様、違うのです! 新しい骸骨兵はあれではありません。その後ろの・・・・・・」
「・・・・・・可愛い」
「ハッ?」
死霊騎士の呟きに、ジフ様が声を漏らす。
「ん? ・・・・・・な、何でもない!? ゴホン! それよりジフ殿。新しく創造したという骸骨兵について説明を聞きたいのだが?」
死霊騎士は、非常にわざとらしい咳をしてジフ様に説明を求める。
「え? ・・・・・・あ、はい! 喜んで御説明させていただきます。
最前列に並んでいる骸骨兵を御覧ください。あれが私が新たに創造した骸骨兵です。その名も蛇骨兵と言います!
通常の骸骨兵と異なり毒蛇の骨と組み合わせることにより、殺傷力が大きく向上しております。この二日間で熊二頭、巨大鼠一頭、大鼠九頭、狼十匹を仕留めています。さらにこちらの損害はまったくありません!
そして複数の蛇頭を持つ蛇骨兵は、頭蓋骨が外れても残りの頭蓋骨が代わりに体を動かします。これにより戦闘能力の喪失が防がれます。
如何ですか? この蛇骨兵の能力は! 最前線に投入すれば必ずや大きな成果を上げること間違いありません!」
ジフ様が、自信に満ちた声で蛇骨兵の説明を死霊騎士にする。死霊騎士は、その説明を聞き、しばし考え込むとジフ様に尋ねる。
「対人戦は?」
「ま、まだですが・・・・・・巨大鼠に勝利しています」
「毒牙の貫通力は? 鎧を貫けるか?」
「・・・隙間を狙えば恐らく」
「腕が蛇だと武器や盾が持てないが? 火矢呪文や聖水はどのように防ぐ?」
「えー。そ、それは・・・・・・」
「中央の最前線、例えば聖一教の総本山”聖都”戦線は、全身聖銀鎧の騎士団がいるし火の雨、聖なる雨の呪文が飛び交っている。言いにくいがこの蛇骨兵では、戦場に出ても一瞬で・・・・・・」
死霊騎士の言葉が続く。私は、地に伏し嘆くジフ様をどのように慰めるか考え始めた。
製品開発の始点は、御客様です。




