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骸骨の夢  作者: 読歩人
第七章 地獄編
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テスト

いざ、試食へ。

「コッケケケーーー!」【ジフ様ーーー!】


 己の復活を告げるその声の主は、同時にジフ様の名を世界に響かせる。


「どうや「コッケケケーーー!」【ジフ様ーーー!】」


 ニワちゃんが……


「なん「コッケケケーーー!」【ジフ様ーーー!】」


 ニワちゃんが立った!


「静「コッケケケーーー!」【ジフ様ーーー!】」


 こんなに嬉しいことは……


「コケコケ五月蝿いよ!」「コッ!?」


 ……ない! ニワちゃんがいない!?


 ニワちゃんが起き上がったことを喜んでいたら、その白い姿が視界から急に消えた。


 いや、消されたのだ!


「ふうぅーまったく!」


 目の前で一息ついている鬼婆――シスムによって!


 なぜ分かるかというと、皺だらけの指の先……長い爪が赤黒い液体――血――で濡れている。


【……御主人様、鶏さん潰してよかったんですか?】


 幽霊のレミ嬢が視線を下に向け――恐らく床にいる何かを見ているのだろう。


 何かって……何かって? 何かナ? ナニガツブシテラレテルノカナ?


「大丈夫だよ……魂喰兵(ワイト)なら、これぐらいじゃ壊れないさ。

 死体兵(ゾンビ)骸骨兵(スケルトン)と違って(かび)が本体だからね」


 ダイジョウブダヨ? ニワチャンはだいじょうぶダヨ? 大、丈夫……大丈夫なのか!?


 久々にあっちの世界に逝っていた意識をこの世に戻す。

 そして戻ってきた私の魂にそれが届いた。


「コケッ……コ」【ジフ……様】


 ニワちゃんの鳴き声が……そう、弱々しくも確かに逝きている。


【ニワちゃん!】

「コケ!」


 おぉぉぉ!


 呼びかけると応えてくれる。


【ニワちゃん!】

「コッケケ!」【ジフ様!】


 もう一度!


【ニワちゃん!!】

「コッケケ!」【ジフ様!】


 も一つおまけに!


【ニワちゃ~ん!】

「コッケケ!」【ジフ様!】


 ふむ! 返事が『ジフ様』だけとはなかなかやる! 素晴らしい忠誠心だ!! 流石はジフ様である!!!


 しかし、ニワちゃんとジフ様の絆を賛辞していた私は、一つの疑問を覚える。


 あれ? なぜニワちゃんがジフ様のことを知っているのだろう?


【鶏さんが元気ってことは……魂喰兵(ワイト)化したってことでいいんですか~?】


「そうだね……」


 おや? なんか幽霊(ゴースト)のレミ嬢と魔婆(ハグ)シスムが床に――ニワちゃんに目を向けている。


 私は些細な――いや、ジフ様とニワちゃんのことだから些細ではない――疑問を永久的に棚に上げて二人に注意を向ける。


「『ジフ様』……この骸骨が叫んでいた名前と同じだね。間違いなくこの骸骨の魂が憑いているよ」


(かび)骸骨さんの魂がこの鶏さんにですか~】


「コケケケェ~!」【ジフさまぁ~!】


 ニワちゃんが二人の会話を肯定するように鳴いている。


 しかし、私の魂がニワちゃんに憑くなんて……そんなことがあるのか?

 『死んだ人が、大事な人に憑く』という話なら何度か耳にしたことがあるのだが……


「もっとも、前に作った魂喰兵(ワイト)に比べて随分と中途半端みたいだね」


【中途半端って……どういうことですか~?】


「百年前は、死刑囚を使って始めの一体を作ったんだけど……魂喰兵(ワイト)になった死体は、全部が全部その死刑囚の全く同じ行動を取ったんだよ。

 始めの一体が叫んだら他の全部が叫ぶ、怒ったら他の全部が怒るって具合にね」


 そこで老婆が私に視線を向けて……


 ポカッ!


【痛っ!】


 殴られた。


「ほらね。この骸骨が叫んでも……(こっち)は鳴かないだろ」


【そうですね~】


 『ほらね』じゃない! いきなりなんなのだ!?


「コケケケェーーー!」【ジフ様ーーー!】


 心配してくれるのはニワちゃんだけだ。


 うん! いい子だ! コメディを思い出すな!


「さて、どうしようかね……」


【なにを悩んでいるんです?】


魂喰兵(ワイト)化が完全でないとすると洗……じゃなくて、禁則事項を教えても人間に襲い掛かるかもしれないだろ?

 よしんば言うことを聞くようになっても、この骸骨を壊したって増えた魂喰兵(ワイト)達が消滅しないかもしれない。

 時間も材料もないってのに……これじゃ使えないね……」


 シスムが黙って爪を噛んでいる。


 なんか雲行きが怪しいような……主に私の骨生の先が!


 老婆の口から指が離れる。


 ふぅ……


 そして溜め息が一つ。


「失敗だね」


 言葉と共に五指が血に染まった手が振り上げられ。


 待っ!?


 私が止める間もなく。


 シャッ!


 腕は振り下ろされた。

大蒜と吸血鬼は食い合わせが悪かったようです。

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