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骸骨の夢  作者: 読歩人
第六章 人類反撃編
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反撃の終幕

本命の対決が決着します。


人類の反撃は今、終わりを迎えます。

「水晶・・・・・・」

【玉・・・・・?】


 揃って首を傾げる私達主従に水晶玉を取り出した人物――エタリキ神官が説明を続ける。


「そうです。遠話に使う普通の水晶玉です」


 遠話? 遠話がどうして勇者の肉団子鉄錆(てつさび)風味に関係あるのだろうか?


「遠話でどうやってあの勇者を倒すんだ?」


 ジフ様も分からないようだ・・・・・・エタリキ様、ジフ様に分かるように説明しろ!


 私の心の声が聞こえたのか、神官は笑顔のまま口を開き。


「簡単なことです。アンスターの勇者達に遠話し・・・・・・」


 なるほど! 居場所を聞き出すと。


「・・・・・・罠に掛けて殺します」


 ニコニコ笑顔のまま話を終えた。その顔には最初から最後まで他の感情は全く表れない。


 エタリキ様ってほとんど笑っているけど・・・・・・今の笑顔はいつにもましてイイ(・・)笑顔だったな。


「・・・・・・あの(・・)勇者達を罠に掛けるだと?」


「はい。”絶望の岬(ここ)”は死霊軍団の本拠地・・・・・・致死性の罠ぐらいあるでしょう? アーネスト様」


 微かに歯を擦り合わせたジフ様に答えながら神官は死の道化師に視線を送る。


「ないわよ~ん」


「そうでしょう。その罠にアンスターの勇者達を・・・・・・・・・・・・・ない!? 罠がないんですかっ!?」


 器用なことに驚きながらも笑っている。


「そうよ~ん」


「なんでないんですか? 迷宮なら常識でしょう?」


「エタリキちゃ~ん、人間って自分の家やお城に罠を仕掛ける? 仕掛けていてもせいぜい外側だけでしょ~ん。それと同じよ~ん。”絶望の岬(ここ)”は死霊王様のお家なの」


「それでも戦争中ですよ? 少しぐらいは備えをしてないんですか」


「戦争中って言っても始まってまだ百年も経ってないでしょ~ん。誰も罠なんて・・・・・・バトゥーリアちゃんが『司令室ぐらい造れぇぇぇ!』って叫んだぐらいよ~ん」


「・・・・・・いろいろと御聞きしたいことが増えましたが・・・・・・では、罠に使えそうな行き止まりや部屋を・・・・・・」


 しかし挫けない神官――エタリキ様が沈痛な笑いを浮かべながら話した言葉は遮られる。


「罠は駄目だ」


 宙に舞うジフ様の御言葉によって。


「罠は小物のやることだ・・・・・・それにこの前、効かなかったし・・・・・・」


 青い光を纏い、始めは堂々と終わりはこっそりと宣言する。


あの(・・)勇者は! この出世は!! 私の手で掴む!!!」


 ああ、白骨の美貌が眩しい! 眩しい!! 眩しすぎますジフ様!!!


「小物って・・・・・・勝たなきゃ駄目でしょう・・・・・・」

「流石はジフ様ぁ~ん!」

「確かに勇者に罠は効かんだろうが」

「・・・・・・あれ(・・)で俺達、大丈夫か?」

「後悔しても仕方が無いじゃない!」

「我が最強の拳があれば問題ないだろう」


 他の皆もジフ様の凛々しい姿に感激している。


 私は死体獣踊子隊ゾンビビーストダンサーズに頭蓋骨を向け頷く。

 死体獣踊子隊ゾンビビーストダンサーズも楽器を構えて並んでいた。


 タンタタタララン タンタンタララン タンタンターーーラララーーー!!!


 私の頷きに応えて楽器が鳴り響き、ジフ様を讃える。


 いい仕事だ! 死体獣(ゾンビビースト)達!! ジフ様に相応しい勇ましい曲だ!!!


「よぉぉぉーーーしっ! 神官一号よ!! あの(・・)勇者達を最期の墓所(ここ)に呼べ!!! 死霊軍団第七席、このジフ・ジーン様が待っているとなぁぁぁ!?」


【おおおぉぉぉ!!! ジフ様ぁぁぁーーー!!!】


 私もジフ様の溢れ出る精気に応えるように大鉈を掲げた。あの(・・)勇者との戦いがもうすぐ始まると思うと骨が震える。


 今度こそジフ様を守り通す!!! そして必ずや勇者肉団子鉄錆風味をジフ様の口に!!!


「神官一号・・・・・・いえ、それより名乗って呼ぶなんて正気ですかっ!」


 エタリキ様がなんか言っているが。


「安心しろぉぉぉ! 私はとても正気ダァァァ!! 早く出世(ゆうしゃ)ヲ呼べぇぇぇ!!! 今こそ決着の時だぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


 ジフ様の叫びに合わせて部屋が揺れ、天井が崩れ、床に亀裂が走る。


 あの子達の演出だろうか?


 疑問に思ったそのとき、背後――下へと続く階段から百の落雷を纏めて叩き落したような轟音と衝撃が私達を貫いた。


 へ?


 鎧の表面に弾ける雷を視界に映しながら振り向いた。階段からは壁から剥がれた岩が下に落ちていく音が聞こえてくる。


 何が?


 私以外の全員――ジフ様も含めて――も何事かと同じ方向を見つめている。


「勇者か! は、早いぞ!!」「いったいなんですか?」「まさか、ね~ん?」「アーネスト様?」「なんなんだ! 今の轟音は?」「知るわけないじゃない」「我が拳より凄いな・・・・・・」


 誰も彼も好き勝手に喋り何を言っているのか分からない。


 うむ! 聞くならジフ様がいい。


【ジフ様! ジフ様!!】


「な、なんだ! お、お、お、お、お、お、落ち着け!! 勇者がくるんだぞ!!!」


 了解いたしましたジフ様! 落ち着きます!


 私はジフ様と階段の間に移動し大鉈を構える。


 さあこい! 勇者よ!!!


「ん・・・・・・偉大なるジフ様、他の勇者から遠話が」


「他の勇者だと! なんだ!」


「これは・・・・・・アンスターの勇者から遠話ですね・・・・・・いま繋ぎます」


 私が階段を睨んでいるとジフ様とエタリキ様が話し始めた。


『・・・・・・きこ・・・・・・しりょ・・・・・・した』


 次いで途切れ途切れの歪んだ声が聞こえる。


『・・・・・・聞こえるか・・・・・・生きている者は・・・・・・』


 その声は、だんだんと明瞭になりあることを伝える。



『聞こえるか! 死霊王は倒した! 生きている者はいるか!? 返事をしてくれ!?』



 死霊王の敗北を。

金色の勇者と死霊王の決戦は、人類の側の勝利で終わりました。




人はぞれぞれの人生の主役です。


しかし、大体の歴史は他のところで勝手に流れてます。

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