表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
骸骨の夢  作者: 読歩人
第七章 地獄編
114/223

明かされる真実

自分達が普通に知っていることでも、


知らない骨には大きな驚きを与えます。

 そこは狭い――しかし、明るく綺麗な部屋の中……


「一万八千、一万九千、二万、そして二万一千……さあ、確かめておくれ」


 ほつれだらけの服を着た老婆が、どこからともなく取り出した袋を次々と積み上げていく。


「それでは確認させていただきます」


 応じるのは、先ほどの部屋――オークションの行なわれていた部屋だ――から私を運んできた男である。

 男は、袋を開け中身を取り出す……数え切れないほどの金貨を。

 普通の人間なら触るどころか見ることさえ叶わぬ金貨(それ)を手にしながら、男の動きに躊躇や迷いはない。


「………………」


 無言で金貨を数枚見つめては次の袋を開けていく。


 そして金貨を銅貨にしたら何枚になるか考えることを諦めた私は、ただその現実離れした光景を眺めていた。


 すごいなーーーーーー金貨って本当に金色に光るんだなあぁぁぁーーーーーー……


 べ、別に金貨の輝きに目が眩んでいたわけではない。

 断じてない……ただあまりの輝きに惹きつけられて目が逸らせなくなっていただけだ。


「そういえばさっきの元気な男はどうしたんだい? 殺したりはしてないだろうね?」


 ん?


 金貨の擦れる音が響く中、老婆が突然口を開く。

 その口から発せられた言葉は、人の身を案じる言葉だった。


「申し訳ございませんでした。

 あの男は、まだこのシークレットオークションに参加を許されたばかりでして。

 少々勉強していただいてから丁寧に御帰りいただきます。

 今夜のような御無礼を働くことは今後ないでしょう」


「……シークレットオークションねぇ……非合法オークションの間違いだろう?

 それに参加者全員にこんな仮装をさせるからあんなことが起こるんだよ?」


「非合法とは……国にも御理解していただいてます。

 先日もスチナ王国の魔術具を王宮の使者が購入されました」


 男が手を止めずに話す内容に老婆は溜め息をつく。


「勇者が髑髏を売り、王族が他国の魔術具を買う……常識や誇りはどこに行ったのやらね」


 続くその言葉で私は重要なことに気がついた。


 私は何故売られているのだ!?

 しかも勇者が売る……あの(・・)勇者が私を売っただと!?

 私はあの(・・)勇者に負けた……負けたが……その後どうなったけ?


 確か床に転がり思考が怪しくなって……


~~~~~~~~~


 ジフ様の脱出を確認した私を炎が包み込む。


 カッカッカッ!


 朱に視界を奪われた私のそばに何者かが立つ。


 勇、者か?


 朦朧とする中、話し声が聞こえる。


『待って壊さないで』


『なぜだシシィ?』


『シシィって呼ぶな! エリザベートよ!

 てっ、そうじゃなくて……髑髏(それ)は高く売れるから壊さないで』


『売るだと!? ラリスの仇だぞ!?』


『これからその聖女様のために聖都に乗り込むつもりなんでしょう? ……特級大神官に喧嘩を売るなら、お金は多いほうがいいわ』


『しかし……』


『旅に必要なお金は自分達で稼ぐ……勇者の掟でしょう? それに死霊王の部屋にあった魔術具を全部焼いたのは勇者様よ』


『ぐっ』


『そういうわけで……ハンマ、髑髏(それ)拾っといて』


『承知』


 そして誰かに掴まれる頭蓋骨(わたし)


 メキッ!


【ギャァ!?】


 その凶悪な握力によって頭蓋骨が歪んだ私はあまりの痛みに気を失った。


~~~~~~~~~


 ……回想終了。


 なんということだ!?


 勇者達の会話を思い出した私は驚愕する。

 体があったら頭蓋骨を抱えて地に伏していただろう。


 し、知りたくなかった……あの(・・)勇者が……いや、金色の勇者に限らず、御伽噺の英雄達の真実を知ることになろうとは……





 世界を救う勇者の旅が自腹だったなんて!?





 伝説の英雄に金稼ぎと金勘定なんてさせるな!?


 魔王を倒す英雄なんだろ!?


 旅費ぐらい出せよ国!?


 何のための税だ!?


 それに勇者もだ!?


 いきなり売るか!?


 負けたから捕まるのは仕方が無い!!


 しかし私が負けたのは戦場である。つまりは捕虜だ!!!


 まず最初に身代金の交渉をしろ!!!


 私だっておやっさんにそれぐらい教えられたぞ!!!


 ジフ様ならいくらでも払ってくださるのに!!!!!


「金貨二万一千枚、確認させていただきました」


「じゃあ、貰っていくよ」


 国と勇者に正義の怒りをぶつけていた私は、そんな声とともにヒョイッと鞄の中に放り込まれた。


 勇者めぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!


 私の怨嗟の念が小さな闇を満たす。

軍隊養う金があるなら、勇者にも給料払えばいいのに……と思ったので。


とりあえず掟にしました。


理由? 偽勇者が横行したとか、担当役人が横領したとかじゃないですかね。


追記


登場人物のまとめを新版にしました。下記になります。

http://ncode.syosetu.com/n7396be/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ