ノルマ達成
優秀な後輩と同期の活躍です。
「えらい! すごい!! かっこいい!!! さすが私が創造しただけのことはある!」
ジフ様は、両腕を広げ全身で喜びを表し、惜しみない言葉で褒めている。
「よくやったぞ! 蛇骨兵!?」
蛇骨兵を・・・・・・
あれから二日。蛇骨兵達と熊一号は、熊二体に狼を十体となかなかの成果を上げていた。そして今日、巨大鼠一体と大鼠九体という更なる成果を上げ戻ってきたのだ。特に巨大鼠は、私が持ってきた熊より一回りは大きく、通路に何度も引っかかり部屋に運び込むのに苦労するほどだった。
私だって森の中を探し回り猪の骨を一体分拾ってきたというのに! なぜジフ様は、私を褒めてくださらないのだろう? もしかして猪が御嫌いなのだろうか? ん、部屋に誰か入ってきた。
入ってきたのは、顎割れ死体騎士と死体兵達だった。数日前に創造されて、臭いからと外回りの任務を命令されていた出番無い可哀想な奴らだ。
ふっ、蛇骨兵がいる今、影の薄いおまえ達が何をしに・・・・・・
「タダイマ戻リマシタ、ジフ様。二日前、東ノ漁村ニテ人間ヲ殺害、死体八体ヲ確保シマシタ」
顎割れ死体騎士は、ジフ様の前までゆっくりと歩いていくと膝をつき騎士のような礼をしながら、ジフ様に報告した。顎が割れているためか喋る言葉が聞き取りにくい。
死体兵達に視線を向けると、肩に担いでいた人間の死体を床に下ろしている。並べるように下ろされた死体は、どれも筋肉質な大人の男性で全て胸を一突きで殺されているようだった。
「デキルダケ損傷ノ少ナイ頑強ナ人間ヲ選ンデ運ンデキマシタ。御確認クダサイ」
「確かにどれも傷が無く、頑丈そうだな。良い死体兵が創造できそうだ。よくやったぞ!」
「オ褒メイタダキ。光栄デス」
なんということだ! これまでまったく出番が無かった顎割れ死体騎士がとても褒められている。私だって兎と、蛇と、熊と、猪と・・・とにかくいろいろ持ってきているに。
ちなみに死体兎は、今もジフ様の机の上で踊り続けている。
「よし。創造の儀式を始めるぞ。回収部隊の到着までもうあまり時間がないからな」
ジフ様は、怪しげな踊りを踊り始める。この二日間、より激しくなった踊りは、いつの間にか増えている死体兎も相まってまるで祭りのようだ。
ジフ様が最後に回転しながら両腕を頭上に掲げると巨大鼠達と人間の死体が起き上がる。
「ふむ。これで骸骨兵三体、死体兵二十三体、蛇骨兵五体、死体騎士一体、死体熊三体、死体狼十体、死体巨大鼠一体、死体大鼠九体、骸骨猪一体か。ノルマは、骸骨兵と死体兵合わせて三十体だからなんとか足りるな。二十三体の死体獣も一緒に回収部隊に渡せば、最前線への栄転も夢ではない」
ジフ様が、部屋に集まる私達を眺めながらとても嬉しそうにされている。
「大鉈と死体騎士は私と一緒に回収部隊を出迎えろ。残りのものは全て上の部屋に行き並んでおけ。蛇骨兵は最前列、死体獣は後ろのほうだ」
ジフ様の命令に、私と顎割れ死体騎士を除く全員が上の部屋に向かって移動し始める。
死体兎も跳ねて行くが、階段を上れるのだろうか?
「回収部隊のデニムめ! 少し席順が上だからといつも偉そうにしやがって!! 今日こそは、ノルマを達成し奴の鼻っ柱を叩き折ってやる!!!」
机の上から、捻じ曲がった木の杖を持ち上げつつジフ様は、誰かを罵っている。
私は、部屋を出て洞窟の中を外に向かいながらも続くジフ様の罵り声を聞きながら、回収部隊とはとても気に食わないものなのだなと理解していた。
洞窟の外に出る。
森が青く燃えていた。
ノルマを達成すると気分が良くなるものです。